第231話 襲撃犯
ようやく出口へとたどり着いた俺たち。
だが、それも束の間、外からミルフィの叫び声が聞こえた。
「ミルフィ!」
俺は慌てて外へと出る。
さらに、そのすぐあとをイルナとトーネが続く。
ようやく外へ出られたという感動に浸る間もなく、俺たちが目撃したのは――まさに修羅場であった。
「ぐぅ……」
「うぁ……」
血まみれで倒れているのは、ミルフィたちとともに竜の瞳で外へと出た冒険者たち。その脇には、武器を構える他の冒険者たち。さらにはジェシカとミルフィ、そして、ふたりを守るように立つマシロ。
そして――
「だ、誰だ……あれは……」
真っ黒なコートにつばの大きな帽子をかぶった大男が、ミルフィたちと対峙するように立っている。手には武器らしい武器を持っていないが……どう見ても、ふたりの冒険者が負傷しているのはこの男が原因だろう。
「フォルト!?」
「イルナさん!?」
「それにトーネさんも!?」
ミルフィ、ジェシカ、マシロ、さらには他の冒険者たちも、ダンジョンで迷い続けていると思っていた俺たちがこの場に現れて驚いているようだ。
一方、大男の方は、
「うーん? そっちの少年は……
俺をひと目で
……何者なんだ、この男は。
ただならぬ気配に身構えていると、
「おい! よせ! こいつはそんじょそこらのチンピラとはわけが違う!」
冒険者のひとりが、そう叫んだ。
確かに、それは周りの状況から察することができるけど……だからといって、引き下がれない。俺たちのパーティーメンバーであるミルフィ、ジェシカ、マシロが絡んでいるのだから放ってはおけないのだ。
「おーおー、威勢がいいねぇ。若いって素晴らしいねぇ。――同時に愚かでもあるねぇ」
大男は気だるそうに言ってから拳をつくって腰を落とす。
あれは……戦闘態勢ってことか?
つまり、あの男は――
「格闘家ってわけね? だったら、私が相手になるわ!」
俺よりも先に、イルナが相手の戦闘スタイルを察して飛びかかる。男はそれを迎え撃とうとするようだが、それはかなり無謀だ。
なぜなら、イルナは聖女の拳を装備している。
あれの打撃を防ぐなら、魔力をまとわなくては無理だ。
――と、思っていたのだが、
ガギン!
イルナの拳と男の拳がぶつかり合った瞬間、まるで金属同士がぶつかり合うような音がした。イルナの方はナックルダスター(聖女の拳)を装備しているため分かるのだが、装備をしていないはずの男からなぜそのような音がするのか。
「むん!」
「きゃっ!?」
男は腕を振るうことで、イルナを弾き飛ばす。
だが、すぐに体勢を立て直して反撃に移ろうとしたイルナだが――男の体に起きた異変に、思わず足が止まる。そして、俺たちも男の正体を目の当たりにして衝撃を受けた。
「あいつの腕……金属か?」
激しい拳のぶつかり合いにより、男の皮膚は剥がれてその下の本体が姿を現した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます