第18話100階層の主1

これは結界と言うのか、薄い膜に淡く光り輝く文様が浮かび上がり、ゆっくりと動きながら様々な模様を浮かび上がらせ、これだけを見ていても、暫くは飽きないだろうと思える光景が目の前に広がっている。

恐る恐る指で膜に触れてみると何の抵抗も無く指先が結界をすり抜ける。


それにしても一度結界の中に入ったら出れなくなるんじゃないか?

そんな思いもふと頭をよぎるが、通路の奥から溢れる光と、幻想的でそれでいて厳粛な雰囲気に引かれ、ふと気づくと足が勝手に前に出て結界を通過する。


「うわぁ! なんだ?」


結界を通過すると、急に魔力密度が濃くなった感覚を覚え、一瞬体が強張る。

そして、一番心配だった結界の内側から出れるか確認をしたところ、問題なく出入りできるようなので、閉じ込められる心配がなくなり安堵のため息がもれる。


なんかつい足を踏み入れちゃったけど、一歩間違えればここに閉じ込められて生涯を終える可能性もあったから少しもう少し慎重に行動しないと…。

そう思いながら、20メートル程進むと、再度同様の結界が張られいる。


見る限り先程の結界と同じもののようなので、一応指先で触れてみて問題なく通過出来る事を確認し、結界を通り抜け先に進む。


結界を通り抜けると、先程魔力密度が濃いと感じた時と同じよう再度魔力密度の濃さに身体が強張っていく。

1つ目の結界を越えた時よりも2つ目の結界を越えると更に魔力密度が高くなっている…。

この結界で魔力を封じ込めるような目的なのか?

それとも何かの侵入を防ぐ結界?

でも自分は通れたし、何故結界なんかあるんだ?


進めば進むほど魔力密度が高くなっていき、人体には有害そうな気もするが、、ここまで来たら引き返すってのもどうかと思う、そして何よりハズレダンジョンと言われているのに最下層にこんな場所が何故あるのかが気になる。


そして3つ目の結界を通り抜けると、そこには綺麗な石で出来た大広間のようになっており、部屋の左右には様々な品や宝箱のようなものが無造作に置かれている。

そして大広間の中央には石で出来た棺のような物が、正面奥には、祭壇のようなものが設置されている。


「ここは何なんだ? 誰かの墓?」


大広間の光景に圧倒され、無意識のうちにそんな言葉が口からこぼれる。

うん、ダンジョンに潜ってからどれだけ日数が経ったか覚えてはいないけど、ボッチだったから独り言が増えたわけじゃないよ…、多分…。


それにしても、実際何日経ったんだろう、ダンジョンに潜ると昼も夜も分からないから眠くなったら寝て起きたら進むを繰り返してたから日付感覚が無くなってしまったけど、目標の100階層には到達したし、なんか部屋の左右にはお宝が一杯あるから、とりあえずそれを回収してからダンジョンを出て街に行こう。

当初の目的のギルドで冒険者として登録もしたいし、魔石やこの部屋にあるお宝をうってお金に換えたいしね。

まあ暫くは時差ボケしそうだけど、幸い階層主は居なさそうだから、この階層を調べて、とっととお宝を頂いて退散しよう。


そう思いながら部屋の中央に足を進めると、急に魔力の密度が濃くなり、直後背筋が寒くなるような感覚に襲われる。


これって瘴気? やっぱり100階層にも階層主が居るのか?

ていうか、90階層の階層主はこんな背筋が凍るような気配は放ってなかったのに、100階層なだけあって相当強力なアンデッドでも居るのか?

だから3重の結界があったのか?


そう思い、身の危険を感じ、慌てて踵を返し引き返そうとするが、大広間におぞましい声が響き、直後足が竦んで震えが止まらなくなる。

体中の毛穴から汗が吹き出し膝がガクガクし、少しでも気を抜くとその場に座り込んでしまい動けなくなりそうだ…。


マジで? これって逃げられない?

動きたいのに動けない、足が震えて前に進まない、こんな状況じゃ戦う前から勝敗は決してるじゃん。


自分の居る場所から結界までは約10メートルぐらいなのにすごく遠く感じる。

震えで動けないのもあるけど、動けたとしても結界の外に出る前に殺される気がする。


詰んだ! 転生して実家を追い出されてこれから新たな人生を送るはずだったのに、これ絶対詰んだ…。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る