Alius fabula Pars44 美容整形魔法

ディバルの計画は、魔法を使った美容整形である。

勿論、この世界にその様な観点は無いが実際別の大陸で商売として(秘密結社だが)成り立っているので真似をしたのだ。

(と言うか、それも俺の設定だし)


女性の夢で有り、究極の魔法とも言えるだろう。

無論、”先達”からこの商売に関して様々な指導も受けている。

指導を受けたのはディバルだが、実際に表に立つのはシニストラだ。

何故なら、第一印象が良い。

“自分も”こんな素敵な体つきになれるのかと錯覚してしまうからだ。

また、現実にシニストラにも魔法を教えて一緒に施術するからだ。

更に、エルフ特有の魔法とし人族には扱えない事とするのも信用を得やすい。


最後に広告塔だ。

この国で一番の権力を持つ女性と知り合いのシニストラ。

上手く誘い出して、本人に奇跡の魔法を体験させるのだ。

勿論、広告塔は無料で施術を行う。


一番のポイントは、貴族には幾つものオプションがある事。

また低価格で市井の娘達を顧客にする為に、胸部だけに特化した広告塔を街中に配置して噂を作る事だ。


基本的にシニストラが動き、声を掛けて興味の有りそうな娘達を勧誘して無料で施術したら、全員から泣いて拝まれたシニストラだ。


実際の施術は、被験者を魔法で眠らせてディバルとシニストラが二人で行う。

魔法で眠らされることに疑問を持たれるが、”大事な胸に神経を集中させて魔法を行うので理解してほしい”と、説明すると全員が納得した。


美の化身であるエルフのシニストラが無償で与えてくれた魅惑の身体。

つい、さっきまでとは違う自分の胸部。

張り出した胸部。

重たくは無いが肩こりが不安でもある、が些細な事だ。


そして被験者全員に言い渡された注意事項。

「お前は特別に無料だが、お前の様に成りたい者が居たら金は取るぞ」

「ええっと、どの位でしょうか?」

「う〜ん、まだ決めてはいないが、それなりの金額にしないと、その胸の価値がないだろう?」

「分かりました。すっごく高いと言いますね」

どの娘も自分の胸部に満足して話の意味を理解した様だった。





現在、モナスカの街中で大通りから入った路地に小さな店を作った。

通りや入口には様々な魔法を施してある。

店は、さほど広く無く入口を入ると待機室だ。

待機室とは施術を行う者の部屋では無く、護衛や御付きの者達の待機室だ。

奥には身体を洗う場所と着替え場所が並び、施術後の休憩室も並ぶ。


最奥に構えているのが施術室だ。

室内は廊下から薄暗く、間接照明の灯りが目に優しい。

施術室は両側がカーテンで間仕切りされていて、それぞれに胸部の見本と臀部の見本が並べて有る。

室内は全裸でも暖かく風邪をひく心配は無い。

施術の際は顔と股間に布を置くのがディバルの配慮だ。



店の入口は一般用だが、貴族女性達の出入口は別の場所に有る。

それは大通りに面している高級仕立て屋だ。

元々貴族が利用していた仕立て屋の裏側に隣接する店だ。

仕立て屋の店内を奥に行くと扉がいくつかあり、最奥の扉を開けると通路が続く。

そこからはディバルの店だ。

直ぐに貴族用の待機室が並んでおり、付人は一般用の待合室で待つ事になる。


こうして貴族が路地から入らず、コッソリと仕立て屋から出入出来る事も受けが良かった。

貴族はメンツを気にして自尊心が高いからだ。

誰にも気付かれず体型を変えられる気遣いが貴族の女性達に高評価を受けていた。


勿論、仕立て屋のオーナーや店員たちには記憶の改竄を行い従順な人材にしてあるし、こんな都合の良い場所に店を持つなど簡単には行かないが、ドーズを塔に呼び寄せて説明したからだ。


ある日、デクストラがギルドにてドーズに説明した。

「今日は何の御用でしょうか?」

「実はな、アルジ様がお前を呼んでおられる。都合の良い時に塔に来て欲しい」

「えっ、と。今からでも構いませんが」

「では行くとしよう」



街の通称ではエルフの塔と呼ばれているディバルの別荘に向かうギルド職員とエルフと偽っているホムンクルスの調整体だ。


塔に到着すると、謁見の間に案内された。

カルバラリア国で謁見した時と同様の配置でディバルを迎え待つドーズだ。


ドーズがかしずいているとデクストラの声が聞こえた。

「アルジ様のお許しが出てのでおもてを上げて良い」

ゆっくりと緊張したが顔を上げた。

何度か訪問して見ていたクリスタルの玉座に座って居たのは、会って会話もした事のある自称エルフだった。

左右にはいつもの黒装束姿のデクストラとシニストラが立っている。

やはり玉座に座る者が居ると居ないとでは、圧倒的な威圧感を感じるドーズだ。


「ドーズ、お前に頼みたい事がある」

「はい、何なりと」


ディバルの説明では、大通りに面した貴族が利用する店に隣接する裏通りの店だ。

簡単に言うが、そんな都合の良い場所など直ぐには思い浮かばない。


「調査しますので、しばらくお時間を下さい」

「どの位で見つかりそうか?」

「この様な依頼は初めてなので。まして店舗となるとかなりの時間が必要かと思われます」

「まあ、理解している。頼んだぞドーズ」

「では、早速戻って調査しますので、これにて失礼致します」


ドーズが謁見の間から出るとデクストラから質問された。

「アルジ様、例の計画の店でしょうか?」

「そうだ。まずはシニストラにいろいろ動いてもらうがな」

「承知しております」

「うむ。ところでドーズはどうだ?」

「はっ、よく働いております。アルジ様の事は我らのお仕えする方と認識しております」

「そうか。まぁ、良くしてやってくれ」

「「ははっ」」


こうして、現在に至っている。





ある日、王妃フィル・プロピン・モナスカ専用の応接室にシニストラが顔を出した。

ディバルからの命令で、初めて施術した人体に変化や異常が無いか定期的に見る為だ。


実際は問題無いのだが、王妃と定期的に顔を合わせる事で秘密結社の報告や指示も出す事ができるからだ。


「今回も問題は無い様ね」

「ハイ、至って健康で何の問題も有りませんわ」

女性同士だが全裸の王妃を相手に満足そうな表情のシニストラだ。


これは、施術した場所に違和感やシコリなど以前とは違う体調の変化の有無を本人から聞き出し、シニストラが視覚と手で触ってみて判断する事だ。


施術した身体には問題は無かったが、念のため魔法で調べた所、ある重大な事に気付いたシニストラが王妃に告げた。


「フィルさん?」

「ハイ?」

王妃の要望で公務では無い場合は名前で呼んでもらう様にしている。


「貴女、妊娠してるわね?解ってる?」

「えっ!?ええぇぇぇっ!!!!」


皇太子を含め四人の子を産んだ王妃は、それなりの歳だ。

“アラフィフ”の女性が二十代の様な身体になって自慢したのは、誰あろう国王だ。

その変貌ぶりに我を忘れた二人は、結果的に王族を増やしたみたいだった。


「どうしようシニストラ様」

「産めば良いのでは?」

「この歳で?五人目ですよ?」

「それはまず国王に報告するべきでは?」

「はあ・・・」


気の無い返事の王妃。

やっと子育ても終わり、好き勝手に暮らせると思ってたのだが、美しい身体を手に入れて調子に乗って子供を授かったようだ。


シニストラに後押しされて国王に報告する王妃。

「なっ、なんだどぉ!本当なのか?」

「ハイ、シニストラ様から教えて頂きました」

「そうか。よくやった」


普通に喜んだ国王に安心した王妃だ。

王妃の心配はこの歳で又子供が出来た事を良く思わないのでは無いかと不安が有ったからだ。

しかしそれは杞憂に終わることとなった。

モナスカ王家は代々世継ぎ争いも無く子育ては家臣達も協力的で、この大陸では非常に安定した国家だ。


「しかし、皆に何と言うかのぉ〜」

国王の羞恥心が"いい歳して又子供を作った"と家臣に思われる事が恥ずかしかったからだ。


国王も王妃も、子供達に家臣から子宝に恵まれた事をチヤホヤされる事を、今から憂鬱な気持ちで待つ事となる。


「とにかくだ、フィル。今後の行動は分かってるな」

既に五回目なので特に問題は無い王妃。

「大臣や子供達にはいつ伝えるの?」

「余に任せてくれ。ところで腹は目立たないが?」

「ハイ。エルフ特有の観察でまだ小さい様です」

「そうか」


実際、国王も晩餐会で王妃の”努力の結果”、素晴らしい体型になったことを自慢していたのだから。

家臣に羨ましがられ上機嫌の国王だったが、もう一人子供が増えて歳費が増えることが悩ましかっただけだ。






本来、美容整形魔法院こそ主たる物語の内容なのだが、あえて閑話的な位置付けにしてある。

十傑による闘技大会の方が面白そうだったから・・・





スマホ入力慣れてないから時間かかる

パソコンどうしようかなぁ

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