第49話 王女様を……!?
「ご主人様!!」
「お兄さん、お帰り~!」
「あぁ、ただいま」
ボンさんたちと無事 王都に帰還して、リリたちと再会。
涙目で抱き付くリリを慰めた後で、飯を食って、ベッドで眠る。
その日は死んだように眠ったけど、やっぱうまい飯を食うと 生きてるな! って気がしてくる。
そうして、ただ幸せに飯を食うだけの日々が四日目を迎えた、その日。
「リリ……。マジでここに突撃するのか? この服で?」
「はい。ご主人様なら大丈夫です!」
「うんうん! 私たちの時は、もっと酷かったんだから!」
「いや、それは、そうなんだろうけどな……」
目の前にあるのは、見上げる首が痛くなりそうな巨大な門。
手元にあるのは、見覚えのあるメイドさんが届けてくれた招待状、
--と言う名の、強制出頭書類。
「何度確認しても、来い、って書いてあるよな……」
「あははー、お兄さんも、もう諦めたら? 気楽に行こ、気楽に」
ぽんぽんと彩葉が肩を叩いて慰めてくれるけど、気楽になんてなれるはずもない。
『親愛なるお兄様へ。来る7月27日に我が家へ御招待致します。御都合が許されますなら、是非一度、御会い致したく……』
表紙に押されているのは、第4王女様の判子。
断れる訳もない!
けど、まぁ、それは百歩譲っていいとしよう。
リリや彩葉も一緒に連れて行っていい、って書いてあるから、ひとりで行くよりはまだましだ!
だけどな!
「なんでお前等は、それらしいドレスなんて持ってんだよ……」
「えへへー、可愛いでしょ!」
「あの、えっと……、ごめんなさい。ご主人様に断りもなく……」
楽しそうにクルリと回る彩葉は、大人びた綺麗なドレス。
もじもじと恥ずかしそうに体を小さくするリリは、可愛らしい感じのドレス。
どっちも前回会ったときに第4王女様から貰った物らしいし、似合ってるからそれはいいんだけとな。
「なんで、俺だけ普段着なんだよ……」
王女様に会いに行く3人。
顔も見た目も1番平民の俺だけが、平民の服。
それで貴族街を歩くんだから、周囲の視線が拷問だよね……。
「やっぱ、来いって書いてある……」
はぁ、と何回目になるのかわからない溜め息を吐き出すけど、紙に書いてある文字が変わる訳もない。
つまり、行くしかない。
「……なぁ、うまい飯とか出ると思うか?」
「んん? それはないんじゃない? 中途半端な時間だから、お茶くらいじゃないの?」
「だよな……」
つまりは、楽しみもない。
拷問されにいくだけのような物だ。
それでも行くしかないけどな。
はぁ…………。
「……なぁ、リリ。ドアにベルがない……、と言うか、入口が門の家って、どうやって訪問を知らせるんだ?」
「えっ? あっ、えっとですね。門番の方が詰め所にいるので、伝えて貰うんです。私、行って来ますね」
「あっ、うん。お願い……」
「はい! 任せてください!」
楽しげに大きな猫耳をピョコピョコ動かしたリリが、門の横にあった建物に近付いていく。
……槍を持った大男が出て来たな。
俺のこと、すげぇ睨んでるけど、気のせいじゃないよな?
「……おれ、なんかしたか?」
「ん~? 怪しんでるんじゃない? こんなヤツが王女に会うとか、目的は何だ? って感じでー」
なるほど、それは確かにそうなるわな……。
あっ、門が開き始めた。
さっきの大男。すげー勢いで土下座してるけど、どうした!?
ゴッツン ゴッツン 頭ぶつけて血 出てんぞ?
「ご主人様。確認が取れたそうです。今、メリア様がこちらに--」
「メリア様! 王女としての気品を--」
「おにいさまあああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
一瞬だけ、可愛らしいティアラが見えた気がした。
こぶっ……。
「お兄様!! お会い、したかったです……」
そして意味もわからないうちに、
両手を背中に回されて、頭を押しつけられている状況らしい。
「えぇ! あのメリア様が!?」
「メイド長の話は、本当だったのね!」
「メリア様。なんて幸せそうな笑みなのかしら……」
何十人ものメイドが、一列に並んで頭を下げているのも圧巻だけど、それどころじゃない。
というか、とっさに避けずに受け止めた俺の判断は正しかった!
もし避けてたりして、彼女がケガでもしたら、俺、死んでたな。
「……メリア様。あの、お呼びと聞きましたが……」
「様は不要ですわ、お兄さま。私のことはメリアと。敬語も必要ありませんの」
「はっ、はい……、じゃない。うん。わっ、わかったよ、メリア」
「ありがとう存じます! リリ様も、彩葉様も歓迎致しますわ」
「あっ、ありがとうございます!」
「にゃははー……。私たちのオマケ感、すっごいねー……」
前に会ったときは何とも印象が違うけど、あの時は怯えている感じだったからな。
本来は、気さくな感じなのかもな。
「おほん、おほん。御部屋準備が整っております」
「そっ、そうでした。皆様、こちらへ。
そのまま腕を取られて、お城のようなお家へと引き込まれていった。
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