第1幕 『星の銀貨』のヒロインの場合 ⑧
さらにルナは別の村の教会を目指して歩いていると、ちらほらと雪が降ってきた。
「雪・・・どうりで寒くなって来たと思ったわ・・・。」
ルナは立ち止まるとリュックの中から母の形見の帽子を被り、再び歩き始めた。すると先程よりも小さな村が現れた。当たりには殆ど人の姿が見当たらない。
「教会は何処にあるのかしら・・・?」
ルナがキョロキョロ辺りを見渡していると、小さな女の子がルナの元へフラフラと近付いて来るとルナに言った。
「お姉ちゃん・・・頭が冷たくて堪らないの。その帽子・・・私に頂戴?」
ルナは迷った。何故ならこれは母の形見の帽子だったからだ。しかし、困っている人には親切にしなさいと常日頃から言われて育ってきたルナにはとても少女をの訴えを退ける事は出来なかった。
「ええ、どうぞ、お嬢ちゃん?」
ルナは被っていた帽子を取ると、少女の頭に被せ、顎のリボンを結んであげた。
「お姉ちゃん!有難う!」
少女は喜びながら駆けて行った。ルナはそれを満足気に見届けると、再び教会を目指して歩き続け、今度は上着が無く、寒さに震えている少年を見つけた。少年はルナの元へ来ると言った。
「お姉さん・・・僕上着が無くて寒くて寒くて死にそうだよ・・。」
その少年は唇迄寒さで真っ青になっている。
(まだこんな小さな少年なのに・・・。)
ルナは見るに堪えかねず、自分がまいていた毛糸のストールを少年の身体に巻き付けてあげた。
「うわあ・・・温かい・・・お姉さん、ありがとう。」
そこでルナは少年に尋ねた。
「ねえ、この村に教会は無いかしら?」
すると少年は答えた。
「教会ならこの道を真っすぐ行けばあるよ。」
「ありがとう!」
ルナは少年の頭を撫でると、寒さに震えながら教会を目指した—。
「すみませんっ!どなたかいらっしゃいませんかっ?!」
ルナは扉をドンドン叩くも、返事は無い。
「失礼します・・・。」
ギイイイ〜・・・・
扉を開けて中を見ると、教会の中は埃だらけだった。
「まあ・・・・ここの教会も誰もいないのかしら?」
そこでルナは掃除用具を探し出すと、一生懸命掃除をし、教会は見違えるほど綺麗になった。
「フウ~・・・。」
その時・・・。
グウウ〜・・・・
ルナのお腹の音が鳴った。
(ああ・・お腹が減った。そう言えば昨日から何も口にしていなかったんだものね・・・。でもいいわ。眠ってしまえばお腹が空いた事・・・感じなくて済むもの・・。)
そしてルナは眠りにつき・・・夢の中で美味しいお粥を沢山食べる夢を見て・・目が覚めた。
「フウ~・・・昨夜はお腹一杯ご飯を食べる夢を見れたわ・・・そう言えば不思議ね。昨夜はあれ程お腹が空いていたのに・・今朝はちっともお腹が空いていないわ。これも神様の奇跡のお力なのかもね・・・。」
そしてルナは朝のお祈りを済ませると、再び次の村を目指して旅立った。
「またしても・・・一足遅かったか・・・。」
アーサーは教会の中で呟いた。
そして綺麗に掃除された教会に1人立ち尽くすのだった—。
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