第48話 その3

「オーツチ、もうすぐ昼休みが終わるわ。先生が来るわよ、あきらめなさい」


 あたしが精一杯強がってみせるが、余裕を手に入れたオーツチは、エンピツモドキを片手に持ち、姿勢を伸ばし、笑みを浮かべる。


「心配しなくてもいい、これさえあれば記憶を消せるからな。今こうしている みんなも忘れてしまうのさ」


「それっていったい何なのよ」


伏せたまま顔を上げて、エンピツモドキを見る。


「さあな、GWが終わった頃だったかな。机の中に入っていたんだ。最初はエンピツだと思ってが、どうやらちがうらしい。クラスの女子がふざけてスカートめくりしあってたとき、たまたまこれを握っていてな、もう一度めくれよと思ったら、そいつがやったんだよ。それがきっかけで、これはそういうものだと気づいたんだ」


「じゃあ、あんたもソレが何か分かってないのね。そんな危険なものを振り回して、自分に害は無いの?」


「脅かそうとしてもムダだ。これが何であろうと、手放すわけないだろう。これさえあればすべての女子のパンツが見れるんだ、手放すものか」


身体から、ちからがぬける……


目的が情けない、情けなさ過ぎる……


オーツチの小者ぶりに呆れたが、それでも手も足も出ないのは事実だ。どうする。


「紅、どうやらお前はこれに耐性があるらしい。だが言い……、使いようによっては操れるんだ」


ニヤニヤしながらオーツチは近づいてくる。

くそ、やっぱりコツを掴んだんだな。こちらは対策が思いついてないというのに……。


「紅、パンツを見せろ」


「イヤだ」


「だろうな。だがな」


エンピツモドキをあたしに向けると、オーツチは言葉を続けた。


「紅、スカートを握れ」


あたしの手は意志に反して、スカートを握った。

ギクリとした、どうして身体が反応したの?


「くくくく、やはりな。紅、スカートの裾を持て」


「だ、だれが…」


かろうじて手を止めることが出来たが、耐えるのがぎりぎりだった。


「ふはははは、根性あるよな、お前は。だがな」


「紅、パンツを見せろ」


「イヤ」


「紅、スカートをめくれ」


それを聞いたとたん、あたしの手がまた動きはじめた。なんでよ、なんでよ。


うつ伏せのまま、両手がスカートの裾を持ち、上へと上げた。


くそぉぉおぉぉぉ、見られてたまるかぁぁぁぁ


「そっちじゃ見れないだろうが。こっちに見せろ」


「だれがやるか」


オーツチがアホでよかった。うつ伏せのままでスカートをめくったから、見られずにすんだわ。


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