第113話 ラギレス。

 デートリンネは因果か絡み合いすぎて複雑になってる、って、そう言ってたっけ。


 まだよくわからないけどこの目の前に居るタクマさんが異世界転生か異世界転移をした人ってことなら、なんだかそういうののせいかも? って思えるけど。


「俺は、日本人、だったよ。っていうかさ、元々マシンメア=ハーツって名前のVRゲームで遊んでるだけの筈だったんだけどな」


 はうう。タクマさん……。


「っていうかお前ももしかしてそうなのか? 巻き込まれ組か?」


「え?」


「俺たちのクラン『竜血の炎』は、皆マシンメア=ハーツのゲーム仲間。ゲームをしてたらいつのまにかこの世界に来ちゃってた、巻き込まれ組なんだ。まあ互助会? みたいなものかな。この世界は一人では生き辛いから」


「はううう。って、じゃぁみなさん? アジャンさんも?」


「ああ、そうだよ。あたしは、っていうか俺は一ノ瀬拓真って名前の日本人だった」


 はう!? 


「で、俺は、坂本拓真。そこのマハリねえさんと同じ名前だったんだよね」


 え? ええー? じゃぁ、


「アジャンさん、男性だったんですか!?」


 カモシカのような精悍な体躯。ほんとハンサムな女性、そんな感じのマハリ・アジャンさん。


 見かけは完全に女性なんだけど……。


「まあ今でも気持ちは男性だけどな? でも残念ながらこの身体は生物学的には完全に女性でさ。もうこの身体のまま五年、かな。この世界で生きてるよ」


 ちょっとアンニュイな表情を浮かべそう語るアジャンさん。はうう。


「で、きみは? やっぱり俺たちの仲間?」


 そう話す彼女の目。こちらを見据えて。じっと真実を探ろうとしているそんな瞳で見つめられ。


「あたしは……。別の異世界から転移して来ました。でも、前世は日本人だったです……」


 そうなんとかそこまで声に出す。


 どう言ったら良いんだろう? 仲間じゃないけど仲間みたいなもの?


 でもあたしは望めば元世界に帰れるのだ。その分、彼らよりも恵まれている。


「そっか」


 タクマさんの隣に居たシルヴァさん、じっとこちらを見て。


「なあ、君、ラギレスって知ってる?」


 と、そう言った。




 あたしはふるふるとかぶりを振って。


 っていうかラギレス? 何? 


 聞いたこと、無いよね?


「知らない、です。たぶん……」


 とりあえずそう答えて。


 なんだか耳に残る言葉のような気もするけど。わかんないかな。


「そうか。またきっとラギレスの関係者に違いないって、そう思ったんだけどな」


「っていうかそのラギレスってなんなんですか? 何かの組織ですか? 団体ですか?」


 はあほんとに知らないんだなってそんな顔をしたシルヴァ。


「ラギレスっていうのはこの世界の女神の名前さ。この世界を作った創世神?」


「へ?」


 何かの冗談?


 ああでも。


 もしかしてそれって……。


「もしかして……、そのラギレスっていう神様がこの世界の因果をくしゃくしゃにした張本人、ですか!?」


 思わずそう叫んでた。


 ああ。デートリンネの主様、それこそがそのラギレスっていう神様に違いない!




 うん。あたしのなかで湧き上がった確信。はうう。うん。きっと間違い無いよ。

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