第6話 Dark knight
「おい、起きろ!!!カレル!!!!」
とてつもない大声が耳元で放たれ、
僕は飛び上がりベッドから床に転げ落ちる。
あいたた…と頭を押さえていると
先刻の犯人は高らかに笑った。
「あっはっは!!!!相変わらずオーバーリアクションすぎんだよおまえは!!何回やっても飽きねえぜ!!」
…。
オレンジ色の皮膚、くりっとしたまんまるの目、尻から後ろに長く伸びる尾。
一見かわいく見えるこの小動物の正体は小竜であった。
昔、道端で倒れておりケガをしていたので手当てをしてやったところ、懐いてトコトコと僕の家までくっ付いてきた次第だ。
その頃はまだ可愛げがあったのだがーーーー。
目の前で未だにゲラゲラと笑ってる悪魔を見据え僕は軽くため息をつく。
そして口を切る。
「なあ、長旅で僕は疲れてるんだよ……。王様からも暫く休暇をもらってるし…少しは休ませてくれ……」
今の疲れ具合を精一杯表した様な声で僕は言ったものの、彼には通じなかったらしい。
首を傾げ、僕に向かって先程より大きな声で言葉を発した。
「むーーりーーーー!!!!オイラは自分でごはんはつくれないし外にも出られないし遊べないしでなんにもできないの!!!!!さっさとかまえボンクラ!!」
とんでもない発言を真顔で放つゴンくん(4)であった。
まあ確かに子供とはいえドラゴンが街中に出ては危険だ。
その上彼のような喋るドラゴンも珍しく、業者なぞに見つかれば即捕獲されるであろう。
仕方ない…。かまってやるか。
僕は腰を上げ、外へ出るための支度を始めた。
ゴンはふんふんと歌いながら踊ってる。
気楽でいいな……。
そうふと思った次の瞬間、扉からコンコンと音が鳴る。
誰だ…?
僕は恐る恐る扉を開け、顔を少し出す。
そこには鎧兜を着用したフルアーマーの騎士がいた。
そうして彼は口を切る。
「伝令状でございます!!極秘事項との事で我々一般団員には伝えられておりません!!!どうぞお受け取りください!!」
僕はそれを受け取り一礼をした後、
ベッドへ戻り腰を掛けた。
なんだろう……?
何やら良くない予感がする。
僕のこういった勘はなぜだかいつも鋭い。
ばくばくと大きく音を立てる胸元に手を当て、
深呼吸をした後、びりっとその伝令状の封を開ける。
そしてそこには信じられない内容が記されていた。
ー四騎士 カレル は これをもって四騎士 から 解任すー
………………………
え…………?
そして封にはもう一通の状が入っていた。
…………
ごくんと唾を飲み込みそれを取り出そうとしたその隙、
ゴンが現れ凄まじいスピードで奪って逃げる。
「えっちょ……」
「カレルだけなんか大事そうなの見ててずるいぞ!!!!オイラにも見せろっての!!」
そうしてゴンはその状を取り出し見るーーーー。
が、特に驚いている様子は無い。
先程のように首を傾げ、なんだこれ?と言っている。
えっと…、なんて書いてあるのかなと僕は優しく声を掛けてみる。
そうすると、ゴンはこちらにそれを見せ読み上げた。
「ゆーりあ姫?が処刑だって。誰だ?」
…
…?
……
……え?
僕はすぐさまゴンの元へ駆け寄り状と封を奪った。
裏になにか書いていないか?封の中になにか記されていないか????
そんな淡い期待は、全て打ち砕かれた。
状にはまた、こう記されていた。
ー会議にて 満場一致ー
会議………??
円卓会議の事だろうか……。
四騎士+騎士王とで話し合うこの世界で最高決定権を持つ場………。
逃れようが無い……。
いや…ザックは何をしてる????
彼なら真っ先に反対しそうな気も……
いや何が何でもするだろう。
それなのに…………何故……?
様々な情報が一気に脳内に駆け巡り一時のパニックへと僕は陥る。
いや…………考えている暇は無い。
なにか…なにか行動を移さないと……。
騎士王へ話を伺いに向かうか……??
いや……。王へ謁見できるタイミング何て滅多に無い。
手紙には今日の深夜0時に決行とも記されていたーーーー。
何をするにしても間に合うか………????
今は夕方の6時……。
残り6時間……………。
どうすれば………どうすれば…………。
僕がそう頭を抱えていると、
何やら柔らかいものがぴとっと顔にくっ付いてきた。
「なに悩んでんだよカレル!!!!もしかしてそのお姫様と知り合いとかか??」
いつもの能天気な口調で彼は言う。
八つ当たりともわかっていたが、僕はギラっとゴンへ視線を向ける。
が、ゴンは言葉を続ける。
「ならよー。助けに行っちゃえばいいじゃんか。四騎士かなにか知らんけどよ。ぜんぶ倒しちゃえよ」
そう彼は言った。
……………
四騎士を全員倒す………?
考えてもみなかった。
でも僕如きが……。
いやでも最短でいうと…………。
そんな思いが頭を駆け巡っていたその時、
ある一つの思い出がふと頭に蘇る。
それはーーーーーーーー。
ユーリアの笑顔であった。
太陽のような笑顔、
クスクスと口に手を当て嫌らしい目つきでする笑顔、
何やら思いに耽ける時の切ない笑顔、
ーーーー全てが僕の宝物だった。
倒す、倒さないでは無い。
彼女を救うんだ。
何が何でも。
僕はゴンに言う。
「帰ったら散歩しよう。約束だ」
「ああ!何が何でも帰ってこいよ!!待ってるからな!!!!」
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黒い装束を纏い宵闇へと溶け込む彼のその姿は、
正に
続く。
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