第14話 お手紙
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
御機嫌ようローレライ嬢
急なお手紙でびっくりさせてしまったのではないでしょうか。ごめんなさいね。でも、今すぐに伝えたい事があったものだから無礼は承知で手紙を書くことにしました。
それでは早速本題に入ります。それは昨日に行われたお茶会の事です。あの盛大な茶会の会場で騒ぎがあったのはもちろんご存知の事でしょう。私もあの場にいたのですがその現場を目撃したわけではなく、辺りが次第に騒がしくなってきてから人伝てに聞いたのです。
しかし、私が騒ぎの内容を大まかに聞いた時にはすでに騒ぎは収束を迎え当事者達も姿を消してしまった後だったのです。
私はあの日、あなたの事を守ってあげられなかった。あなたの事を癒してあげられなかった。知らなかったとはいえ友人が辛い目にあっているのに何もしてあげられなかった。私はそれが悔しくて情けなくて仕方がないの。本当にごめんなさい、ローレライ。
騒ぎの内容からして、今は誰とも会わずそっとしておいて欲しいのかもしれないけれど、私はあなたに直接会って話がしたいの。その時の事を詳しく聞いてあなたと辛い思いを分かち合いたい。人に話す事で楽になったりする事もある筈だから。
だからローレライ。明日、私のお屋敷で女だけのお茶会を開こうと思っているからあなたにはそれにぜひ出席してほしい。もちろん今回の騒ぎの話が辛いのなら別の内容でも構わないわ。男性の悪口で盛り上がるのも楽しいかもしれないわね。みんなで集まって楽しい時間を過ごしましょうよ。
でも、本当にごめんなさいねローレライ。私ってあなたもよく知ってる通り思い付いてしまったら周りの事を考えもせず、すぐに行動しちゃうタイプだからあなたにまた無理をさせてしまっているのかもしれないわ。
だからローレライ。もし無理をせずに来てくれるのならぜひ来てちょうだい。明日、お昼過ぎに私のお屋敷で。
楽しみに待っているわ。
ベアトリック・イーンゴット
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「…………」
胸が痛いです。
奥の方が抉られるように痛いです。
ベアトリック様は私の事を心配してお手紙を書いてくださったのに、私ときたら悪い想像ばかりして……失礼にもほどがあります。本当に私はバカですね。
だからきっとこんな風にアシュトレイ様にも失礼を働いてしまったのでしょう。
次、お会いする事が出来たのならちゃんと謝罪をしなければいけませんね。
そう思い、私は再び書面に視線を落とします。
ベアトリック様の心からの想いと、なにより友人という言葉が私の心を捉えて離してくれません。
「友人……」
嬉しいです。
感激です。
心配してくださる気持ちも、友人と言ってくださる事も。
やはり、お手紙は良いものですね。普段、口に出して言えない事も文字にすれば、文章にすれば伝える事が出来る。心に秘めた形のない想いに形を与え、素直に気持ちを伝える事が出来る。
素敵です。
それに今回、こんなお手紙を頂いてしまった事でそれまで私の中にあったベアトリック様のイメージが完全に崩壊してしまいました。それに私とベアトリック様の距離間にも誤解があったようです。
それは、今までの私とベアトリック様の関係性はとても友人と呼べるものではなく、顔見知り程度だと私は認識していました。
まず、私達のような成人も迎えていない女性だけが集まるグループがあって、その中で情報交換などをして親交を深め人脈を広げていくのですが、私とベアトリック様はそこでお会いした際に軽く挨拶をして少しだけお話ししてすぐに離れるといった具合だったのです。もちろん仲が悪い訳ではないのですが、かといって特別に仲が良いわけでもなくリーダー的存在でグループの中心にいるベアトリック様とグループの隅にいるような、いないような私の、そんな程度の関係性。
そう、思っていたのですが……。
私の存在を認め、友人と思ってくれていたのですね。
本当に感激です。
それと同時に本当に自分が情けないです。
私はすぐにベアトリック様宛にお手紙の返事を書き始めました。
たくさんの感謝と感激の想いを込めて。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます