第23話 水着姿
車載ハンズフリーで楽しく話をしているうちに、目的のキャンプ場へたどり着いた。
時刻は午前11時。思ったより早かった。
コテージがいくつも建ち並び、ヤシみたいな背の高い木が何本も植えられている。
テントを張る区画や、キャンピングカーを止めるスペース、体育館やテニス場なんかもあって、かなり本格的な複合施設だ。
もはやひとつの小さな集落、といえるぐらい規模が大きく、しかも、全体的に新しくておしゃれな感じがする……キャンセルがあったとはいえ、四連休によくこんなところ押さえられたものだ。
天気も薄曇りぐらいで雨の心配はなさそう。
想像以上に良さそうな雰囲気に、全員のテンションが上がる。
「すごーい、センターハウスもキレイ!」
「コテージ、小さいのと大きいのがある!」
「こんな場所に来るの、初めて……」
女性陣三人も目を輝かせている。
コテージに行くと、温かみのある木造の建物内部は、電磁調理器やシャワートイレ、大きめの綺麗な浴室まで完備された、ちょっとしたホテルのスイートルームのようだ。
「すごーい……よくこんなところ予約できたね! 浜ちゃん、すごい!」
真理姉さんにそう絶賛され、
「いや、まあ、ちょっと運が良かっただけさ」
と、浜本先輩も上機嫌だ。
ここで一旦、男性陣が荷物を運び込み、そのままコテージ内で水着に着替えた。
その後、女性達と入れ替わって、彼女達が着替える。
「隠しカメラとか、仕掛けてないでしょうね?」
みるるのそんな冗談に、
「まさか……ツッチーならしかねないけど」
と河口が返し、俺が必死に否定して、みんなに笑われた。
ちょっと時間がかかったけど、彼女達が出てきた……しかし、そこには、長めのTシャツを水着の上から着た美瑠、美玖、そして黄色いシャツブラウスを着た真理姉さんの姿があった。
ちょっと落胆する男性陣……しかし、そんなそぶりは見せず、ゴーグルや浮き輪、ビーチボールを手に、河口はなぜか小さなリュックを背負って、みんなでコンクリートの階段を下と降りていった。
そこは結構な広さの河原になっており、既に十数人の家族連れやカップルなんかが楽しそうに過ごしていた。
川の幅は二十五メートルのプールぐらいあって、三日月型に湾曲しており、十分な水量があるにもかかわらず、流れは緩やかだ。
浅瀬では、足首までぐらいしか水がないようで、子供がはしゃいでいる。
「すごーい、綺麗な水! 底が見えるよ!」
「本当! 私、川で泳ぐの初めてかも……」
「あ、私もそう……久しぶりだけど、泳げるかな……」
女子達も結構乗り気だ……美玖だけちょっと不安か?
「美玖もスイミングスクール、行ってたでしょう? 大丈夫、体が覚えてるから!」
「あ、うん……ちょっと面白そうかも」
そんな会話が聞こえてくる。
スイミングスクールか……美玖と美瑠はお嬢様だったな……。
「へえ、二人とも凄いね……私はこれがないとダメ」
真理姉さんがそういって、抱えているシャチの浮き輪? のようなものを見せてくれた。
うーん……それ持ってた方が泳ぎにくい気はするけど……バタ足なら問題ないのかな?
早速みんな揃って、足だけ浸けてみる。
「わっ……冷たーい!」
「本当……川の水って冷たいね……泳げるかな……」
「私はちょっと、無理かも……です……」
ちょっと怖がっている美玖に、美瑠が
「えいっ!」
と、軽く水をすくってかける。
「きゃあぁ……冷たい……けど、気持ちいいかも! えいっ!」
美玖が逆に、姉に水をかけ返す。
そこに真理姉さんも参戦。
きゃあきゃあ言いながら水しぶきをかける……ただそれだけなのに、男性陣は見入ってしまう。
アイドルグループのメンバーかと思うような美女、美少女が揃っていて、楽しそうにしている姿は、それを見ているだけで幸せな気分になってしまう。
……っと、そんなふうに油断していると、
「えいっ! エッチな男子にお仕置き!」
と、女性陣が一斉に、俺たちに向かってしぶきを飛ばしてくる。
「うわっ、やべえっ!」
「俺は無実だからっ!」
先輩と河口は、笑いながら逃げる……もちろん、俺も同じだ。
ひとしきりはしゃいだところで、
「ちょっと待って、皆で記念写真撮ろう!」
と、河口が提案。
女性陣は、まだ水着姿になっていないこともあり、この提案に賛成した。
「ちょっと待ってて!」
と、河口は背中に背負っていたリュックから、三脚を取り出して足を伸ばした。
そしてかなり本格的なカメラも取り出す……たぶん、ミラーレス一眼だな。
「じゃあ、みんなで揃って……カメラに向かって手を振ったら、勝手にシャッター切れるから!」
得意げに話す河口。こういうの、スムーズに準備できるのが彼の凄いところだ。
女子含め、みんな感心している。
最初は男女で固まって撮影したけど、どうせなら入れ違いに並ぼう、ということで、左から河口、真理姉さん、浜本先輩、美瑠、俺、美玖の順で並んで記念撮影。
「じゃあ、水着になろうか」
という浜本先輩の一声に、真理姉さんと美瑠は、
「エロいディレクターみたい!」
「それが目当てだったでしょう!」
と笑いながらも、上に着ていたものを脱いで足下に置いた。
そのスタイルの良さに、俺を含む男性陣は冷静さを装いながらも、目が釘付けになった。
真理姉さんは、大胆な黒のビキニ姿。
胸の大きさも、腰のくびれもはっきり分かり、まさにモデル体型だ。
それに対して美瑠は、やや落ち着いた赤色のビキニ姿。そのスタイルは、引き締まったアスリートのようだ。
体つきが幾分小柄で、真理姉さんに比べれば胸の迫力は少し劣るが、それでも谷間がしっかりと分かり、平均より大きいと思う。
「……私はこのままでいいですか?」
白くて長いTシャツを着ている美玖は、ちょっと遠慮がちにそう話す。
そのTシャツはちょっと濡れていて、下に着ている、ビキニと思われる黄色い水着がちょっと見えているが、スタイルまでは分からない。
「あははっ、いいよそのままで。あのおじさん達エロい目で見るから、気をつけてね」
美瑠がそんなことを言うものだから、男達は俺も含めて苦笑いだ。
その後、浜本先輩と真理姉さんの2ショット写真が撮られる。
彼のニヤけた笑いに撮影者河口の突っ込みが入る。
そして次にその河口が、水着姿の真理姉さんと美瑠に挟まれる感じで、俺が撮影。
これには浜本先輩が文句を言っていたが、真理姉さんとの二人きりの方が価値がある、といわれて渋々納得。
最後に、俺が美瑠と美玖に挟まれる形で撮影される。
そのとき、驚くべきことに、美瑠は腕を組んできた。
また笑いながら文句を言う浜本先輩。
「あははっ、一応、同期ですから……ほら、美玖ももっとくっついて!」
「あ、うん……」
美玖の肩が俺の腕に触れた。
俺の鼓動が、二人に聞こえるのではないかと思うほどドキドキした。
それは、大胆なビキニ姿で俺と腕を組んでいる美瑠に対してか、それともすぐ側で肩を寄せている美玖に大してなのか……どちらか分からないまま、シャッターが切られた。
カメラの液晶画面で確認し、明らかに動揺している俺の表情を見て、全員、爆笑した。
その後、河口がカメラをコテージに置いて帰ってきたところで、美玖を除く皆で恐る恐る川に入ってみる。
最初、冷たくは感じたが、肩まで水に浸かってしまえば意外と平気だ。
美瑠は泳ぐのが得意みたいで、平泳ぎやクロールを披露する。
真理姉さんはシャチのフロートにつかまって、キャアキャア言いながらも楽しそうにバタ足をしている。
一人河原に残っている美玖、寂しそうだな……と思って、一度水から出て彼女の側に行くと、ちょっと恥ずかしそうに、
「私も、泳ぎたくなっちゃっいました……」
と言って、俺の目の前でTシャツを脱いだ。
上下とも、フリルの付いた黄色い水着。
そのスタイルに、思わず息をのんだ。
胸の大きさは、真理姉さんや美瑠には及ばない。
しかし、その形の良さは、水着の上からでもはっきりと分かる。
細身で華奢な体つきながら、きちんとくびれもあって、肌がはじけるように瑞々しい。
十六歳の女子高生、それも、超絶美少女のビキニ姿――。
「かわいい……」
と、思わず心の声が漏れ、それを彼女に聞かれたことに赤面した。
美玖も顔を赤くして、
「……ありがとうございます……」
と言ってくれた。
ビーチサンダルを脱ぐと、小石ばかりの足下がちょっと不安定なので、俺が手を引いて水の中に導く。
それを冷やかすような声が、男性陣ばかりか、美瑠や真理姉さんからも聞こえた。
しかしそれも一瞬で、すぐに彼女はスイスイと泳いで、美瑠たちの元に行き、またキャアキャアと楽しげにはしゃぎ始めた。
俺がちょっと照れながら、浜本先輩と河口の元に行くと、なぜか二人は不敵な笑みを浮かべ、俺を水の中に引きずり込もうとしたのだった。
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