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「そうだよ、そういうこと」
講師は淡々と、だが優しい口調で語りかける。由美は少し複雑な気持ちになった。普段よりも講習に集中できていない。と彼女は自らを分析する。彼女の表情が曇る。講師はその顔を見て彼女の心に何かあったということを読み取った。
「松永さん、この魔法、次の講習までにできるようにしておいて。今はできなくても良いからさ」
「え、ですが…… 」
「いいから、いいから」
講師は優しく提案した。彼女は自分の心を見抜かれたようで少し、恥ずかしくなった。だが、今の自分にはこの魔法ができないということは十分に理解していたため、彼女は悔しかったがその提案を受け入れた。
講習が終わり、廊下を歩く由美の心は意気消沈としていた。彼女が歩いていると講習終わりの亜紀が由美のすぐ側までやってきた。亜紀が口を開く。
「今日はどうでした? 」
「……うまくできなかったよ」
「そう」
悔しそうに由美は語る。それに優しく包むような声で返しを入れた。
由美と亜紀は落ち着いて喋れる場所を探して教習所から移動し、街の中心部に出た。中心部に着いて程なくして、二人は落ち着いた雰囲気のカフェを見つけた。店内に入りそれぞれがコーヒーとパンケーキを頼んで、席に着いたところで、亜紀は話を切り出した。
「今日の講習で魔法ができなかったのって、やっぱり朝の話題にも出た緑彩花が亡くなったってことが理由? 」
「ええ……」
由美は図星を突かれた気持ちになった。
「なんで、そこまでショックなの?」
「……中学生の頃ね、思ったの。私には何も無いなって」
「うん」
「それで、なんか虚しくなって……、周りが羨ましくなってね。みんなは何かしろの目標を持っていてさ、楽しそうに生きてるのよ。あの時の自分には目標が無かったからさ」
「で、そんな当時の由美に何があったのよ? 」
尋ねる亜紀。由美はほんの少しの間を置いて再び語り始めた。
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