第20話 どうかな?

「ーー74kg」


 約半年間、共に闘い続けた戦友……親友……いや、家族とさえ言える存在にまでなった体重計と視線を絡ませ、ジェラールはぽつりと呟く。


 ダイエットを決意した人生最高地点である87kgから一転、彼は13kgもの減量に成功していた。


 ダイエットの第一弾で10kgの減量に成功。


 ダイエットの第二弾で更に3kgの減量に成功したのだ。


 数々の失敗を繰り返しはしたが、何とか満足のできる結果を手に入れる事に成功した。


 そして、ジェラールはこの日遂にダイエットを終了する事に決めた。


 ここまでのダイエットに成功したのだ、これ以上の結果は望まなくとも良いだろう。


 彼はすっかりと細くなった自身の身体を軽々と踊らせ、屋敷の中を歩いて回る。


「マイヤーさん、おかげ様ですっかりと身軽になれました。協力ありがとうございます」


「ランド、今まで協力してくれて本当にありがとう。そしてこれからも、美味しい料理を宜しくたのむよ」


「アンナ、王都で流行っているダイエットがあったらまた教えてくれ」


「ローレライ、いつも私の身体を気遣ってくれてありがとう。私がまた不摂生を始めたら注意してくれよ?」


 そして、ジェラールは一人自室に戻るとベッドに腰掛け、床に向かって深いため息をひとつ漏らした。


「ふぅっ……」


 視線を持ち上げるとそこにはベッドの傍に置かれた小さなサイドテーブルがあって、その上には古い写真立てがひとつ置いてある。


 写真立てを手に取り、自身の正面へと移動させ写真に映った人物と視線を絡ませる。


「ルクス……どうかな? 私は……少しは若返ったかな?」


 ジェラールを見つめる写真の女性はいつもより嬉しそうな表情で笑い、いつまでもいつまでも夫ジェラールの事を優しく見つめ続けていた。


 完





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