第49話 そしてカノジョはシニカルだった。
「あのシェアって」
オレは耳を疑った。シェアってことにではなく、その詩音の言葉に京子がふたつ返事で答えたことにだ。
苦い顔をしていたとは言え。
「仕方ないじゃない『あんなの』聞かされたら」
詩音が佐々木咲乃の嫌がらせを抑えるために打った別れる芝居のことだ。
「渋々よ渋々。調子乗らないこと、モテモテ気分とか殴る」
「怖いね、本妻は。亮くん大丈夫よ、癒やしは私が担当するから」
本妻と呼ばれた京子は悪い気はしてないようだ。詩音ってうまいのか京子が単純なのか。
「それより亮ちゃん?「
京子は怒りの矛先をこちらに向けたのではない。
怒りは怒りとしてあるのだ。それとは別に『ヤラれぱなし』でいいか、と。京子は見た目から想像できない『武闘派』気質なのだ。
「別にいいと思うけど」
詩音はお茶を啜りながら平和そうな顔して答えた。
色んなことが片付いてほっとしているのだ。理解された安心感もある。
「あのね詩音サン舐められたらアカンって小学校で教育されへんやったん?」
たぶんされない、オレは思った。
「大丈夫、ウチの人そんな呑気に出来てないから」
「ウチの人!?いつから詩音のウチの人になったの!?」
「亮くん、京子サンってこんな騒がしい娘だっけ?」
「たまにね、ちょっとアレな時ある」
『アレって何よ!』そんな京子の声を遮る、というか無視か?無視して詩音は現状を淡々と話し始めた。
「今まで『
「そうなんだ、ごめん知らないんだ」
「そこはいい。これから知ったら。模倣にしても公開時間合わせるにしてもスタートは『受け』なのよ。話はオリジナル展開していくから着地点はかわるけど」
「それが?」
「そう、それがなんだけどはじめてだと思うの、ねぇ?」
「はじめてだな」
「えっ、何、その『通じ合ってる風』もうふたりってそんな―」
「はいはい、大丈夫。私達3人ともお子様なんでその手の心配はいらないです。はじめて『先手』を打ってきた。つまりは『フォロー』してきたでしょ?『
『
それが今回詩音の言う『先手』に当たる。
「慣れないこと仕掛けてきたのよ。テンション上がってんでしょうね。亮ちくんボロボロにして後は泣きついて来るの待つだけ――」
「ウチの人甘く見たのよ、ざまぁよ」
詩音は新しく入れ直したお茶を美味しく頂きながらほくそ笑んだ。
その笑顔が驚くほど大人びて、そして
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