第325話 国技館の姫
国技館の2階席では、オリビア達が幕の内弁当と焼き鳥を頬張りつつ、取組を観戦していた。
バチン!
午前中という事もあって観客数が少なく、その分、力士同士のぶつかり合いの音が凄まじい。
「凄い音ですわね」
初めて観る衝撃と、その音の大きさにオリビアは呟いた。
相撲は、
・相手を倒す
・相手を土俵外に出す
ということで勝敗が決する分かりやすいスポーツだ。
同時に日本古来の神事も兼ね備えている為、外国人観光客には人気である。
1986年、ダイアナ妃が来日した際も王妃たっての希望で相撲観戦が日程に組み込まれ、御来場した際には、ハワイ出身の力士のお腹を着物の上からであるが、指で
この様子は、
『関取を かつおのように おしてみる』(*2)
と当時、川柳で詠まれるほど、世間にインパクトを与えた。
オリビアもダイアナ妃のようにしてみたいが、流石に非公式では、力士に近付くことはできない。
「意外に欧州人もいらっしゃいますのね」
シャルロットは、欧州出身力士に興味津々だ。
外国人力士といえば昭和の時代ではハワイ。
平成だとモンゴルが多かったが、その他の国々の出身者も多い。
・ジョージア
・ロシア
・ブルガリア
・エストニア
などである。
2020年には、初めてウクライナ出身の力士も誕生した(*3)。
「アフリカ人はいらっしゃらないのですね? セネガル相撲とかありますのに」
エレーナが首を傾げた。
その疑問に皐月が答える。
「昔の話だけど、アフリカ人の力士の計画が持ち上がったらしいわよ。でも、髪型の問題で破談になったらしいわよ?」
「髪型?」
「何でも、髷を結う時にパーマが直毛に出来ず、結局流れたそうよ。今は技術的に出来るかもしれないけれどね」
歴史的には、2012年にエジプト人力士が初土俵に上がった為、彼が初めてアフリカ出身の事例となった。
皐月が聞いたのは、昭和の話であって、今は令和。
美容室や床山の技術も向上している可能性はある為、その問題が解決出来れば、アフリカ出身の力士も今後、増えていくだろう。
レベッカは、相撲には余り興味が無いようで、
「ウマ~♡」
焼き鳥に夢中だ。
「レベッカ様、口元が……」
「キーガン、ふいて~♡」
「は」
キーガンの膝の上でレベッカは、焼き鳥を何本も食べていく。
「美味しい♡」
「ライカちゃんも♡」
「はい♡」
スヴェン、司、ライカも焼き鳥を頬張るのであった。
浅草寺の後、靖国神社にバスは入った。
チェルシー達が下車後、後部座席には、煉とウルスラ、シーラ、そしてオルガの4人だけが残った。
「2人は行かないのか?」
「……」
シーラは首を横に振り、ウルスラも、
「護衛ですから」
と煉の傍から離れない。
シーラは、煉の膝の上に座った。
「殿下は愛されていますね?」
「そうか?」
「分かります」
オルガは、微笑みを崩さない。
ウクライナは、美女大国の一つに数えられる国だ。
その理由は、
①中世の時代、魔女狩りの影響を殆ど受けなかったこと
→魔女狩りの標的は、美女が多かったとされる。
但し、東欧のスラブ系が住む地域では、魔女狩りが流行らなかった。
②元々、美しい容姿であるスラブ系と他民族が混血を繰り返し、美女大国になった
とされている(*4)。
「それで話、というのは?」
「初代キエフ市長を御存知ですか?」
「あー……確か日本人だよな?」
「現在は、我が国に帰化しています故、日系ウクライナ人ですよ」
オルガは訂正し直すと、ある写真を見せた。
「……この
「マクシミリアン。貴国の暴動を裏で引いている共和主義者です」
「……」
ウルスラの顔を見ると、彼女は頷いた。
情報部も把握しているようだ。
「……それで?」
「我が国は貴国が武器の供与などして下さったことに感謝しています。そして貴国の現状を憂いています」
「……」
「これ以上、暴動が拡大すると、貴国国内で反宇感情が高まり、ヴィーンヌィツャや
その二つの名前に煉は察した。
(虐殺を避ける為、か)
―――ヴィーンヌィツャとヴィスワ作戦。
それは、
[参考文献・出典]
*1:nippon.com 2017年12月24日
*2:『大相撲ジャーナル』2017年5月号
*3:スポニチ 2022年3月14日
*4:世界雑学ノート 2018年7月31日
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