第52話 魔法、使えるよ!
「え? レティ?」
「ごめんなさいカイヤの魔力借りて魔法使ってみたの」
はう。あたしのフリしてそう話すアリシア。
指の先で宙に浮かぶ水の球。光が反射してふわふわ綺麗なその球が弾けて一瞬で蒸発した。
「うん。こんな感じで水魔法。ちゃんと使えた」
はうあうあう。確かに。でもどうして?
——そもそもゲートってマナを外に出す、っていうかマナの通り道にしか過ぎないんだよね。そこから出したマナを魔力、エネルギーに変換しているのはわたし達自身。まあ大抵無意識にやってるわけだけど。
グルンと身体のコントロールを返してくれたアリシア。
——でもって、魔力をコントロールして魔法として制御しているのもそう。ゲートが開いていようがいまいが
はう。
——実際に手に触れることでマナを魔力に変換したりそのエネルギーに仕事させたりするのは可能ってことよね。
ごめん、エネルギーって、何?
——あう、そっか。この世界には無い概念だったっけ。
この世界には無いって……。あ、アリシアの前世の異世界の言葉?
——そうそう、そうなの。これ話してると話が脱線しちゃうけどまあいっか。エネルギーっていうのはね、「仕事をするための力」って概念なの。例えば手に持った小石を離すと下に落ちるでしょう? これも位置エネルギーっていう力なの。
はうう。
——火をつけるとあたたかいでしょう? そこにお水をはったお鍋を置くと沸騰するよね? それは熱エネルギーのおかげ。
——魔道具ってあるじゃない? 魔力を動力に仕事をする機械。仕事の概念はそんな魔道具を思い浮かべてもらうとわかりやすいかな。
——こんな感じでこの世界はエネルギーで満ちているんだよね。魔力もそのうちの一つなの。
——魔力っていうのは基本は他の自然エネルギーに干渉する力があるの。熱や光、化学変化に空間の位相、そういったものを直接書き換えるのが得意かな。
——わたし達が居るこの空間、この世界ってね、そんなエネルギーがちょうど釣り合った膜の表面みたいな状態なの。そのバランスが少しだけずれると物質っていう膜のほつれになるのよ。
ああ、大聖女様が言ってた言葉とちょっと似てきた、かも……。
——この世界はエーテルに浮かんだ泡のようなもの。その泡の表面の膜がわたし達がいま居るこの空間ね。
——
はう。もしかしてやっと説明終わった?
——あは。ごめんね長くなって。でもそういう訳だから。さあ、レティーナも何かやってみて。
うん。試してみる。
あたしはカイヤにギュッと頬擦りして。
「ごめんねカイヤ。もう少し試させて」
そう言うと左手を真上に掲げた。
掌を上に向け集中する。
「はう、眩しいよレティシア」
あたしの頭上、掲げたてのひらの上に光球が出現した。はうごめんねって呟いてすぐに消して。
でも。うん。あたし、できるよ! 魔法使えるよ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます