第6話 修験者

 それからひと月ほど経った頃に、十年に一度かもしれない程の大雪が降りました。大きく冷え込む中、男たちが森に薪木拾いに入っていきます。ところが奇妙なことに、森の中に入り込んだ二人の男たちがばたばたと亡くなっていったのです。三日三晩高熱にうなされて死んでいきます。


 体のどこにも傷はありませんでした。しかし二人が二人とも「悪かった、悪かった。勘弁してくだされえい!」と叫んだと言います。

 何に悪かったと謝っているのか、誰にも分かりませんでした。で、これは森の神の崇りだと、恐れおののいたのです。たまたま通りかかった修験者に、祈祷を頼みました。気の毒に思った修験者が、三日三晩の祈祷を行いました。


「これは、祟りじゃ。なんぞ、変わったことはなかったか? 天に唾する行為をしたのではないか? 心当たりがない? よそ者を村に入れた? それじゃ! その者が、災いをもたらしているに違いない。即刻その者を村から追い出せ! さすれば、祟りも収まるじゃろうて」


 さあ、大騒ぎとなりました。

「どこの馬の骨とも分からん男を入れてしもうたのがまちがいじゃ」

「すぐにも、たたきだそうぞ。とんだやく病神じゃて」

 という声が上がる一方で

「なにがやく病神か! あんな働き者はおらんぞ。日が昇れば一番に畑に出ておるし、日がどっぷりと暮れても最後までおるじゃないかの」

 とかばう声も上がります。


 そして何より「あいの夫になっとるんじゃ。今さら追い出すとはあんまりじゃ!」と女房のおなかが泣き叫びます。その隣近所の者たちも、異口同音にその者を褒め称えます。

「そりゃもう、仲むつまじい二人ぞ。寝たきりのしゅうとさんにも親身に仕えておるし」

 

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