第5話 贅沢

裁判官は、俺に死刑だと宣告した。

その理由を、前途有望なる二人の若い男女を殺したからだと言う。

未来に大きな夢を抱いていたであろう二人の殺害は、重い罪だと言う。


じゃ、お前はどうなんだ! この俺にだって夢がある。

俺以外の、何人を殺した? 死刑とした? 

法律を盾にとって、人を公然と殺しているくせに。


死? なんだ、そりゃ。

生きるってのは、どういうことだ? 

案外、今こそ生きてるのかもしれないぞ。


こんな立派な鉄筋のビルだ。

雨風を凌げて、窓からは太陽を拝めるし、月だって覗ける。

お星様だって拝めるじゃないか。


一日三度のおまんまが食べられるし、仕事だってさせてくれる。

時間になったらキチンと休憩も取らせてくれる。

まったく贅沢な生活だぜ。

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