第58話散策
ギルドの酒場で竜の牙と言うパーティーに絡まれたせいでカトレアとルイーズさんの機嫌が悪い。
昼前にギルドに来てそのまま依頼達成の打ち上げのつもりだったのに悪い噂があるパーティーに絡まれた事に加え酒が入った事で更にイライラが増加し更に酒を煽ると言う負のスパイラルに突入している…。
自分はこの世界で成人しているので酒を飲んでも問題は無いんだけど、どうも日本の感覚が残っている為15歳で酒を飲むってのに抵抗があるから柑橘系の果実を絞ったジュースのような物をチビチビと飲んでいる。
それに前世でも酒が原因で階段から落ちて死んだ自分としては、同じことを繰り返したくない一心で酒を飲むって事にも抵抗もあるし。
酔ったルイーズさんに酒の入ったジョッキを顔に押し付けられ飲めと言われても飲んでないよ!
てかルイーズさん酒癖悪すぎ!!
依頼を受けず酒場で打ち合わせや管を巻いている冒険者達も酔ったルイーズさんに絡まれないようあからさまにこっちを見ないようにしてるし…。
そしてカトレアは酔わない? 元アンデッドだから?
さっきからルイーズさんと同等のスピードで酒を飲んでるけど顔色一つ変わってないし。
そもそも酒飲んで酔わないんだったら水でも良くない? 酒を飲む必要ってあるの?
「なんか周りの皆さん真面目に依頼の打ち合わせや行動計画とか立ててる中で昼間っから酒飲み続けてるのもなんだし、今日は宿に戻って、宿の食堂で飲みなおさない?」
「あぁあん? あたしがここで酒飲んじゃ悪いってのかぁ~?」
うん、完全に悪酔いしてる…。
「いや、ギルドの酒場を儲けさすより、いつもお世話になっている宿の食堂で飲んだ方が宿の利益になるし、そのまま部屋に戻って寝る事も出来るから…」
「カツヒコォ~~、お前頭いいなぁ~、宿の食堂で飲めば眠くなったらそのまま部屋に行けばいいとかお前天才かぁ~~~!!」
ダメだ…。
完全に泥酔してる。
意地でも宿の食堂で飲ませないと、ルイーズさんを背負って宿まで帰る羽目になる!!
自分より身長も体格も大きいルイーズさんを運ぶのは嫌だ!
いや、それよりも宿まで運んでいる姿を街の人に好奇の目で見られるのはもっと嫌だ!!
ルイーズさんを説得し、酒場の会計を済ませると今の所は何とか真っすぐ歩けるルイーズさんを先頭に宿へ向かう。
なんだろう…。
ギルドに居る冒険者さんからとても好意的というかよく言った! といわんばかりの視線が自分に向けられてる…。
宿に戻るとルイーズさんは即食堂に行き、カトレアと酒を飲み始める。
「とりあえず自分は今回の依頼で使った薬なんか補充して街を散策して来るから…」
そう言ってその場を後にすると、ルイーズさんの相手はカトレアがしてくれるようで意外とすんなり逃げ出せた。
薬屋で解毒薬等を購入した後で街の中を散策する。
キャールの街に来てから何回か散策はしたけどまだ街全体を見て周ったとは言えないんだよね~。
田舎村育ちの自分にとってはある意味大都会だし。
まあ前世の日本と比べると大通りも活気のある商店街って感じだけど。
とはいえ大通りのみならず1本裏に入った道も意外と人通りが多く、大通り程ではないにせよ様々な店が立ち並び多くの品が店先に並べられている。
うん、今回散策したかったのは1本裏に入った道じゃなくてその更に奥だったんだよね。
活気の道から更に奥に進むと商店が立ち並ぶ道から職人さんが作業をする町工場が立ち並ぶ道に出て、その更に奥に行くと居住区になっていた。
実の所、自分としては宿屋暮らしじゃなくて、そこそこ広く好き勝手にインテリアとかいじれる家が欲しんだよね。
のんびりと入れる風呂も欲しいし。
そんな事を思うのも当然と言えば当然で、宿には風呂は無く、街の各所にある公衆浴場を利用するか宿でお湯を買って体を拭くかの2択しかないのが最大の問題だ!
元日本人としては毎日風呂に入るかせめて温かいシャワーを浴びるぐらいの事が出来ないのがとてもつらい。
実際、ルミナ村に居た時、実家には風呂があったけど、大体使用するのは週に1回、それ以外は水かお湯で体を拭くのが当然だったし、普通の村人は唯一あった公衆浴場に2~3週間に1回行くのが普通だったんだから。
そして、稀に公衆浴場を利用する人って事は、結構体に汚れが付いていて、その結果公衆浴場のお湯も結構汚れている。
う~ん、この世界には湯に浸かる前にかけ湯をしてから入るという概念は無いらしい。
むしろ自分としては湯に入る前に体と頭を洗ってから湯に浸かって欲しいもんなんだけど…。
そして公衆浴場の湯が汚いのはルミナ村だけではなくキャールの街にある公衆浴場も同様…、いやむしろ人口の割には公衆浴場の数が少ないのかルミナ村よりもお湯が汚れている。
1回だけ公衆浴場に行ったけど濁ったお湯を見た瞬間、なんか変な病気にでもなりそうで帰って来てそれ以降トラウマのようになっている。
うん、やっぱり家が欲しい!!
いや、風呂が欲しいから、風呂を設置する為の家が欲しい!!
そう思いながら居住区を散策しながら良い物件が無いもんかと歩き回るが、どうもこの区画は殆どが2~3階建ての集合住宅って感じで一軒家と言うのはあまり見かけない。
やっぱり大通り沿いにあった不動産屋みたいなところに相談しないとダメなんかな~。
そんな事を考えつつ歩いていると、いつの間にか近ずくなと言われていたスラム街の近くまで来てしまったらしい。
進めば進むほど立ち並ぶ建物がボロくなってたけど、スラム街に近かったからか…。
近づくなと言われてはいたもののスラム街近くまで来てしまったので、ついでとばかりにスラム街に足を踏み入れる。
うわ~、これがスラム街ってやつなんだ…。
目の前に広がっていたのは、崩れた建物に無理やり屋根を付けただけの建物や、木造のあばら家、布で屋根だけを造り木で作った風よけを置いただけの家と言うにはほど遠い物が乱立する場所だった。
こ、これは酷い。
よくこんな場所で生活出来るな。
ルイーズさんが危険を伴うと言うのに開拓村への入植者を募るとすぐに人が集まるってのも納得だ…。
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