第1幕 『星の銀貨』のヒロインの場合 ⑩ <完>

 アーサーは自分の上着とマントをルナに着せると、ルナを馬に乗せて何処までも走り続けた。


「あ、あの・・・私をどうされるおつもりですか?」


馬上でルナが尋ねるとアーサーは言った。


「私はずっと陛下の命により12月24日までにこの国で一番信仰深く、心優しい女性を探し出して来るように命じられてきたのです。そしてその女性は貴女で間違いないと思い、ずっと後を追って来ていたのです。そして今日は24日。本当に間に合って良かったです。」


「お待ちください。その女性は私では無いと思います。私は陛下に相応しい女ではありません。」


ルナは慌てて言った。するとアーサーは言った。


「その判断は全て陛下がなさることです。どうか今は私を信じて城まで来て下さい。」


「分かりました・・・。」


ここまで言われてはルナはなすすべも無かった。それに元々行くあて等なかったのだ。このまま城に行って、下働きでもさせて貰えればとルナは考えた。

やがて城に着くと、すぐにルナはメイド達の手によって、身体を、髪を綺麗に現れ、身だしなみを整えると、そこには目も眩むような美女が現れた。メイド達はルナの余りの美しさに感嘆の溜息を洩らした。


 美しく着飾れたルナは国王と対面する事となった。国王はルナを一目見るなり、その美しさの虜になってしまった。またルナも美しい国王に心を奪われてしまった。


「私は貴女を一目見て好きになってしまいました。どうか私の妻になって頂けますか?」


国王はルナに結婚を申し込み、ルナは勿論承した。そしてその日のうちにしめやかに結婚式は行われ、ルナと国王は初夜の床にいた。


「ルナ・・・優しく貴女を抱きますので、どうか私を受け入れて下さい・・。」


「はい、陛下・・・。」


そして2人はこの日、結ばれルナは快感に打ち震え・・・夜が明けた。


「ルナ・・ルナ・・起きて下さい。」


国王に揺り起こされたルナは自分達のシーツの上に沢山の銀貨が散らばっている事に気が付いた。


「これは・・・どういうことなのでしょう・・?」


国王は首を傾げると天から声が降ってきた。


『国王・・ルナ・・お前達はこの国で一番信仰深い夫婦となったので褒美を与えた。これからも仲睦まじく暮らすのだ。お前達が愛を交わす度・・・そのベッドの上に銀貨を授けよう・・これからも末永く幸せに暮らすのだぞ・・・』


そして声は消え去った。



その後、ルナは国王との間に何人も子供をもうけ、この国はお金に困る事無く裕福な国へと生まれ変わり、国民たちはみんな一生幸せに暮らしていく事が出来ました。




めでたしめでたし



 

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