第119話 進む先は?

 結局、俺たちはダンジョン街を満喫し、その日は何もできないまま終了した。

 しかし、女子組は大変満足したようで、テントに戻ってからも戦利品(買ってきた品物の数々)を見せ合っては歓声をあげていた。



 翌日。

 先行しているリカルドさんたちと合流するため、いよいよ本格的に大迷宮のダンジョンに挑むこととなった。


 ダンジョン街の最奥部にある重厚な門。

 この先が……本来のダンジョンになるわけだ。


「みんな……油断しないように」

「任せなさい!」

「えぇ。気を引き締めていきましょう」

「マシロさん、テリーのことをお願いしますね」

「はい!」

「ワン!」


 それぞれ準備は整ったようだな。

 心身ともに万全の状態となっている俺たちは、意気揚々と門を出てダンジョンへ進んでいった。


 その先は変わらず広大なものであったが、目を引いたのは明るさだ。

 近くにまだダンジョン街があるとはいえ、それを抜きにしてもかなり明るい空間であるというのが分かる。


「発光石か? それにしても明るい気がするけど」

「大迷宮で採掘される魔鉱石はその質も一級品なんです。一般店舗ではほとんど販売されておらず、入手困難と聞きますからね」

「なるほど。だから光度も違うってわけか」


 さすがはアイテムマニアのジェシカだ。

 

「それにしても……人が多いわね」

「は、はい。あまりダンジョンという感じがしませんね」


 続いて、イルナとマシロが感じた疑問――これも、俺が気になっていた点のひとつであった。

 これもやはり、ダンジョン街が近いからってことなのだろうが……逆に言えば、これだけの冒険者が揃っているにも関わらず、未だに全容解明まで至っていないというのが凄いな。

 中にはこのダンジョンだけを徹底的に研究しているパーティーもいるらしい。

 彼らは大迷宮のダンジョンがあるジェロム地方の領主・フローレンス家から資金援助も受けているようで、長らく調べているのだとか。ダンジョン街の構想を提案したのも彼らとのことだった。


「大迷宮のダンジョン専門のパーティーか……」

「かれこれ三十年以上らしいわ。パパの話だと、先代領主の頃から調査が続いているみたいだから」


 イルナがもたらしてくれた情報は、さらに俺を驚かせた。

 三十年って……調査を開始した時、メンバーの年齢が二十代だとしても、すでに五十歳は超えているわけか。それだけの長い期間をひとつのダンジョンの謎解明に費やす――言い換えれば、それだけの価値を見出せるほどのダンジョンってことだ。


「これはますます攻略が楽しみになってきたな」

「言えてるわね!」


【聖女の拳】を装着したイルナはガンガンと両手を打ち合わせる。

 他のみんなも気合十分って感じだ。


「そうと決まったら、早いところリカルドさんたちと合流しよう」

「確か、E地区にいるって話だったわよね。――あっ、あっちがそうみたい」


 ミルフィの指さす先には、「この先E地区」と書かれた看板があった。

 あまりにも広すぎるこのダンジョンはA~Fと区分されており、リカルドさんたちはその中にあるE地区にいるという。


「道中はモンスターが出るかもしれないから注意していこう」

「「「「はーい」」」」


 いまひとつ緊張感に欠ける気がしないでもないが……まあ、これがうちのパーティーのいいところでもあるからな。

 俺たちは看板の案内に従って、リカルドさんたちのいるE地区を目指して進み始めた。

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