第43話 隠してもおそいよ、見たもの

 オーツチの妖しさに思わず後ずさりすると、カトーちゃんにぶつかった。


「あ、ごめん」


と、口に出かけたが、その前に彼女があたしのスカートをめくろうとしていた。

思わず反射的にスカートを押さえる。


「カトーちゃん、何しているのよ」


その顔を見ると目がうつろになっていた。ゾッとしたが、両腕を掴んで身体ごと揺さぶると、正気に戻ったようだった。


「あ、あれ、あたし……」


何をしてたんだろうという様子を見て、あたしはカッとなった。


「オーツチ!! お前、カトーちゃんに何をした!!」


そんなあたしの言葉に耳を貸さず、何かにまた夢中になっていた。


「キャアアアーーーー」


教室の後ろの方から、聞き覚えのある声の悲鳴が聞こえた。ビトーちゃんだ。


見ると、クラスの皆がビトーちゃんに向かっている。その中にはタカコもいた。


「カトーちゃん、ビトーちゃんをお願い。揺さぶったら元に戻るから」


なんとなく状況を理解したらしく、頷くとタカコの方に向かった。


「オーツチ、やめなさい、やめて!!」


だけどまったく聞こえないらしい、こっちも操られ…じゃない、トランス状態と言うところか、そんな感じになっていた。

揺さぶっても叩いても変わらない。ビトーちゃんの方を見る。


「サトーちゃん、しっかりして」


カトーちゃんに揺さぶられて正気に戻ったタカコは、しばらくボウッとしてたが、ビトーちゃんの状況を見て、慌てて助けに向かった。


 クラスの皆に囲まれて、教室の後ろの壁に背を着けて動けないビトーちゃん。

人壁をかき分けて中に入り、カトーちゃんとタカコが、ビトーちゃんを守ってくれた。


だけど多勢に無勢だ。どうしようもない。

 非力なカトーちゃんは、ビトーちゃんを後ろから抱きしめて庇うように守り、剣道部副主将のタカコが、襲ってくるクラスメイトを押し戻してた。


 あそこに行くべきか。

 いや、原因はオーツチなんだ、ここにいるんだ、あたしはコイツを何とかしなくては。


「オーツチ、やめろ、やめろって言ってるんだよ、こんなコトしてもカトーちゃんは喜ばないぞ」


だがトランス状態のオーツチには届かないらしい、全力で叩いたり揺さぶっても変わらなかった。


 ビトーちゃんを囲んだ人壁から、3人の男子が出てきた。この前彼女のスカートを無理矢理めくろうとした連中だ。


タカコは他のクラスメイトの対応で動けない、カトーちゃんが必死で守ってくれるが、負けそうだ。


その恐怖に耐えられなくなったのだろう、ビトーちゃんが、はじめて聞くくらいの大声で助けを求めた。



「ムトーちゃあああああんんんんん!!!!」


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