第64話 地下迷宮。
王宮の中心には大きな中庭がある。
かつて魔王を封じた場所、そこにはグランウッドという大樹がそそり立っている。
中庭の南側が王宮。北側には聖女宮。この国の中枢があるそんな場所。
あたしは今その中庭に立ち、グランウッドを見上げて居た。
「へえこれがグランウッド。あたいたちでも名前は知ってるけど実際に見るのは初めてだよー。大きいねー」
「樹高27メテルありますからね。幹の太さも5メテルを越しますし」
「で、アルミナさん。ほんとうについてくるの? 貴女」
「ええ、レティーナ。流石に貴女たちだけに託すわけにはいかないと大聖女様はお考えなので」
まあね。自分たちのお膝元であたしに勝手な事をされたくないのもわかるけど。
霊峰山が崩壊したあと。
聖都に戻ったあたしたちにクラウディウス様からの連絡があった。
至急王宮に来て欲しいっていうそんな手紙を持って現れた使者。っていうかあの方、あたしが聖都に来るとわかるの?
あたしの魔力紋を判別しているらしいことは分かったけど、それでも聖都だって広いのだ。遠く離れた場所にいるたった一人の魔力紋を感知する魔具とか、聞いたこと無いし。
だいたいそんな事が出来たら犯罪とかもおこしようがない。犯人が簡単に見つかっちゃうなら警護署も要らないし。
「何故かな……。君の事だけはわかるんだよ……」
どうしてあたしが聖都に帰ってきたのがわかったんですか。そう聞いてみたときのクラウディウス様の言葉。
甘い顔でそんな風に言われたら一瞬ドキッとするけどダメダメ彼は聖王様。
絆されちゃいけないよふにゃぁだよと心を落ち着かせて。
「で、御用事とは何でしょう?」そうお伺いするあたし、じゃなくてアリシア。
あたしなんだか胸がバクバクいって恥ずかしかったので、さっとアリシアにその場を代わって貰った。こういう時は便利?
「ああ。本題に入ろうか」
錫杖を握りしめ、椅子に座り直したクラウディウス様。お顔も真剣な表情に変わる。
「グランウッドの地下空洞の調査をした所、そこから更に地下に巨大な地下空間がある事が判った。この王宮の地下深くにダンジョンが現れたのだ」
「ダンジョン? ですか?」
「ああ。迷宮、だ。地下に巨大な迷宮が出現した……」
え? どういう事? 今までそんなのがあるなんて聞いた事無かったよね?
「少なくとも先日迄はそういったものは存在して居ませんでしたけど……」
「ああ。こちらでもそういう認識だ。あれは突如出現したとしか言いようが無いものだ」
って、そんな簡単にダンジョンができるわけ……。
——バルカですね。
はう?
——恐らく自身のレイスをこの地下の墓標に繋げたのかもしれません。
え?
じゃぁ……。
「バルカはまだこの王宮の地下に居たという事ですね……」
「ああ。恐らく……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます