第4話 不調和

「あのナァ! 昨日、あいつの所に泊まってよー、そんでよぉ―――!」

「えぇっ? 聞こえなーい。もっと大きくぅ!」


「ネェ、君。飲まないの? これ、低アルコールだよ。とっても、おいしいよ」

「でもぉ……。私、すぐ酔っちゃうの……」


「よお! 何か面白いことないか? 毎日毎日、タイクツでさ」

「ケッ! ぜいたく言いなさんな、踊ってりゃいいんだよ。ひと晩中踊りまくって、朝になったらおネンネさ」


踊り狂う若者らそれぞれのカップルの声の応酬を耳にしながら、コーラをチビリチビリと少年は飲んだ。


未成年の少年なれば、アルコールは厳禁だ。それが少年の少年たる所以だ。

キョロキョロと落ち着かないそんな少年に、バーテンが、声をかけた。


「よお! オフェリアさんなら、ホレ、あそこの隅で踊ってるぜ。もっとも、今夜も誰かと一緒だがネ。」


少年は、弾かれたようにバーテンの指さす隅を見やり、はっきりとはしないが、もつれあっている辛うじて男と女だとわかる二人を見つけた。


そして少年は、陰鬱な顔を更に暗くし、何か呟いた。


「えっ、何だい? もっと大きな声で言いなよ!」

「いいんです」


バーテンが、なおもしつこく聞く。

「放っといてください!」

今度は、少年が強く言い放った。


そしてミラーボールの光の中、身振り手振りよろしく大声を張り上げているバンド連を盗み見しながら、全くの不調和に指でリズムを取り始めた。

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