異世界に呼ばれたけど合わないと言われたので自分に合う異世界を作ることになりました
SIN
第1話
それは、何のことはない普通の授業だった。
昼休みが終わった後の授業で、多少なりとも眠くはあったが、それでも幻聴や幻覚を見るような状況でもなかったし、平和な日常を過ごしていたから失踪願望もなかった。
ましてや、異世界に行きたいなどとは夢にも思わなかったし、そんなものは創作物の中のものであって現実にはないと分かっていた。
分かっているんだ。
うん。
「皆様初めまして、わたくしはエンジ・シュウ・ローズクォーツと申します」
赤色の申し子みたいな名前のそいつは、そのくせ白いヒラヒラとしたドレスみたいなものを着て、背中には物凄くそれっぽい大きな羽をはやしていた。
対する俺達は制服姿のままだだっ広い部屋の床に描かれた魔法陣の中央に倒れたり、座り込んだ姿で呆然と急に現れたエンジ・シュウ・ローズクォーツと名乗った女を見上げている状態。
まさに、たった今クラス全員がまるっと召喚された図……異世界ものの物語における冒頭部分だ。
この後に起きる事と言えば、勇者となって魔王と倒してくれとか、攻略対象者と恋愛ごっこをしろとか、なんかそんな感じの流れになるんだよな?
命の危険がなさそうな後者であってほしい所だが、生憎オレは攻略対象者が現れるようなゲームも小説も内容を覚えるほどにハマったものがない。
大体は悪役ポジションかモブポジションに転生して、死亡フラグやら追放エンドを阻止しよう!みたいな内容になるんだよな?
多分……。
「ここって、どんな異世界ですか?」
ここが異世界であることを何のためらいもなく受け入れたのは、クラスの中で最も影が薄く、休憩時間になると1人静かにいつも本を読んでいた男子生徒だ。
「流石地球人、飲み込みが早くて助かります」
どうやら地球人は異世界ものの創作物に慣れているせいで、本当に異世界に招かれてもさっさと受け入れてしまうらしい。
確かに予備知識的なものがあるって事にはなるんだし、その先にある物語的な展開を想像するがあまり現実的な思考が働かないのかも知れない。
平たく言うと、冒険者になったところで、平和に暮らしていた地球人に魔物が倒せるのか?みたいなさ。
その為のチート能力なんだろうけど、それだって本当にもらえるのか?
けど、こうして異世界の案内人?が登場しているだけ恵まれているのかも知れない。
「まずは皆さんを2つのグループに分けますので、ここに1列に並んでください」
言われるがまま1列になった俺達に、エンジ・シュウ・ローズクォーツは1人1人に水晶玉に触れさせた。
水晶玉は赤、もしくは青色に色を変え、俺達を赤グループと青グループに分けていく。その割合は圧倒的に赤の方が多く、27人いるクラスメートのうち20人が赤グループだ。
で、残った7人が青グループ。
選ばれし7人の顔ぶれは、ん~……異世界風に言うなら戦士系?考えるよりも先に手が出るような、そんな困ったさんと、体育の授業になると妙に張り切る体力系で形成されている。
もちろん俺はその他大勢の赤グループだ。
「青の貴方たちはこちらに。では、もう1度やりますので、1列になってください」
こうして行われた2度目。
今度は5人が青グループに選ばれた。
さっきが体力系なら、今度は知力系なのだろう、テスト後に発表されるテストの上位者で見た名前の者ばかりだ。
「青の貴方たちはこちらに。では、もう1度1列になってください」
3度目の青グループは10人いて、ついに俺はその他大勢ではなく少人数となった赤グループの1人となった。
エンジ・シュウ・レッドローズは、青グループになった22人を今度は白と黒のグループに分け、2人の仲間を呼んだ。
「初めまして、私はスカイ・ルリ・アクアマリンと申します。白グループの皆さんは私と一緒に来てください」
スカイかアクアのどちらかにして欲しいとツッコミを入れたくなるような名前の女性は、白色グループを率いて部屋から出て行き、
「初めまして。私はミント・ワカバ・エメラルド。黒の皆さんはついてきてください」
緑の女性と黒グループが出て行けば、部屋に残ったのは俺を含めた生徒が5人とエンジ・シュウ・ローズクォーツだけ。
妙に静かな時間と空間が流れる。
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