第二章 第六話~圧倒鉄操の覚醒~

「………………!!」


 さっきの巨大兵器の頭部がワイらに向かって飛び出し、空からは謎の攻撃、更にはウンロンが感じ取っている何者かの攻撃まで行われそうで、やっこさんワイらを肉片残さず殺すつもりのようや。

 こっちも何かしら手を打とうかと思っとんやけど、ワイはこの状況下で完全に委縮してしまっとるし、音破は役立たずのウンロンを背負っているので片手しか使えんし、鉄操も目が死んどる。一旦地面に降りようにもここは上空300mくらいやし、飛び降りようにも生身のワイは死んでまう。どう転んでも終わりや。


 ワイは来たる衝撃に備え……といってもどうせ痛みも感じぬ間に一瞬で死ぬんやろうけど、目を閉じてその時を待った。


「っ!?」


 直後、上空からブオオオ! っという轟音が鳴り響き、目を閉じていてもわかる位に辺りが暗くなる。そして上空を何かがけたたましい風切り音を立てながら通過していった。


 辺りは静まり返り、静寂が訪れる。


 急に静かになったから死んだんかと思ったけど、土臭い匂いや、少し肌寒い風、鉄操の温もりを感じているから死んだわけやなさそうや。ワイは恐る恐る目を開けて辺りを見渡す。


「………………?」

 

 そこに広がっていたのは暗闇だった。あれ? ワイの能力で多少薄暗かったとはいえ、さっきまで明るかったやん? やっぱり死んだんか?


「………………?」


 暗闇が少しずつ晴れ始め、隙間から太陽の光が差し込んできた。暗闇から急に明るくなったため、一瞬目の前がチカチカしたが、何度か瞬きをして目をならして周りを見渡さしてみると……


「………………!?」

「どうなってんだっ!?」

「おお。こりゃすげぇや」


 暗かったのは天候のせいやない! 何か黒いものがワイらの目の前を覆っていたんや! 

そしてその覆っていたものがゆっくりとワイらの足元に移動し足場となった。

そこに足をついたワイらは茫然と立ち尽くすしか出来なかった。


「何が起きたんや?」

「わからんっ……俺も目を瞑っちまってよっ」

「おれもだ。というか下のこの黒いのは何だ?」 


 ワイらはその場にしゃがみこんで足元のソレを確認する。先端がとがっていたり、平らだったりと形はバラバラだ。いや、その2種類のみと言った感じやな。


「一個取ってみるかっ! んぎぎぎぎぎぎっ! 固ぇっ!」

「ギチギチに詰まってるなこりゃ」


 音破とウンロンが地面に敷き詰められているソレを引き抜こうとしているが、どうやらギチギチに密着しているようで抜けんらしい。


「おい鉄操っ! お前も見てみろよっ! なんだと思うっ?」

「…………………………」

「おい鉄操っ! 無視すんよっ!」

「…………………………」

「鉄操ってば! …………!!」


 呼びかけを無視するもんだから、少し上空にいる鉄操に怒ろうと音破が見てみると、鉄操の体から発せられている光がより一層黒く、深くなっている。この光……鉄操がTREになった時と同じ……。顔もさっきよりも険しいものになっているし、ワイはこの状態を知っている。あれは……この状態は……


「鉄操っ……覚醒状態に入ってねぇかっ?」

「覚醒状態? なんだそりゃ?」


 以前ワイが見た覚醒した時の鉄操の状態に似ている。あの時は拷問部屋にある金属物質を自分の周りに漂させていたけど、今も何かを漂わせている。

よくよく観察してみると、それはワイらの足元に敷き詰められているものに似ている。先端がとがっていて、後ろの方が平らな形状。もしかしてあれって……


「これってっ……弾丸じゃねぇかっ?」

「…………マジだ……。いや、ちょっと待て。でかくないか? おれの腕の長さ位あるぞ? どんなでかい弾丸だよ……」


 恐ろしくでかい弾丸や。普通の弾丸は指の第一関節くらいの大きさなのに、この弾丸と思わしき黒いモノはワイの肩から指先くらいの長さと大きさをしている。大きいって事はそれ程の強さと速さがあった筈や。それをたやすく止めたとなると、やっぱり鉄操は覚醒状態に入っとる。


『グ……! ヌヌヌ……!』

「!?」

「さっきの巨大兵器の声じゃねぇかっ!?」

「下から聞こえるな」


 ワイらは恐る恐る身を乗り出して下を見てみる。


「!!」

「まじかっ!?」

「すげぇなこりゃ」


 先程の巨大兵器が両手足を大きく広げて大の字のポーズで宙に浮いており、何もできないままもがいている。力も重さも桁外れのアイツをここまで圧倒するとは……流石や……


『ストライカー! アイアンレイン! エンゴシテクレ!』


 自分ではどうしようもないと判断した巨大兵器が再び援護を要請し始めた。

するとまた遠くの方で太鼓を叩くような音が鳴り響いた。

そして数秒後に上空から無数の光がワイらめがけて降り注ぐ。


「また……僕はイライラしてるんだってば……」


 それに対して鉄操は空に手をかざし始めた。すると、光の球体は速度を落としはじめ、次第にその姿をワイらの前に現した。こりゃ……!


「で、でけぇ弾丸だなっ!? 普通の何十倍もあるぞ!?」

「これは砲弾って言うんだよ。しっかしでけぇな」


 ワイの身丈くらいはありそうなデカさの銃弾……いや、砲弾って言うんか? とにかくそんなモンが空から降ってきてワイらの目の前で止まっている。

 こんだけの大きさのモンや。さぞかし破壊力も半端ないやろう……。しかも誤差もなくワイらに直撃するように飛んできてる……凄い命中精度と明らかな殺意を感じるな。


『バカナ! アイアンレインノコウゲキヲトメルダト!? クッ! ストライカー!』


 巨大兵器が再び名前を呼んだ。ストライカー……どんな攻撃をしてくるのか、どんな姿かも不明な存在や……一体何を……


「「「っ!?」」」


 突如目の前が真っ暗になり、数秒遅れてブオオオオという音が上空に鳴り響く。


「なんだっ? 誰か屁こいたかっ?」

「おれじゃない。という事は……」

「…………!!」


 二人の感想もわからんでもない。確かにさっきの音は屁をこいたような音やった。それにさっきも辺りが暗くなった後でこんな音がしたから、これはストライカーとか言う奴の仕業か?


「無駄だよ」


 だがどっちにしても今の鉄操には何も効かない。どうやら相手の攻撃は全て金属物質らしいから、覚醒した鉄操の独壇場や。


「さてと……聞きたいことがある」

『ヌオオオオオオオオ!?』


 鉄操は巨大兵器に手をかざし始めた。すると巨大兵器はゆっくりと上空に持ち上がり始め、少しずつワイらの方に吸い寄せられてくる。


「グラントライフさんに会いたいんですが、どちらにいますか?」

『イワン! ゼッタイニナ!』

「やれやれ……」

『グッ! ヌオオオオオオオオ!』


 鉄操が手の平を裏返すと、巨大兵器の装甲が少しずつ剥がれ始める。拷問とは……やっぱりキレてる時の鉄操は別人やな。うっ! あん時の事を思い出したら吐き気が……


「もう一度聞きますよ? グラントライフさんはどこにいますか?」

『フ! サッサトコロシタラドウダ? グッ!』

「仕方ありませんね。それではさようなら」

『グッ! ヌアアアアアア!!』


 鉄操は再び手の平を巨大兵器に向けた。すると、巨大兵器の関節部分からは火花が飛び散り、体中から液体が飛び散る。

これは……完全に破壊されるのも時間の問題やな……


『すまないが破壊はやめてくれ!』

「「「!?」」」


 巨大兵器から音声が流れる。だがこの声は聞き覚えの無いもので、先程の巨大兵器とは違って流暢に言葉を発している。何モンや?


「どなたですか?」

「そうだぜっ! 名乗ってもらおうかっ!」

『私の名前はインヴェンタァ・グラントライフ! この兵器達の生みの親だ!』

「グラントライフ本人!? 何でワイらに攻撃をしてきたんや!?」

『それはこいつらの独断だ! 私はそんな命令は出していない!』


 こいつらの独断? それってこいつら兵器が意思を持ってるってことか?


『こいつらは私の大切な家族だ! これ以上の破壊はやめてもらいたい!』

「けっ! てめぇから仕掛けておいてよく言うぜ」

「まぁまぁウンロンっ! 俺らはあんたと話がしたいだけだっ! いいですかっ?」

『承知した! 今からそちらに私のいる場所を教える!』

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