第6話

 結局、火と水と地と風という名前が採用されてしまったのが数日前の事。

 そして百瀬と離れて1人で歩き出したのが今朝だ。

 朝が来て、突然水の塊がツルンとしてヌルッとして目と口があって……あぁくそっ!スライム!スライムに進化?してたんだよ。で、ピコピコってガイダンスが出てきて種族と名前を付けろって出たんだ。

 そしたら百瀬の奴なんて言ったと思う?スライムって言ったんだ。

 魔物族のスライムって!

 魔物の王と人間の王との戦いが起きてるのが他の異世界で、そういった世界は白か黒に偏ってる。俺達にはその偏りがない灰色だから、灰色の異世界を作ってみろと。そういう話しだったのにだ。

 百瀬は堂々と言いやがった訳だよ。

 魔物族のスライムって。

 「名前なんてなんだって良いだろ?争いにならなきゃ灰色になるって」

 少し後ろをついてくる百瀬は楽観的だ。

 「だからって進んで魔族を作るなんてどうかしてる!」

 実際には”スライム族スライム”と決まったんだけど、今後まだなにかが産まれた時に魔族だの人間だのと言い出す可能性がある。

 「……そうかよ。じゃあもう1人でやってろ」

 なんだその言い草は。

 そう文句を言おうと振り返れば、百瀬がスライムの中に頭を突っ込んでいた。

 なにをしてるんだ?と思うよりも理解ができた。

 スライムは水から進化した魔物……じゃなくてスライムだ。その中に頭を突っ込んでいるという事は、呼吸ができない状態。

 「何考えてんだ!」

 大声を上げながら腕を引っ張ってみても、頭部をすっぽりと覆っているスライムは百瀬の頭にくっついたまま離れない。

 あ、これスライムを引っ張れば良いのか。

 ズルンと引き剥がしたスライムを丁寧に地面に置いてやると、その横にドカリと座り込んだ百瀬は口元を手で押さえると物凄く静かに泣き出してしまった。

 さっきまでの楽観的に構えていた百瀬は何処に?

 いや……スライムを使って転生を試みようとする時点で楽観的でもないのか?

 分からない。

 「俺は、こんな世界……作りたくなかった。俺は地球に転生したかったんだ……」

 え……そう、だったの?

 あんな理不尽に消しクズにされても地球に帰りたかったって?でも、それが嫌だから異世界に行こうとしてたよな?

 行こうとは思ったけど、作るのとは違った?

 まさか創世からだなんて想像できなかったんだから、それは俺にだって言える事だ。

 けど、俺が勝手に話しを進めたせいでここにいるのは確か。

 「百瀬ごめん……」

 「っ……うるさい!どっかいけよ!」

 なんっ!……いや、こればかりは俺が悪いんだから大人しく引き下がろう。でも、スライムは没収だからな。

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