10 ENDmarker. 狩名更

 その一言で。彼女も、恋人も、いないのだと、分かった。


「はじめまして」


 そう返すしか、なかった。


 ナースコールを押して。


 その場を離れる。


 そう。


 もう、彼女は。恋人でも、雰囲気が合う人でもない。


 新しい、彼女になった。


 死にたい自分の、ことなんか、忘れて。


 新しい人生が、きっと。


 彼女には待っている。


 それを、自分が邪魔してはいけない。


 もう、ふたりとも、いない。


 病院を出て。公園。


 どうしようもない自分が、ひとり。


 死んでしまおうか。


 なんとなく、思う。


 偽物の煙草。火を点ける。


 煙だけが、自分を包んでいく。ひとりだった。

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