第45話 魔王石。

 真っ白な空間。ああこれがあたしのレイス。そう感じながら奥まで潜る。


 奥の方までたどり着くとそこにはうっすら赤い光と隣に碧い輝きがあった。


 ——その赤いのがあなたの感情ですね。


 はう。あたしの感情?


 ——わたしが魔王になった時は赤く燃えた感情が肥大化して抑えるのが大変でした……。


 碧い輝きがだんだんと人の形に見えてきた。あれ? レヴィアさんじゃない?


 そこに居たのは金色のふわふわとした髪に碧い瞳。そんな少女の姿だった。


 ——わたしも今はレイスだけになってるから。あなたが感じでくれてるのはたぶんアリシアのイメージじゃないかな?


 そううっすらと微笑む彼女。そっか。彼女がアリシア。なんとなくあたしに似てる気もする、な。


 ——そうね。わたしも初めてあなたを見た時、他人とは思えないほど親近感を感じました。


 そっか。なんだか不思議。


 もしかしてアリシアってあたしの遠いご先祖様だったりするのかな。


 ——そうかもしれませんね。


 はう。


 そのままもっと奥まで潜る。


 たぶん、ここ。この辺りがゲート。


 でも、ゲートがあった筈って認識している場所にはそんなゲートらしきカケラも見えなかった。


 どうしよう。


 このままこんな所に足止めされるのは困る。カイヤやティアの事も心配だし魔王バルカのことも気になるよ。


 ——うーん。これは外から働きかけて貰わないと難しいかもしれませんね……。


 外からって言っても、どうしたら……。


 ——魔王石があればいいのだけど……。


 魔王石?


 魔王石っていったら魔王の力の源じゃなかった?


 ——魔王石っていうのは高濃度高純度のマナの結晶にこの世の理を詰めたものなのです。いわば仮の魔王の器。魔王のチカラをその魔法結晶に収めた物で今ではこの世界の広範囲に散らばっている筈です。


 でもどうしたらいい? そんな魔王石なんて探したくてもあたし……。


 チカラが使えないていうのがこんなにも頼りない不安な事だったなんて思わなかった。


 このままじゃあたし……どうすれば……。





 お風呂は気持ちが良かったけど気分は落ち込んだまま、あたしは湯船から上がった。


 メイドさん達が柔らかいタオルで身体を拭いてくれて、真っ白なキトンを着せてくれる。


 帯を締め頭もまとめてタオルでふんわりと乾かして真珠の髪飾りで髪型も整えられたあたしは最初に居た寝所とはまた違った場所に連れて行かれた。


 オレンジが基調のふんわりと明るい部屋。真ん中には四角い少し大きめのテーブル。レースで縁取られた真っ白なテーブルカバーがかぶさって。


「お食事のご用意ができていますよ」


 そういうメイドさんに手をひかれるまま椅子に腰掛けたあたし。目の前には銀のカトラリーが並んでいて、そしてそれはあたしの目の前対面にも同じように並んでいた。


 って、誰かもう一人来るの?


 そう疑問に感じたその時。


 大勢の護衛を引き連れた男性が現れてその対面に座る。


 こちらを見て微笑んだその彼は、以前あたしを助けて回復薬を飲ませてくれた男性、その人だった。

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