第56話 その2

 タカコの目の前て繋がれた手を見て、ホッとする。そして、そのまま紹介を続けはじめる。


「えっとぉ、ビトーちゃんはいいわね。文芸部の先輩だから」


「はいぃ」


 似たような背格好、似たような顔立ちと髪型、学年ごとに色が違うリボンくらいしか違いが分からないくらいだ。姉妹というよりは双子の方がしっくりくるな。


「そして隣にいるこっちが、ムトーちゃん。あたしと同じ剣道部で、次期エース。県大会の常連になるくらい強いのよ」


「すっごおおぉぉぃぃ、お強いですねぇぇぇ」


すましてはいるが、はっちゃんの無垢な驚嘆にムトーちゃんは照れているようだ。ちょっと頬が赤くなった。


「で、こっちが…」


どうでもいいが、MCをタカコにとられたな。やはり仕切らせたら一番だな。


「…カトーちゃん。読者モデルをやっているの」


「うわあわぁぁあ、すっごおぉぉぉぃぃ。あたしぃ、芸能人はじめてみましたぁぁ」


誉められ慣れている筈のカトーちゃんが、珍しく嬉しい顔をしている。


「べつに芸能人じゃないわよ。でもありがと」


2人とも誉められて気分が良くなったらしい、険悪な空気はもう感じられない。はっちゃん、グッジョブ。


「あげはと青草くんはいいわね。廿日さんはみんなになんて呼ばれているの」


「えっとぉ、廿日さんとかぁ、舞ちゃんとかぁ、ってよく呼ばれますぅ」


「はっちゃんとは言われないの」


「あげは先輩だけですねぇ」


「ほうほうそうですか。よし、じゃああたし達もはっちゃんて呼ぶわ。あたし達だけのオリジナルネームね」


あ、あたしだけの呼び方だったのにぃ、タカコの名前ドロボー。

でもまあいいか。なにせあの事件(?)を覚えているのは、ここに居る7人だけだもんね。


 あれから3日間、なにがあったか順に話そう。


 事件当日の放課後、あたしは家事があるのですぐ帰ったが、タカコとカトーちゃんがオーツチを呼び出して締め上げた。


 2人のアメとムチ攻撃に、オーツチはたちまち陥落した。どうしてそうなったかは割愛するが、ていうか聞いてないから知らないんどけど、結果的にオーツチはカトーちゃんの下僕ポジションに着いた。   

 屈辱的なポジションだと思うが、当人はいたって満足しているらしい。


 エンピツモドキが無くなった影響はすぐに出て、翌日からは、ほぼ誰も[パンチラファイト]をしなくなった。もちろんスカートめくりもだ。


 それを確認した葵先生が、はっちゃんパパのところに出向き、こう説明したそうだ。


 あげは、つまりあたしが、娘さんに不埒な真似をした男子のズボンを脱がして仕返しをして、仇をとったと。

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