第40話 その2

 休憩時間になってすぐ、後ろの席のタカコにオーツチの事を訊ねた。


「オーツチのこと? なんで急に? あー、さては……」


「恋愛脳は休めといて。どんなヤツか知ってる?」


「どんなって……、おとなしい人よ、内にこもっているというか、あまり目立たないかな。なんかあったの?」


「あったというか、昨日たまたま目があったのよ、それが気になってね。なんかあたしのこと知っている感じだったから」


「ほうほう、あげはがじゃなくてオーツチが、なのか。どう? タイプなの?」


 タカコの脳は恋愛に変換しやすい。あたしはただ怪しくて気になったのだが、これでは話が進まない。その会話を聞きつけて、前の席からカトーちゃんが割り込んできた。


「なに? オーツチのことが気になるの? 教えてあげようか」


「カトーちゃん、知っているの」


「あたしのファンクラブに入っているからね、プレゼントとか貰ったことあるよ」


スゴいな、さすが読モのインフルエンサー。校内のどれくらいがファンクラブに入っているんだろう。


 あたしは昨日の事を話して、どういう人物か訊いた。


「う~ん、まあ正直関わらない方がオススメかな。たぶん悪いコじゃないんだけど、思い込みが激しくて押しつける感じがあるかな。背は低い方、顔は普通、成績はそんなに悪くないかな。運動もそこそこって感じ」


「うわぁ、ザ・平凡て感じ」


タカコが、あたしはごめんという感じで感想を言う。


「思い込みが激しくて押しつける感じってのは、どうしてそう思うの」


カトーちゃんが席を離れて、あたし達の間にくると、内緒にしてねと前置きをしてから話してくれた。


「前にね、パンツをプレゼントしてくれたの。それもティーバックのヤツ」


「はあ、バカじゃないの!? そんなの贈られてよろこぶ訳無いじゃん!!」


タカコの言葉にあたしも頷く。


「なんか[デキル男は、クリスマスとかバレンタインに下着を贈る]っいう都市伝説をどっかで聞いたらしいのよ。もらった時は人目があったから開けなくて、後から知ったの。軽く目眩がしたけど、返すのも悪いから、あとで[ああいうのは社会人になってからでないと、逆効果よ]と恥をかかせないように、そっと注意しておいたわよ」


ビシッとキツく、さらに人前で言いそうなタイプだが、カトーちゃんは意外と気配りを欠かさない。だからファンが多いんだろうな。


「ちなみにそのティーバックはどうしたの」


「パンチラファイトの時に履いて見せてあげたわ。で、可燃ゴミとして供養したわよ」


あたしとタカコは黙って合掌した。


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