第550話 獣人に教えようとしても、それ以前の問題

「え?嫌だけど?」


「字なんて読めなくても生きていけるし?」


「計算?外で魔物狩ってれば飯に困らないし?」


・・・・エレケは僕の妻なので、読み書き計算を学ぶ事に対し特に反対もなくすんなり受け止めたんだけど、他の獣人はそういう訳には行かなかったんです。


「ごめん旦那様。獣人は今まで学ぶ機会がなかったし、字が読めなくてもギルドではきちんと対応してくれたし、計算も何かあっても困った事がなかったから。」


ギルドでの魔物の素材の買取などは不正が行われないように、受付の教育は万全。

何せ受付の競争率はかなり高く、不正を働いてしまえばそのまま職を失い、新たな受付が入ってくるだけ。


それにヘルトラウダに言わせれば、

「受付ですか?たとえ犯罪者にも不正は働きませんわ。勿論犯罪者とわかった時点でそれなりの対処は致しますが。え?獣人?普通に対処いたしますわ。もし問題があってギルド内で暴れられても困りますし。」


獣人はなまじ身体能力が高いので、建物内で暴れられると取り押さえるのに非常に難儀をするようで、取り扱いには実は気を使っているようです。


因みに今この場にはエレケとヘルトラウダも来ています。


なんだかんだでエレケは当事者になりますし、ヘルトラウダは事務的な事を任す事になるので当然ながらこの僕の考える教育の方法を構築する上で必要不可欠なんです。


意外と今いなくてもいいのがアーダとザーラ。


国としての教育機関は、もっと高等教育、での限定ですが存在するので、初歩の教育に関して国は今までほぼ関わってこなかったんです。


なので現状関わるのなら、もう少し煮詰めてから、となるようです。


「すまんな順平殿。職人の徒弟制度もあってな。いきなり国でこの制度に干渉すると、いろいろと問題があるのでな。もうすこし時間をかけぬとならぬ。だが初歩の教育の必要性はよくわかっている。順平殿には大いに期待しておる。」


とのアーダの返答。


それにアルノルト国王に関しても同様で、


「すまんな義兄上。復興に全力を注いでいて教育まで目が届かないのだ。それに未だ他国の難民問題もあってそこまでできぬのが現状なのだ。」


「まあそんな所だと思ったよ。だけどこちらで色々と学ぶ方法やらいろいろ考えて試すけど、上手くいけば職人たちを説得してくれるんだよね。」


「それは無論そうする。だが職人も腕のいい弟子を、若しくは上達する見込みのある弟子を取りたいだろうから、それの見極め、選択をする場も設けてくれるとありがたいのだが。」



これに関してはスキルが問題になる。

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