第36話昇格

ギルドに到着したのは日が傾きだした頃になってしまった。


角ウサギやその他の獲物もアイテムボックスに収納し帰ろうとしたら、カトレアに火の始末をする、泥濘にした場所を元に戻せと言われ、後始末をしていたらギルドに戻るのが遅くなってしまった。

うん、火の始末は分かるけど、泥濘を作った場所はそのままでもそのうち水分がなくなって元にもどるから気にしなくていいような気がするんだけど、カトレアいわく万が一他の冒険者が泥濘に足を取られ怪我でもしたらとの事で、土魔法を使って泥濘に土をかぶせる作業までさせられた…。


ギルドに入ると、無茶な特別試験を受けた新人が帰って来たと併設された酒場にたむろする冒険者達がニヤニヤしながら失敗の報告をするだろうと見ている。


受付カウンターに向かい、依頼達成報告に向かうと、カウンターには、薬草の買取をして貰っている、みすぼらしいフードを被った右腕の無い冒険者が銅貨を数枚受け取っていた。


「カツヒコ、油断をしたり相手を侮ったりするとあのように大怪我をして冒険者としてまともな依頼を受けられなくなるのよ、強くなった気になっても常に油断はしない事、私だって一瞬の油断で殺されたんだから」


カトレアが目の前の冒険者の姿を見て自分にそう言い聞かせて来る。

確かに何があって腕を失ったのかは分からないけど、腕が無くなったらそれだけで戦闘能力は半減どころでは済まないし、カトレアのように一瞬の油断で命を絶たれる可能性もある。

自分の目の前と真横にそれを体現した人が居るととても説得力がある。


そう思っているとフードを被った片腕の冒険者はいつの間にか居なくなり自分達の順番になる。


「あの~、特別試験で角ウサギを2人で100羽狩って来るって事だったんですが、何処に獲物出せば良いですか?」


そう言うと受付のお姉さんは一瞬手ぶらの自分達を見て何を言っているの? と言う表情をした後、席を立ち奥に行ってダイルンさんを呼んできた。


「おう、角ウサギ100羽狩って来れたか?」

「ええ、角ウサギ146羽、大きなネズミ4匹、ゴブリン6匹、オーク1匹、巨大カマキリ2匹を狩ってきました。 何処に出せば良いですか?」


そう言うと、併設された酒場で失敗の報告をしに来たと思っていたであろう冒険者やダイルンさんは驚いたような顔をしている。


「とりあえず、あそこに獲物を出せ」

そう言ってギルドの解体場近くにある石造りの場所を指さす。


「わかりました」

そう言って恐らく血がついても洗い流せるようにしてあるだろう石造りの場所にアイテムボックスから角ウサギウやその他の獲物を出して積んでいく。

アイテムボックスから次々出て来る角ウサギやオーク、巨大ネズミ、巨大カマキリを目にし酒場で先ほどまで嘲笑したりしていた冒険者達が一斉に静かになる。


「おい、これはお前達2人で狩ったのか? しかも見る限りすべて首を一刺しで仕留めてる、何をどうやったらこれだけの数を1日で狩れるんだ?」

「いや、罠を張って狩ったんですけど、実際は昼過ぎに狩は終わったんですが、後片付けに時間がかかって帰りが今になっただけですよ」


「罠って、こいつらは小賢しいから罠にかかりにくいのに、どんな罠をしかけたら短時間でこれだけの数を…」

そう言って驚いているダイルンさんに、角ウサギを狩った方法を伝えると、そんな方法で? と言った顔で全員が自分を見ている。


「簡単な事ですよ。 電撃は水を伝うでしょ、それを利用して餌の匂いに引き付けられた獲物を電撃で失神させてトドメを刺したんですよ。 狩り方に指定は無かったので問題は無いですよね?」

「いや、確かに狩り方の指定はしてはいないが、そんな狩り方をした奴は初めてなうえ、この特別試験を1回で、それも指定した数より多く狩って来てクリアする奴自体も初めてだからな」


「まあ普通に探知で探して弓で角ウサギ追っかけてたら大変だけど頭使えば簡単でしょ」

「まあいい、試験は合格だ、角ウサギ1羽につき銅貨2枚、巨大ネズミは銅貨3枚、オークは銀貨2枚、巨大カマキリは廃棄で買取価格無しだ、ゴブリンの魔石は銅貨1枚で買い取る。 それで報酬は現金で払うか、ギルド口座に預けるか?」


「確かここのギルドで預けてても、6国にあるギルドならどこでも引き出せるんですよね?」

「そうだ、まあ6国以外でもギルドの支部がある国なら引き出せるぞ」


「じゃあ報酬は2等分してカトレアと自分の口座に入れておいてください」

「わかった、あと冒険者証を出せ、Fランクへの昇格手続きをする」


そういうダイルンさんにカトレアと自分の冒険者証を渡すと、それを事務のお姉さんに渡し手続きの指示をしている。


「それにしても本当に驚きだな、まさか本当に特別試験をクリアするとは…。 しかもオークまで狩ってきやがって」


ダイルンさんは苦笑いを浮かべながらそう言うと急に真顔になった。

「特別試験は合格だが調子に乗るなよ!! 罠でノルマを達成したからって調子に乗って背伸びをしたら待っているのは死だからな! 受けれる依頼が増えても身の丈に合った依頼を選べよ!」


恐らく脅しでは無く自分達を心配しての言葉なんでしょう。

低くドスの利いた声ではあるものの自分達を心配している感じがひしひしと伝わって来る。

ダイルンさんいわくオークを狩って来ていなかったら適当なベテラン冒険者と訓練形式で戦わせてみる予定だったらしいけど、オークを狩れたんだったらそこまでしなくていいと判断してくれたとの事だった。


「それでFランクに昇格したら迷宮とかで得た物をギルドに売るとその額に応じて依頼を達成しなくても昇格の査定に入るんですよね?」

「ああ、そうだが…」


何を言いだすんだ? と言う顔をしているダイルンさんに、墳墓のダンジョンにあった宝石類、ドロップした剣や鎧、魔石をアイテムボックスから出して買取を依頼するとギルドに居る人間全員が驚いたような顔でこっちを見ている。


いや、宝石類持ってても仕方ないし武器や防具もドロップ品よりもいい品が他にあるし。

カトレアも宝石類には興味ないみたいで魔道具以外は要らないと言ってるから売るしかないでしょ?


「お、お前ら本当に墳墓のダンジョンでこれを見つけて来たのか?」

「そうですよ。 昨日も言ったじゃないですか。 あとは魔道具と家具類もありますけど魔道具類は今後使うかもしれないんで…」


そう言うと、ダイルンさんは、ダンジョンで得た魔道具類もどのようなものがあったのか鑑定だけさせてくれと言うのでカトレアの了承を取ったうえでギルドに預ける事になった。


明日の昼過ぎには査定と鑑定を終わらせて魔道具と家具類は返却するとの事なので、Fランクになった冒険者証を受け取って宿に戻る。


しまった、おすすめの宿屋聞くの忘れてた。

まあ中洲の蝶も悪くないから良いんだけどね…、名前以外は…。

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