サキュバスの娘だって冒険したい 〜転生したら淫魔の娘だったので、魅了や触手を駆使して世界を堕とします〜
三文小唄
プロローグ:サキュバスの娘
1 サキュバスの娘
私、
今にして思えば、スマホを片手に歩いていたのがいけなかったのかもしれない。
もし早めにソレに気づいていたなら私はここで死んでいなかったのかもしれない。
けれど、それは意味もない後悔でしかなかった。
「死ねええ!」
男はそう叫びながら、やたら刃渡りの長いナイフで私を唐突に刺したのだ。
痛い。痛い。
腹部に血が滲み、痺れと共に熱いものが流れ出ていく感覚がする。
痛い。痛い。
段々と寒気がしてくる。立っていられなくなる。
痛い。痛い。
倒れて、頭を打って、血と涙と土が混ざり合って、痛みと寒気とが混ざり合って、気持ち悪さが絶え間なくやってくる。
「転生教、万歳!」
男はそう叫び、
一体、私が何をしたって言うんだ。なんでこんな男に殺されなければならないのか。
倒れた時に落としてしまったスマホに手を伸ばそうとする。
「きゅう……ぎゅう、しゃ。呼ば、な……いと。じに……たくない」
しかし私の手が、スマホに触れた感覚は一生来なかった。
∇
ハッ、ここはどこだ。
木でできた天井が視界に映っている。
ここは病院なんだろうか。
あれ、身体がうまく動かせない。
首もうまく回らない。
え、私そんなに重症なの?
これは半ば半身不随と言えるのではないだろうか。しかし、刺された腹部に痛みは全く感じない。
とりあえず誰かナースでも呼んで意識が回復したことを伝えよう。
でもどうやって?
身体が動かない状況で、ナースを呼ぶボタンが押せるわけもない。
それなら、叫べばいいじゃない!
ということで私は、まわりに迷惑がかからない程度の声量で叫ぶことにした。
「おぎゃああ」
え?
今の私の声?
まるであかちゃんのような自分の声に驚いていると、突然視界いっぱいに人の顔が現れた。
いや、人……じゃない!
人の形を大まかにとっているけど、瞳孔は縦線だし、頭からは小さな角生えてるし、犬歯は大きいし、耳は少し先が尖っている。それに……私よりも圧倒的に大きい。
「※※※※※※※※」
その怪物は何かをしゃべっている。
言語は聞き取れているが、いまいち意味が分からない。この怪物たちの言語なのだろう。
うわあっっと。
私は、その怪物に優しく抱きかかえられた。その大きな腕にしがみつくと、目の前に大きな胸が当たる。
こいつ、女だったのか。しかもナイスバディ―。
私はどこかに連れていかれているようだ。
周りの音がうるさくなっていく。揺れる視界の中で、様々なものを見た。
家具らしきもがあるから、どうやらここはこの怪物の家らしい。
暖炉のようなものもあり、その炎の大きさでわかったことがある。
これ、この怪物が大きいんじゃなくて、私が小さいんだ。
というか赤ちゃんになってる気がする。
どういうわけか、私は赤ちゃんに生まれ変わってしまったようだ。
怪物が戸を開く。すると何人かの似たような怪物がそこで話をしていた。さっきからうるさかったのはこいつらの話し声だった。
そいつらは、私を一目見ると、目を輝かせて近づいてきた。
く、くわれるのかっ!?
だが、目的はそうではないらしく、ただ私を可愛がっていた。
「#######」
「※※※※※※※」
「@@@@@@@」
彼女らは次々に知らない言語で私に話しかける。それを抱きかかえた怪物が自慢げに何か語る。もしかして、この抱いている怪物が私の母だったりする?
怪物たちは多種多様だが共通点がある。頭に生えた小さな巻角、縦の瞳孔、鋭い牙、尖った耳、腰から伸びる黒い蝙蝠のような羽、悪魔のような尻尾に豊満なバディ。
ああ、これ知ってるわ。
本で読んだことあるわ。
こいつらサキュバスやん。
え、っていうことは何。私サキュバスに転生でもしたの?
え?
マジで?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます