第2話 内緒なの?(レイジ目線)
夜遅くなって、部屋のチャイムが鳴った。モニターを見ると、サングラスにマスク、フードを被った人が映っていた。これじゃ、誰だか分からないし。彼はそれに気づいたのか、サングラスを外した。よかった、テツヤ兄さんだ。
ドアを少し開けると、テツヤ兄さんが入って来た。マスクを外し、ニッコリ笑う。このギャップ、相変わらずえぐい。人形よりも綺麗な顔してるのに、笑うとこの上なく可愛い。あり得ない。
「歯ブラシとか持って来た?」
俺が聞くと、
「あ、忘れた。」
やっぱり。
「新しいの出すから、それ使ってよ。」
「うん。あ、でもシャンプーは持って来たよ。」
「シャンプーなんて、俺のを使えばいいのに。」
「だめだよ。俺の髪がお前と同じ匂いしてたら、兄さんたちにすぐバレるだろ。」
驚いた。
「え?内緒なの?」
うちに来た事、隠すの?
「だってお前、兄さんたちに言ってただろ。俺は家に人を入れない主義なんだって。それなのに俺が泊まったなんて知ったら、兄さんたちに何を言われるか。」
テツヤ兄さんはそう言って肩をすくめた。
「・・・聞いてたんだ。で、それ知ってて泊まっていいかって聞いたわけ?」
相変わらず読めないなあ。
「ダメ元で。」
へへへっとテツヤ兄さんは笑った。
「でも、どうして俺にはOKしてくれたんだ?その主義を曲げて。」
それを俺に聞くのか?テツヤ兄さんはずるい。だから、本当の答えは言ってやらない。
「テツヤ兄さんとは、昔いつも一緒に寝てたから。もはや気にならない。」
7人で一部屋に暮らしていた頃、俺とテツヤ兄さんは一つの布団で寝ていた。全員でほとんど雑魚寝だったわけだけど、特に年下二人でくっついて寝ていたのだ。端っこで。
「本当の事言ってもいいんだぜ。俺には気を遣わなくていいからだろ?兄さんたちが来たら気を遣うもんな。」
テツヤ兄さんはそう言ってまたにーっと笑った。またこの笑顔。それは本心なのか?やっぱり読めない。
この人を一言で言ったら、ずるい人。人一倍はしゃいで、明るいのに、人一倍繊細で傷つきやすい。危なっかしくて放っておけない。いつも見ていないと、心配で仕方ないんだ。そうやって、周囲の人を虜にする。ずるいよ。
二人はベッドの上に並んで横になった。明日も仕事だから、ちゃんと体を休めないとならない。
「なあレイジ、シャンプー置いてっていい?」
「え?なんで?」
「また泊まる時に使うから。」
「あ、ああ、うん。いいよ。」
テツヤ兄さんは嬉しそうに笑い、俺の事をぎゅっと抱きしめた。
「レイジ、好きだよ。」
テツヤ兄さんはそうつぶやいて、そのまま眠りについた。
全く・・・この態勢でそんな事言うなんて、ずるいよ。勝手に寝ちゃうし。
「テツヤ兄さん、俺も好きだよ。」
寝息を立てるテツヤ兄さんに、小声でそっと囁いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます