第8話 例

「一つ目人間の国に迷い込んだ男が、年月が経つにつれて、二つ目の己を不具者と見てしまう。

怖いことだけれど、いつの時代でも起きている。

真理なんてものは存在していないのさ。

そんなものは時代時代で変わるものだ。

『後世の歴史家が判断してくれる』って言い訳するけれども、あんなものは詭弁だね」


「だってその時代に生きた者にとっては、後世の人間なんて関係ないだろうが。

人間誰しも、幸せになる為に生きてるんだろ? 

その為に一所懸命頑張るんだろ?但し、但しだ。

欲張ってはいけない。

分相応って奴を考えなけりゃ。

戦争なんて、欲張りの人間が引き起こすものさ」


「仕掛けた方が欲張りだと、断言はできないだろうけれどね。

じっと我慢の子だった方が、もう我慢ならん! となる時だってあるだろうからさ」

立て板に水の如くに話す。

いつもこの調子だ。

例え話を組み込まれては、妙に納得せねばならないような錯覚に襲われてしまう。

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