04.百獣の王②
レオンは現地に着くとビーストモードへ転身し参戦する。
それと俺のマリオネットも切り離され現地での指揮をすることになる。
マリオネットの映像が俺のバイザーに映る。
なるほどな・・・これは警察機構のサイボーグも当てにはならんな。
ものすごい速さで警察機構のサイボーグにアニマロイドと獣ボーグが襲いかかっていた。
「アニマロイドは最新のAIモデルで動作しているようですね。
それと反射神経系統が最新化されていますね、反応速度が著しく速くなっています」
「しかしレイテンシーを考えればそこまでのアニマロイドの反応速度は考えられないけどな?」
「考えられるのは獣ボーグを中心とした支援システムではないでしょうか?」
「そんなことができるのか?」
「多分、獣ボーグから指令が出ているものと思います。
獣ボーグに合わせた神経系等の構築がなされているものとも思いますね。
最もあの獣ボーグの神経接続は異常ですよ。」
「どう異常なんだ?」
「速すぎる、通常より高速に伝達できる機構が組まれているんでしょうね」
レオンは獣ボーグを相手に戦い始めた。
アニマロイドの攻撃もうまく避けているところを見ると相手のスピードには慣れているようだ。
「ファイバ変換技術かな?」
「多分そうですね。
でも僕たちのように拡張神経として生まれながらに成長させないと適合は難しいはずです。
後天的にAIでの接続調整もそんなに簡単には適合しないはずですね。
それほど生まれ持った神経系への慣れを忘れることは難しい。
実際にファイバーへの反応速度へは対応できないはずです」
「つまり君たちのように育てないとファイバー神経系には適合は無理だと言うことかな?
だとするとこの獣ボーグはそうやって育てられたと言うことになるな」
「でも動物なので僕たちみたいにVRMMOの世界で育てるなんてできないと思いますね」
「それでは目の前にいる獣ボーグはなんなんだ?」
「多分ですが、生まれる前からファイバー神経を埋め込まれた個体ではないかと思われますね」
「エグいことするな・・・成長という段階を踏まなかったと言うことになるな。
そのまま大きな成獣の獣ボーグの体を持って生まれたということになる」
「少なくとも現状の攻撃性を持つまでは育てなければならないはずです」
速度はレオンの方が早い。
それは拡張神経を複数使っているからだった。
拡張神経のうちビーストモードでの利用もバランスを考えた反応速度を維持していた。
それ以外にその土壌に合わせ接地状態を変更することする可能である。
つまりウマ、鹿、山羊等々色々な状況変化に合わせた拡張神経を使いこなしていた。
もちろんビーストモードではそれらの補助支援機構がある。
百獣の王であるレオンのビーストモードには通常の獣ボーグやアニマロイドでは適わないだろう。
どのような状況でも状況に合わせた動物の適合力で戦える。
速度的には敵ではなく獣ボーグは押されていることを認識していた。
結果、獣ボーグは支援のアニマロイドをレオンに向けてくるが相手にならなかった。
「百獣の王というのは伊達ではないようだな。
そのまま獣ボーグを確保してくれ」
命令を認識したレオンだったが、レオンの頭の中に悪い考えが浮かんでいた。
それは今戦っている獣ボーグのことだった。
獣ボーグは戦いながらも、少しずつ後ろに下がるようになっていた。
だんだん、そうまるで降伏するタイミングを見計らっているようだった。
(このまま確保してこの獣ボーグの核に埋め込まれた動物はどうなるんだろう。
命があるものだ、確保した後はこの特殊な環境で構築された神経系の解析に実験されるのでは?
僕たちのように生かされる可能性は低いんじゃないか?
だとすれば、ここでトドメをさしておくことが最上なのでは?)
そう思っていた時ついに前の獣ボーグが動きを止めた。
「今だ、レオン」
そう言われてレオンは一気に相手の動きを止めるために四肢のギアを破壊した。
(このまま、トドメをさすんだ・・・)
そう思ったが、それができないレオン。
相手は四肢のギアを破壊されてなお、服従の姿勢を取っていた。
その後指揮が無くなった、アニマロイドも制圧された。
「よくやったレオン、そのままにしておいてくれ、後は警察機構が回収する」
しばらくの沈黙ののちレオンが口をひらく。
「課長、こいつはどうなるんですか」
「多分アニマロイドとの支援システムとファイバ関連の伝達系の解析をされるだろうな」
「実験体ですか、その後は?その後はどうなるんですか?」
「すまない詳しいことは俺には分からないよ。
ただ簡単には解析は終わらないことは間違い無いだろうな」
「そうですか・・・」
帰還するとレオンはいつものようにVRMMOの世界に入っていた。
「なんのために僕はここにいるんだろう?
犯罪は許せない、でも命は、救えた命じゃなかったのか?
こんな結末なんて・・・
嫌だ。
僕たちだって一歩間違えれば一生実験動物にされたかもしれない」
そんな独り言を呟いていると「悲しいのね」と少女の声が聞こえた。
「姫・・・目覚めたの?」
「私はVRMMOの中で生まれ、その中で育った。
そしてこの世界には、目覚めている私と眠っている私が混在する。
そう私はVRMMOの世界に溶けている。
いつでもここにいるけど、存在はしていない。
でも、そんなことはどうでも良いこと。
安心しなさい。
その子は私たちが助けるわ。
心配しないで」
「私たち?
来栖のこと?」
「そう、彼なら色々できるから
任せておきなさい」
その後、その声は聞こえなくなった。
「姫・・・」
少しするとレオンの元に巣鴨がやってきた。
「俺が謝ってもしょうがないけどね。
すまないな」
「なんのこと?」
「獣ボーグのことさ
お前たちの境遇と重なったか?」
VRMMOの世界の中でもアバターには感情が浮かぶ。
レオンのアバターは寂しそうな感情を表現していた。
「少しね。
でも大丈夫だよ。
犯罪は犯罪だからね」
「本当は気にしてるだろ・・・
最初の出動で任務を完了したのに全く挨拶にも来ずにこの世界にダイブしているもんな。
色々と思うことがあるなら相談してくれれば良いのに
最も相談されても獣ボーグの核は解放できる権限はないけどね」
「ありがとうございます。
でも、良いんですよ
僕たちは僕たちが生まれてきたこと、そして存在することの意味を問い続けなければならない。
それが生まれて生きていくことだから。
これからもいっぱいこんなことがある。
大丈夫です、明日には元気になりますから・・・」
「明日か・・・
そうだな、頑張れよ」
少し間を開けると巣鴨はレオンに話しかけた。
「実はな、あの獣ボーグの核なんだが、取り出す前に壊れたんだ。
つまり死んだということだ。
でもお前が殺したんじゃないことだけは確かだ」
「えぇっ・・・
そうなんですか」
力なくレオンは答えた。
「じゃあ明日また元気なお前に会いたいよ」
そういうと巣鴨は帰って行った。
涙というのは仮想現実の世界でも出るものだ。
顔を流れる涙、それは仮想現実だとしても流れる感覚があった。
本当の自分の顔にも流れているのだろう。
そんな時に彼の耳に来栖の声が響く。
「レオン、アリスからの要請が完了した
アリスの指示通りにしたけど、ご対面まで数日待ってくれ」
「なんのこと?」
「あれ?
君の相棒を助けてやれということだったけど違うのか?」
「相棒?」
「ああ、結構可愛い子犬だったよ」
「子犬?」
来栖の話がなんのことかわからないレオンは少し困惑していた。
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