第4話 勝沼酒造CMドラマ・年末編


山梨県のとある山中、


たまたま通りかかっただけの若きレンジャー隊員、都城及磨。近く滝の下で一升瓶を加えている坊さんの死体を発見する。




及磨

「うわっ…うわああ…!エマージェンシー!!」と青くペイントした顔をひきつらせて後退り。




刑事、レッド魚沼隆文

「ではおめーがたまたまレンジャーの山岳演習で通りかかった時滝の下の坊さんの仏さん見つけたっちゅー訳だべか?」



レンジャー隊員

「はい…あんな異様な死体の見せ方って、ありなんですかねえ?」




刑事

「ミステリーの世界じゃ常識だべ。なあ探偵さん」


チューリップハットによれよれの袴姿の探偵、ブルー勝沼悟。頭をぼりぼり掻くがシャンプーのいい匂いしかしない。




探偵

「ん?ホトケさんの家族が着いたみたいだね…」



ほどなくホンダスーパーカブで到着した寺の跡継ぎ、グリーン七城正嗣



ぶるるん、ぶるるん、きっ


「…そんな、そんな…うわあぁぁぁっ

父さん!だから意識無くなるまで焼酎飲むなって言ったのに‼️父さーん」


滝に打たれて号泣する正嗣。



「…なんと、泰安寺のご住職だったとはねえ」




乙の湯旅館で


住職殺人事件捜査本部会議。




刑事

「んだからよ、最後に住職の所に恋愛相談に行ったのはイエロー琢磨くん。おめーさんだと調べは付いてるべ」




探偵

「ちなみにあなたは第一発見者のレンジャー隊員の双子の兄ですね?」



米屋の道楽息子、イエロー都城琢磨

「ふっ、それがどうしたっていうんです?相談に行ったのは事実ですが、その時住職は居なかったんですよ。僕は犯人じゃないね」



小人の松五郎

「んだんだ」



道楽息子

「ほら、庄屋さんもこう言っている」


住職の息子、怒りの余り道楽息子にのしかかる。


「お前が父さんを焼酎『金くろ』でへべれけに酔わせて殺したんだ‼️この童顔巨乳好きの制服緊縛映像好きの…ドM野郎がっ…」



道楽息子

「たった三行で僕の性的嗜好全てばらすな!」



牛乳屋のお嬢様、ホワイト小岩井きらら


「え、琢磨さん胸が目当てであたしに交際申し込んだの?ドン引き…( ̄▽ ̄;)」



検死の先生、シルバー野上聡介


ちりんちりん


「田舎の道はやっぱチャリじゃキツイぜ…おっ、取り込み中だねえ。検死結果出たけど胃の中から検出されたのは『えびかずら汁』だけだぜ」




刑事

「ええー、あの清涼飲料水の国内トップメーカー勝沼酒造のえびかずら汁?」



探偵

「明治から続く勝沼ワイナリーのオリジナル国産ワイン、『えびかずら汁』が?」



医師

「いや…俺飲まねえからわかんねえけど死因は心臓発作。ワインへべれけに飲んで酔って滝壺に飛び込んだんでねーの?」



探偵

「何?そのざっくり過ぎる鑑定。おかしい…『えびかずら汁』は新酒解禁前なのに」ぼりぼり。



古美術商、ピンク蓮太郎。

「どうも蓮屋です。…ええ、あの時ご住職に呼ばれて掛け軸が空海の直筆かどうか鑑定に伺いました」



探偵

「で、結果は?」



古美術商

「ここだけの話、真筆でした。アタシはいくらでも出すから譲って欲しいと頼んでも住職は家宝だからと…」


刑事

「断られたんだべな、その時住職は酒飲んでたか?」



古美術商

「ええ!酒臭いったらありゃしない。アルコールのつんとしたニオイさせてさ。ケチな上に生臭坊主だわっ!」



医師

「蓮屋さんあんたひどい鼻風邪だねえ」



古美術商

「ええ、今の時期の山梨って寒くてたまんなーい」



探偵

「そんなに鼻が詰まってたら住職が飲んでた酒がワインか焼酎か区別付かないのではないでしょうか」



古美術商

「な、何よっ、アタシが犯人とでも?」


小人の乙ちゃんいきなり手鞠をついて歌い始める



巷の酔っ払いの言うことにゃ


勝沼印のえびかずら


えびかずら


甘くて香り良くて坊主まで飲んだくれて


へべれけに


酔うて酔うて溺れたよ


ソラ溺れたよ♪




探偵


「その歌からすると…これは殺人ではない?し、しまったー‼️」




お嬢様

「琢磨さんサイテー、もう帰る」


道楽息子

「きららさん待って!」



医師

「もう白状しちまえば?第一発見者はあんただって」


探偵

「先生それ僕のセリフ!…そう、これは最初から殺人事件なんかではなかった。全ては空海の真筆の掛け軸が起こした事故であり偶然であり二人の作為なんです」


犯人

「ふっ…ここまで推理されちゃあしょうがない。


そうよ、アタシが新酒のえびかずら汁を勝沼家の蔵から盗んで酒好きの住職に飲ませて掛け軸をすり替えようとしたけど目の前で住職は飲み過ぎて倒れてしまった…」



探偵

「犯人は『あなたたち』ですね?蓮太郎さんと及磨さん」



レンジャー隊員


「…そうです。あの夜恋愛相談に行ったのは僕の方なんです。僕が色々と相談に乗って貰って隣の部屋でお茶を頂いている所に人が倒れる物音がしたので行ってみると住職が倒れて、既にこと切れていました」




刑事


「そんでおめぇさんは見たんだな?蓮太郎さんがホトケさんを前にパニクっていながらも、掛け軸をすり替えようとしたのを。なんで本当のこと言わねがった?」



レンジャー隊員


「ううっ(泣)僕の恥ずかしい○○○なことや△△△なことまでそこの古美術商さんに盗み聞きされて脅されで仕方なく殺人に見せかける偽装工作に手を貸しました…」




医師

「双子揃って変態だなあ」



小人の松五郎


「んだんだ」



探偵


「しかし蓮太郎さん、

ひどい鼻風邪を引いていたあなたは住職が飲んだお酒が焼酎かぶどう酒かの判別もつかなくて、


てっきり及磨くんが台所から持ってきた『緑岳の金くろ』の空瓶をご遺体の口に突っ込んだんですね?」




古美術商

「あれは唯一の誤算だったわ…呼びつけた琢磨くんを脅迫してわざとランボー顔負けのレンジャーコスプレさせて第一発見者に仕立て上げたのに」




刑事

「最初から双子をすり替える必要性あったか?」



探偵

「ない、(きっぱり)そして今も双子は入れ替わったままでいる」




琢磨&及磨、同時に


「ばれてしまっては仕方がない」


にやり。




お嬢様


「ええ~!今まで気づかなかったわー」




医師

「ご両親が見分け付かない程激似だもんな」




探偵

「全ては聖職者さえ酔い狂わせてしまう魔性の美酒『えびかずら汁』」




刑事

「『えびかずら汁』新酒が引き起こした茶番に、乾杯」




小人の松五郎


「つまみは野沢菜でもOK、勝沼酒造の『えびかずら汁』飲め飲め」




BGMオペラ椿姫「乾杯の唄」




茶番提供・勝沼酒造




医師


「ノンアルコールのぶどうジュース『みっちゃん』もあるぜ🍹」



こたつに入ってテレビを見ていた税理士、九条敦、


「どっかで見たよーな見なかったよーなミステリーやね」






















































































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