第75話 薄っぺらいな。

 再びバルカの姿をとったそれにあたしは斬りかかる。


 諦めるわけにはいかない。


 この世界を破壊されるわけにはいかない!



「この世界に住む人はみな生きてるの! 勝手に壊したりして良いものじゃないよ!」


 あたしは手に持ったドラゴンバスタードを真横から薙ぐように滑らせる。


 ガキンとやはり剣で受け止めたバルカ。


「薄っぺらいな。お前」


「なに!」


「俺にはわかるぞ! お前の心は他人のことになど興味もないのだろう?」


 弾かれる剣。一歩後退り、そしてまた上段から斬り下ろす。


「頭で、理屈で、ダメだと言っているだけではないのか!?」


 バルカはその剣を片手で受け止め。

 あたしの剣はいとも簡単に弾かれる。


「軽いな! 言葉も力も何もかもが軽いぞ!」


 う、くっ!


 言い返せない? ううん、ダメ。負けちゃ、だめ。


「壊して、どうするっていうのよ!」


 左手のシルヴァ・ファングを起動。顕現した狼ヘッドの口がガッと開き、エネルギーが収束する。


「シルヴァ・バーストー!!」


 氷の嵐が吹き荒れバルカを襲う!


「清浄な世界、穢れのない世界を再生するのだ。それが俺のレイスに刻み込まれた使命!」


 左手一本でその嵐を止め、消し去るバルカ。


「帝国は……、平和じゃない。なんで今更その平和な世界を壊そうとするのよ!」


 バルカの剣が迫る。あたしはその剣筋を受け流すように左に避けた。


「多くの人間の犠牲の上にある、それが、平和か!?」


「少なくとも戦争がないだけ平和だわ!」


 ステップを切り替えてそのまま剣でバルカの喉元を突く。


 あたった? と思った時にはそこにバルカの姿は無かった。


「人は弱い!」


 背後から剣圧!


 瞬時に前方に転がるように避けるあたし。


「弱い故に群れる!」


 あたしが居たその場所に、刺さる剣先!


「群れるから、争う!」


 ザク! ザク! ザク! っと床に刺さる剣を避けながら転がるあたし。


「戦いの上の平和なぞ、次の強者が現れるまでの仮初に過ぎぬ!」


 薙ぐように這うバルカの剣を避け背後にジャンプするあたし!


「そんなの! じゃぁどうするっていうのよ!」


 右手のドラゴンオプスニルを空に掲げ、あたしは無数のドラゴンスレイヤーを生み出した。


「アターック!!」


 右手を振り下ろし、その無数の剣を魔王バルカに向かって一斉に射出した!





 無数の剣が突き刺さった剣山の中から。



 ゆらゆらと炎の塊が現れた。



 少しは、ダメージ与えられた?




「そもそも、人には文明など必要無いのだ。なにも俺は、生きるための戦いまで否定しているわけではない。国同士のレベルでの争いには恨みが残る。怨恨や嫉妬、恐怖、そうしたものを無くしたいのだ」


 ゆらゆらと揺れる炎。


「あなたは、神にでもなるつもり?」


「ああ。カッサンドラをも取り込んだ俺は、この世界の神になるのにふさわしい。真の魔王、真皇となってこの世界を清浄な世界へと再生する!」


 え? カッサンドラさまって、サンドラさま? 大聖女さまの事!? 

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