第31話
「ナオト君、心して聞いてください。」
2日目の馬車の中でヒルダが
「なんですか?そんな改まって」
「昨日帝国の経済を弱体化させる為に我が国からたくさんの商人が送り込まれております、今3年前より20%インフレが起こってます、残り半年で50%まで上げるのが目標です」
そりゃあ無理でしょう、真面目に聞いても答えは同じ
「努力します」
インフレ起こすってことはそれだけ俺が儲けるってことだよね、それに関してはヒルダさんも手助けしてくれそうだし、50%は無理でも、儲けるだけ儲ける。
ヒルダから真面目な話をされた以外は特に珍しいことはなかった、ただその日は野営になり、同じテントの中でまたお酒誘われたけど今度はちゃんと断った、毎日懲りないね
3日目にして飽きた、もう人影もなく、場所の外の景色を見ていても同じ、ずーっと草原が続いている、テレサでも居たら薬草採取できるのかもだけど、俺が見てもただの雑草
興味がない物は皆同じに見える、日本でも年寄りはみな同じ顔、おじいさんかおばあさんか不明な場合がある、ただ自分の祖母だけはわかるのは不思議
赤ちゃんも同じに見えるが親だけはわかるんだろうな、俺もいつか結婚して子供持つのかな、周りに適齢期の女子ってヒルダがしか居ない、末期だな。
そんなことより何か起きないかな
昨日魔物に襲われかなり肝を冷やしたがそんなことは忘れている、御者のモラーにでも頼んで弓でも教えてもらおうかな
こっちの弓は和弓のほうではなく洋弓のためかなり重い、和弓だと15キロほど洋弓だと弾く力は20キロ越える
御者台の横に乗って何本か射ってみたが5本ほどで筋肉痛、不甲斐なさを実感したが、モラーからは
「大丈夫!」
と一言だけ貰えた、もう少ししゃべってくれてもいいけどね絶え間なく聞こえるのはマークの声
「王都に行くの1ヶ月ぶりだけど、エミリアの奴覚えているかな、俺が酒場でナンパされていたところを助けてからオレにべた褒めで、もう一緒になってくれってうるさいんだけど、1人に縛られるのはちょっとな、、、」
メイズ
「そうですか、それは楽しみですね」
ミューラー
「心配しなくてもお前のことなんて忘れてるよ」
マークがそんなことするなんてとても思えない、馬車に逃げ込んだ男だぞ、しかも不細工だし
それでも馬車の外の方が楽しそうだ、俺も馬に乗れたら、、、普通の日本人が馬に乗る機会なんて余りない、昔大学の学祭で体験イベントで馬場一周しただけでお尻が痛くなった思い出しかない、この世界の人間のお尻の皮は厚いのか
ふとヒルダさんのお尻に目がいくと、その目線に気付いてにじり寄ってくる、
(そんな目的ではないですよ)
ましては昼間から盛るわけない、外にでも聞こえたら、軽蔑されるだけだ
そんなこんなで3日目も終わり、その日も夜営だった。
そろそろファステルを出て1週間、精神的に疲れた、今日の夕方には王都には着くが、経由地に着く算段ができると着くまでのストレスが半端ない、道にも他の商人の馬車と行き交う、どこから沸いて出たのだろう。
ファステルに居るテレサはどうしてるだろう、こんなにお店を離れたことがないので心配だ、しっかりしてるから大丈夫だと思うが、スマホも使えず連絡が取れないのも慣れない
何事もなく夕方には王都センチブルに到着した、近づくにつれ王都の大きさがわかったが、ファステルと比べて少し大きい程度だ、今まで城門から入ることはなかったので知らなかったが
入場門はかなり混雑している、数十台の馬車が列を作っている、皆バッグを開いて検査を受けている、この分じゃ今日中に入城することは無理かなと思っていると
並んでいる馬車を追い越し、横入りすると検査も受けずに素通りした
「検査大丈夫なんですか?」
「一応これでもそれなりの身分なので」
どうゆうこと?副ギルド長って偉いの?
実は伯爵令嬢ということで優遇されているのだが、ナオトが知るわけはなく、ヒルダも身分を明かすつもりはなかったので有耶無耶になってしまった
伯爵令嬢の身分よりも王族の身分の方が高いのだが、もちろんナオトには知るわけがない、ヒルダによって隠された存在ではあるのだ
「王都には着きましたがあくまでも経由地の為、今晩は泊まって明日の朝には出ます」
折角の王都に来たのに観光もできないことに残念な気持ちはあったが、目的地までまだ達していない為仕方がない
時間がある時に、今度はヒルダ抜きで来ようテレサ達と来ればきっと楽しいだろう
「俺達も寄るところがあるからまた明日の朝にな」
迷走の猪の面々もどこかに行ってしまったし
宿屋に着くとヒルダも
「足りない物を買い足しに行ってきます」
と出掛けてしまった、何もやることがない。
(繁華街にでも行ってみるか)
土地鑑はないが、人の流れの多い方に行けば繁華街に行くことはできるだろう、と安易な考えの下もとに適当な人に付いていく、そこでたどり着いたのは、酒場である
(ここで晩飯でも済ますか)
宿で飯は出るのだが、なんとなくその酒場のほうが美味しそうな気がして入ってみる、酒場の中では予想外の光景が
男性客しかおらず、その横には若い女性が同席し、距離がかなり近いのだ。
酒場だと思って入った場所は酒場兼娼館であった、普通の酒場だと思ったナオトは
「すみません、ビールと食事を」
と注文し、持ってきた女性が隣に座る
「私でいい?」
なんのことがさっぱりわからなかったが、運ぶだけなら誰でもいいので
「もちろんです」
と答えると女性は
「銀貨2枚ね」
え?高すぎない?王都の物価ってそんなに高いの?
もちろん女性込みの値段だ、食べ終わると二階に誘われて初めて意味がわかった
「いや、結構ですから」
と逃げ帰ったが、銀貨2枚は戻ってこない、高い社会勉強になった。
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