山頂の紳士

悠然と流れる白いもやが大気の黄金の中に震える。

黄燐を伴う太陽が東の地平線より静かに昇り、大地には無尽蔵の金波が押し寄せ、千山万水の清浄なる息吹を呼び醒ましていた。

山頂には、一人の紳士が仁王立ちしている。

紳士はジャケットを脱ぐと、腕まくりをし、厳かに頭部へ鉢巻を結い付けた。

聳える山の上にさらに筋骨逞しい上体を泰然と聳えさせ、背筋を正すと、大きく息を吸い込む——。


沖合の海に出た漁師が、不意に船上で振り返った。

収穫作業のために畑に出ていた農家が、不意に空を見上げた。

コンビニの深夜バイトの青年が、目を擦りながら不思議そうに窓の外を見た。

病院で生まれたばかりの赤ん坊が、泣くのを止めて、外を見ながら笑った。


その日のニュース。


<本日早朝、関東全域に大きな声で誰かが「ヤッホー」と叫ぶ声が聞こえました——。>

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