2 いざ、中央街へ

大通りの馬車乗り場にはたくさんの馬と人が集まっていた。

一際大きな建物は受付場だろうか。

私はその受付っぽい建物まで足を運んだ。


「すみません、中央街まで行きたいのですが」

「中央街ですね。お一人様でしょうか? 相乗りをご所望ですか?」

「私一人なので相乗りでお願いします」

「それでしたら五件ほどあります。時間帯は――」


出発時間は直近でこの後すぐの物と、数時間先の物が四件あった。

別に急いでいるわけではないのだけど、私はこの後すぐの馬車に乗ることに決めた。

理由は二つある。

馬車移動には護衛が着くことがあるが、その護衛代というのは相乗り乗車の割り勘になる。つまり、相乗り人数が多ければ多い程、一人分の負担は減る。

資金力が高くない私にとって、ここは押さえたい所だ。それが一点。


もう一つは護衛の人数。護衛と言っても様々な役職の人が担当するのだ。

領主直轄の騎士から雇われ用心棒、それに冒険者といった者から選ばれるそうだ。

さすがに騎士は貴族などのお偉いさん方しか頼めないので、大抵は用心棒か冒険者になる。

基本的に護衛の枠は、積載人数の関係上多くない。だが、都合よく乗客として冒険者が乗ってくることがあるのだが、その場合その冒険者も護衛を賄ってくれるケースがあるのだ。

もちろんその場合その冒険者は割安での同乗になるらしいのだけど。

つまり、冒険者も同乗する馬車に乗れれば安全性が飛躍的に上がるのだ。しかも値段が変わらずに、だ。


相乗り人数が多くて、冒険者の乗客も多い。この二点に置いて最も都合がよかったのが、直近の馬車だったのだ。

実はもっと都合のいい大人数編成の馬車があったらしいのだが、それはつい先ほど出立してしまったらしい。惜しいことをした。


ともかく、私はその直近の馬車に乗ることにしたのだった。


受付の人に800ルアクを渡す。うぅ、高い。これだけで、私の所持金がごっそり減った。

その代わりに数字の書かれた手形を手渡される。


「そちらに書かれた番号の馬車に、それをお渡しください」


なるほど、切符みたいなものか。

私はそこに書かれた5という番号の馬車を探した。


「すみません、一人です」


私はこの馬車の御者らしき人に手形を掲示した。


「おう、嬢ちゃん一人かい。これは中央街までの馬車だけど合ってるかい?」

「はい、大丈夫です」

「それなら結構だ」


私は車内に入る。大きさは、そこそこ広い。電車一両の半分くらいの大きさはあるんじゃないだろうか。進行方向と垂直の向きになるように椅子が備え付けられており、同乗者同士が対面する形となる。


私はその広さに足を伸ばして楽しんでいたが、直ぐに別の乗客が乗ってきて、あっという間に隙間がなくなった。

乗車人数は私含め六人。一人はいかつい顔した、いかにも用心棒の人。服はタンクトップみたいに破れていて、そのムキムキな筋肉が露わになっている。背中には刃渡りの長い剣が収められていた。男はその剣を鞘ごと引き抜くと自身の横に置いて座った。


残りの四人は知り合いのようだった。これが、受付の言っていた冒険者集団か。

男女比は同じ。男二人に女二人だ。

短髪で気の強そうな男は、カチャカチャと鎧の音を立てていた。武器は長剣かな。

逆に気の弱そうな男の方は、ローブを身に纏い杖を手にしていた。ゲームで言う魔法職ってこんな感じだよね。

眼鏡をかけた女からは何やら薬品の匂いがした。薬草とかを取り扱ってそうな雰囲気だ。おそらくそういう役割をになっているのだろう。

もう一人の女はというと、大きな荷物を背負っていた。人一人が入れそうなバッグだ。それを軽々と運んでいる。このパーティの荷物なのだろうか。


役割で言うと、剣士と魔法使いと薬師と荷物持ちってとこか。

戦えそうなのは男二人だけっぽいね。


「それじゃ出発しますぜ」


人数がそろったのか、御者は馬車を動かした。

これから私の冒険は始まる。

さよなら、私の故郷ラースト。また戻ってくるからね、母さん。


私はこの時、魔法使いの視線が私にくぎ付けになっていることに気づかなかった。

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