第16話 本編。プロローグ
早いものであれから三年の月日が流れ僕は十五歳になった。
今年十六歳になる僕は今日からレドランド国立魔法学園に入学して寮生活を送ることになる。
魔法学園は魔力がある者ならば貴族、平民、身分に関係なく入学できることになっているが、現実はそうではない。
魔法学園には高い入学金が必要なため、入学できる学生は自然と貴族子女や、平民でも金銭的に余裕のある商人の子などに限られてくる。
ちなみに魔法学園に通えない子どもは、王国が運営する王立レドランド北学園、王立レドランド東学園、王立レドランド南学園、王立レドランド西学園に無料で通うことがだから。
授業は午前中だけなので、働きながらでも通えるように王国が配慮している。
平民もちゃんと学んでから働いた方が働き口も多く、給金もいいので、みんな真面目に通うらしい。
今でもたまにあの男の夢を見るが、今日から通う学園がどうも夢の中で語っていた男の舞台と名前が一致していて少し怖くもある。
そうそう、結局のところ僕はネックラ家から一度も離れることなく師匠下で鍛錬を続け、三年ほどで免許皆伝となり、その証として影剣と闇影の名をもらった。
僕自身は自分が落ちこぼれだと思っていたから信じられなくて耳を疑ったけど、でも事実だった。
自信を持っていいとのお墨付きまで。師匠に認めてもらえたことが嬉しくて、気づけば涙が頬を伝っていたよ。今、思い出すと恥ずかしくなるけど。
認められたことが、それだけうれしかったんだ。
これは後で知ったことだが、梟の里に影席が十二席あるが、闇影という席は無かったらしく、僕のためにわざわざ設けてくれた十三番目の新しい影席とのこと。
影の名を与えらた者は色々と権限が与えられるが、その中でも、まず初めにやるべきことは、自分の手足となる配下を選び名を与えること(5人まで)。
ただ、その配下は上級影人よりも発言力があるため、審査が厳しく、自分以外の影名を持つ者から、人格やその実力を認めてもらう必要がある。
僕の場合は黒影の名を持つ師匠だったけど、そこになぜか母上も参加。
迷う事なく僕はアンナとレイナとトワを配下に選んだけど、3人とも無事認めてもらうことができてホッとしたね。
それから彼女たちに名を与え、任務中は、アンナは闇壱、レイナは闇弐、トワは闇参と呼ぶ事とし、闇影の刻印が入った指輪を与えた。
ん? レイナも正式に僕の専属メイドになっているよ?
レイナと仮の専属メイド契約を結んだ後、ひと月もするとレイナの白かった髪は黒へと戻り薬で洗脳されていたことが判明。
もちろんレイナには洗脳が完全に解けた後に、もう一度、僕の専属メイドになるのかを確認している。
ちなみにレイナが闇ギルドに狙われることはなかった。
まあ、あれだけの闇の魔導具をつけられて、その付けられた本人は洗脳されている。普通は生き残っているとは思わないよね。
ただ申し訳なく思うのは、アンナだけでなくレイナとトワにまで絶倫スキルが宿ってしまったこと。
彼女たちはお揃いだと喜んでくれたが原因は間違いなく僕との行為なんだよね。
レイナとトワがアンナに負けないと張り切り、何度も失神。
ふらふらになりながらも僕に何度もしがみついてくるんだ。
ちょっと怖かったけど、それだけ僕を必要としてくれていると思えば嬉しくもなるわけで、いずれ責任は取る。
彼女たちにもそう伝えているし彼女たちもそれを望んでくれた。
それはそうと僕は一つ騙されていたことがある。それは陛下の命だ。
それは僕が新しい魔眼を宿した情報が露呈しないよう調略したものだった。
僕には魔眼がなくネックラ家の次期当主にはなれないといったような。後から聞くと、あんまりな内容が多いんだけど、それだけ陛下は僕の身の安全を危惧していた。
それで、僕が自衛できるほどの力をつけるまではと動いてくれていたのだ。ありがたいね。
僕はずっとネックラ家の屋敷から離れていないが、僕に扮した影人はレドランド王国の騎士団長であるレオンド・アメジスト侯爵の父でありアメジスト領の前当主であるガンドルフ・アメジストの下で鍛錬をしていた。
アメジスト家は代々剣術に長けている家系でガンドルフ様は元騎士団長。
魔眼を宿さない落ちこぼれの子が家族を守りたくて鍛えてほしいという思いを汲み取ったという体で。
それらしい情報を故意に流していたそうだ。
僕の知らないところでアメジスト侯爵家には大変お世話になっていたということだ。
どこかのタイミングでお会いしたいといった手紙をもらっている。その時にはお礼を伝えないとね。
それから三年。僕に扮した影人は暗殺者に狙われることなく無事に王都に帰還している。
たぶん情報操作はうまくいったことかな?
ただネックラ家の次期当主から外れたという情報は事実になっている。それは僕が落ちこぼれではなく、ただ単に弟のクロイが真偽眼を宿したからだ。
ここは夢の中の男が言っていた記憶と一致してびっくりしたけど。
ネックラ家は代々真偽眼を宿していた家系。
真偽眼を宿した弟クロイの方が次期当主にふさわしいだろうと父上は判断したのだ。
それでネックラ家の次期当主から外れた僕は魔法学園を卒業したら平民になるのかと思えばそうはならない。
僕は魔法学園卒業を機に新たな家名と男爵位を賜ることになっている。それだけの実績もある。
僕としては表向き平民になろうが、闇影の名があり、その給金もびっくりするほど高額なため別に構わなかったんだけど。
むしろ貴族じゃなくなれば垣根がなくなりアンナとレイナとトワの三人を妻としてすぐにでも迎え入れることができたのに、と思わずにはいられない。
まあ公になっていないけど、魔眼持ちは特殊で他の貴族よりも優遇されているからね。
勝手な行動はできないんだよね。
「クライ。休みの日くらいは顔を見せに来なさい」
「アンナ、レイナ、トワ。クライのことお願いね」
「兄上、身体にはお気をつけて」
「クライにいたま、いてらさい」
そして今、父上と母上、弟のクロイに、母上に抱かれた歳の離れた妹のクルリから見送られていた。
たどたどしくもそう言うクルリが可愛くて僕はクルリの頭を撫でる。
「クルリ。いってくるね」
つい歳の離れた妹が可愛くて甘やかしてしまうが、その後キチンとみんなにも挨拶をしたよ。
今日の入学式は学園の方針で家族が参加することはできないからね。
というのも子どもの入学式のはずが、入学式そっちのけで貴族たちが各々好き勝手に振る舞う社交の場と化した過去があり、それに憤慨した学園長(上位の貴族)が数年前から家族の参加を認めなくなったのだ。
その代わりではないが貴族は身の回りの世話をする専属メイドを三人まで連れて行くことができる。
三人で一人部屋を使うとなると与えられた部屋では狭くなると思うけど、そこは抜け道というか、やりようがある。
そう俺には同じ歳のトワがいる。トワは平民ではあるが入学金さえ払えば入学できる。
あとは僕が二人部屋を選択すれば、僕たちは二人部屋を四人で使うことができる。
常にメイドたちと同じ部屋で過ごしていた僕は失念していた。
メイドたちにもちゃんとした部屋が与えられていることを。
アンナたちも与えられた部屋があると後で知ることになるが、その部屋が使われることはなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます