第40話お約束のトラブル2

絡んで来た冒険者と訓練場で戦う事になったけど、なんかギャラリーは賭けを始めてるし、相手は凶悪な笑みを浮かべてるし…。


なんでこんな事になったのかと思っていると、バイルと呼ばれてるガラの悪い冒険者が斬りかかって来る。

「おらぁ~、死ねや!!」


明らかに技術とか関係なしに腕力で剣を振るうスタイルのようで、バイルの動きを冷静になってよく見ると次に何処を狙って来るのかが何となくわかる。

うん、よくよく考えたら無言で斬りかかって来るリビングアーマーとかの方が怖いし動きも予測しずらかったけど、人相とガラが悪いだけで力任せに剣を振るだけの相手だと自分でも驚く程気持ちに余裕が出来たきがする。


カトレアやリビングアーマーよりも動きは遅いし何より剣を力任せに大振りするだけで余裕で躱せる。

後は、相手を倒す方法だけど、とりあえず剣を抜き魔力を纏わせたら、バイルが剣を振り下ろす瞬間に合わせて剣で横に薙ぐ。

剣と剣がぶつかり合った瞬間、若干の手ごたえはあった物の自分の剣はスッパリとバイルの剣を斬る。


「なぁ、なぁ、何しやがったぁ~~~!!!」

慌てて後ろに飛びのいたバイルは、自信の剣が真ん中あたりから綺麗に斬られている事に驚き、夢でも見ているかのように剣を見つめている。


「いや、普通に剣を振っただけだけど、何で剣に魔力を纏わせてないの? 基本って聞いたんだけど?」

「はぁ? 剣に魔力を纏わせるだぁ~? 何が基本だ!! 普通はそんな事簡単に出来るもんじゃ無いんだよ!!」


バイルは斬られた剣を握ったまま怒鳴り声を上げる。

「そうなの? まあその辺は後でカトレアに聞くとして武器無しでまだやるんですか? 剣も半分の長さになっちゃいましたし、魔力を纏わせることが出来ないなら自分の剣を防げませんよ?」

そんな自分の言葉にバイルは苦虫を嚙み潰したような顔をし地面に唾を吐く。


「くそっが!!」

そう言うと、バイルはそのまま背を向けて訓練場を出て行ってしまった。


「勝者カツヒコ!!」

ダイルンさんが自分の勝利を告げると、そのまま残ったオッズのメンバーに「次は誰だ?」 と問いかけているが、声をかけられたオッズのメンバーはお互いを見合った後、そのまま訓練場を出て行ってしまった。


魔法使いぽい人いたからどんな魔法を使うのか少し楽しみにしてたんだけど…。

訓練場に居るギャラリーはオッズと言うパーティーが勝つ方に賭けていたであろう人達が訓練場を出て行ったオッズの4人組にブーイングを飛ばし、自分に賭けていたと思われる人は大喜びしてる。

まさか自分の倍率高かった?


そんな事を思いつつ、自分も訓練場を後にしようとすると、ギャラリーの中から、筋肉隆々で露出度が高い鎧を着たお姉さんが飛び出してきた。


「おい、あんた名は何て言うの!」

「カツヒコですがどうかしましたか?」


「そうかカツヒコか、その歳で魔纏を扱えるのは珍しい逸材だ! 1つ私と立ち会いな!」

「嫌ですよ、戦う理由無いし、明らかにさっきの人達より強そうだもん!」


「ガァハハハハハ!!! 当たり前だ! 行くぞ!!!」

そう言うとお姉さんは筋肉を隆起させたと思った瞬間、手に持ったバトルアックスで斬りかかる。


「うわぁ!! いきなりすぎるし、戦うなんて言ってないし!!!!」

そう言いながらバトルアックスを避け、距離を取る。

この人、見かけに見合わず動き早いし動きに無駄がない、何より自分より体格が良いから圧がすごいうえに、腹筋はバキバキに割れてるし、何より胸元の谷間がすごい!!

これは絶対に垂れてない!!!


「私はルイーズって言うんだ、一応Bランクの冒険者よ!」

「いや、BランクがDランクに襲い掛かるってどうなんですか!!!!」


「ふん、夜這いをされたわけでも無いんだ、男ならランクなんて気にせずかかってきな!!」

そう言いながらルイーズと名乗った女冒険者はバトルアックスを器用に操って襲い掛かる。

何とか剣で防いではいるけど、一撃一撃が重く、剣とバトルアックスがぶつかるとその度に剣が弾かれ身体が後ろに飛ばされる。

この人も武器に魔力を纏わせてる。

ていうかバトルアックスの柄が約1メートル以上はある上に両刃の斧は50センチぐらい、合計で2メートル近い長さの得物だけど、柄を持つ位置を変えて間合いに変化を与え反撃の隙を与えてくれない。


「なんだぁ~、こんなもんかぁ~? 本気出してかかって来いよ、私は魔法をあまり使わないけどカツヒコは使ってもいいんだぞ。 男だったら本気でかかってきな! それともカツヒコには付いてないのか? それとも縮こまってるのか~?」


「いやいや、ルイーズさんあなた一応女性でょ! なんて事サラッと言ってるんですか!!」


一旦間合いを取ったルイーズさんに向かってそう言いながら、左手の指先に魔力を集め、バスケットボール大の火の玉をイメージし連射する。


「おお! 魔法も使えるんじゃないか! いいね~、手加減なんかしないで本気で撃ってきな! こんなんじゃムダ毛処理代わりにもならないよ!」

「いや、女性がそのセリフおかしいですから!!!」


火弾を気にぜず一気に間合いを詰めて来るルイーズさん、恐らくこのまま普通に正面からぶつかっても押し返されるのが目に見えるので、身体強化をし体と剣に魔力を今以上に流し込み勢いよく前に出る。

間合いに入ったのかルイーズさんが顔がニヤリと笑った気がした瞬間、地面を強く踏み込み勢いを止め、その際に行き場を失った力で身体を回転させるように身をひねり遠心力を利用して剣を叩きこむ。


ガキィィィーン!!

ドッス!!!!!


金属と金属がぶつかり合った音がした直後、腹にバトルアックスの石突が突き刺さり鈍い音と共にそのまま訓練場の壁まで飛ばされる。


「う~ん、まだまだだね~。 最後の一撃は良かったけど無駄に回転した事で私の動きから目を離したのが失敗だね。 とは言え若いくせに魔纏をそこそこ使いこなせて身体強化も魔法もスムーズに発動できる。 鍛えればもっと伸びるよ」


ルイーズさんはそう言うと、「あ~楽しかった~」と言いながら訓練場を去って行った。


ていうか、革鎧着てたけど、思いっきり痛いし、動けないんですけど…。


「まあ格上相手に一応は善戦したわね。 とは言え無駄な動きも多いし、あの女、ルイーズが言ってた通り、回転で相手から目を離したのは愚策ね」

「いや、格上相手に頑張ったんだから優しい言葉とか無いの?」


「ないわ、むしろ私からしたらあの程度なら勝てないまでももっと追い込むぐらい出来なかったことに呆れてるぐらいだわ。 まああのチンピラまがいの冒険者じゃ対人戦の練習にはならなかったし、丁度良かったじゃない」

「確かに勉強にはなったけど、痛みで体が動かない…」


そう言う自分にカトレアは「自分の限界を超えた身体強化を使った結果なんだから回復魔法を全力で使ってなおしなさい」と言われてしまった。


一応自分の身体が耐えられるぐらいの身体強化をしたつもりだったのに、いつの間にか身体にダメージを与えるぐらいの身体強化をしていたみたいだ…。


もっと身体強化の精度を上げないと、戦いが終わった後動けなくなるって最悪だからな…。


それにしてもカトレアが剣の練習をもっとしようと言う顔をしてるのが気になる…。

剣の修行も大事だけど、依頼を受けようね、依頼の合間に剣技の修行にしようね。


お願いだから剣技の修行の合間に依頼とか言わないでね…。

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