ナンセンス作品のオススメ、目さん
こちらは、企画に関係なくオススメ作品をご紹介するコーナーです。
第二回大会前の数週間、ナンセンスタグ、シュールタグで未知のカクヨム作品を掘り起こすという調査を真面目に行い、企画に思いを馳せていました。一生懸命だったんですねぇ、ひと月前の私。
ただ、シュールタグは早々に諦めました。塩塚不二夫さんの作品などは元々ファンだったのでいいのですが、他の該当作品に関して、ちょっとがっかりしてしまったというか、あまり好みな感じではなかったんですね。中には普通の小説に「シュール」タグがつけられているものもありました。
まあ、ただちょっと「風変わりな」とか「意味不明な感じ」とかでもシュールって言われますから、それはそれで仕方ないと思いました。あくまで好みの範囲からはずれているだけかもしれないですしね。
ダメかぁ……と思いながら、期待もせずにナンセンスを検索してみたら、こっちは「結構いいかも!」となったわけです。かなり凝った、込み入った、スケールのでかい、ひたすらおもしろおかしい意味不明作品がありました。もうノリノリで毎日毎日検索し続けました。手当たり次第開いて読む、読む!
その中で一番気に入って、ほとんどゾッコンとなってしまった作者様が
「目さん」だったのです。
私はもうフォローしている方が多くなりすぎて、マイページのユーザー様名を指で押すのも大変なので(最近は「つくお」さんと「つきの」さんをよく押し間違えます……)、検索窓に作者様名を入れる方が早いのでそうします……
「目」と入力して検索すると、すごいんですわ!
作品名もたくさんあがってきますが、「目」がつく筆名の方たちがずらっと並ぶその光景。「キャー。目が、目が、みんな並んでこっちを見てる────」といった具合に。シュールや……。こんなところに素敵にシュールが登場されても……。
「夏目さん」って方は何人もいらっしゃるし、「目薬さん」までいます。「右目さん」もいますけれど、もう一方の相棒がいませんが大丈夫なんでしょうか。
つらい時、これを見たら笑えるかも(目的が違う)。
そんな中でただ一人、別の文字を携えることなく、堂々と、異彩を放つようにいらっしゃる、私の「目さん」(おまえのじゃない)。
シンプルでありながらどことなく知性が感じられるお名前からわかるように、その作品群も、いわゆる「知的快楽追求系」とでも言ったらいいような雰囲気のもの。そして私は自分の脳みそにはそういう餌をあげたいと──萎れた花に水を与える道理のごとしと──つくづく思っていますから、どハマりしました。
私が読んだものは全部おもしろかったですし大好きだったし全部ご紹介したいのですが、それも大変なので、何作か頑張って魅力を語ってみますね!
まずは「クの子供たち」という作品。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054883520538
こちら、なんと「書記素」が主人公となっているユニークな作品。書記素とは、まあ、文字のことですね。単語などを形成する最小単位のことです。
文字の形に注目して編みだされた作品となっていますが、クとか、々とか、久とかが出てくるんですのよ。タタタタ……ってかわいい足で走ってね。児童文学の雰囲気で、切なさもありつつ、適度にくだけたおもしろさ。
あれこれ解説するのも愚というもの。ぜひとも読んでいただきたいです。
それからこちらはもっと深い驚きを与えてくれた作品。
「節目」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054883339357
木の節目の魅力に取り憑かれた男が辿った数奇な運命。ナンセンスのタグがつけられていますが、重厚な雰囲気。
出色だったのが、後半の、非人間となった男が、自分の存在についての理解の手助けをしてくれようとする仲間的な思念と会話を交わすシーン。
(おそらく、高次の目玉衆に引き上げられたのだろうな)
(理解)
(君はこの先のことを気にしているのだな)
(肯定)
(未来にばかり意識を向けているから、未来が来るものだと考えることになる)
(当然)
(教えてやろう。それは、もと人間に特有の思考だ)
(驚愕)
別の生命体となりその状況をまだ呑み込みきれずに困惑する男が、シンプルな熟語のみの思念で返事をするのが、なんともおかしいんだけれど、切ない。最後の宇宙へと至るところは泣けてくる!! 大好き!! 目とはやはり、高次元な存在らしい……。
あと好きだったのが、いやほぼ全部好きなんですけど、多分まだ読んでいないものも好きに決まっているんですけど、気持ち抑えきれないから、紹介する!(テンション、大丈夫?)
「15の小片集」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054888345764
この中にある、
仮装しないパーティー【思いつき編】
仮装しないパーティー【「読者への挑戦状」つき編】
「15の小片集」は、目さんの愉快なアイディアが宝物のように並べられた小品集。たしかな小説となっているものもあれば、アイディアだけを簡単に紹介しているだけのようなものも。
しかし、アイディアをアイディアで終わらせて眠らせてしまえば、一生世に出ることなく脳の記憶の宮殿で朽ち果てていくだけです。
なので、こういった形で私たちが拝むことができるように作品化してくださった知恵が素敵じゃないの。
私が一番おもしろい、と思ったのが「仮装しないパーティー」。
どういうものかというと、変身したい人物の服装を用意するのはお金もかかるし大変だから、私服で出席して、言動などで人物を表現してもらい、誰になりきっているか皆で当てっこする、といった趣向。最後まで正体がばれず、つまり誰からも当てられずに、しかも皆が納得できる人物になれた者が優勝して賞金がもらえるという、実にしゃれた、大人な遊び。こういうのだったら私もやりたい。
もちろんこれで終わらない。ここから実際に興じた物語が展開し、「さすが!」と思える仕掛けがはじまる。
「某」という人物がこのパーティーに参加する。自分がなりきっている人の名前を「こんにちは、◯◯です!」と、まるでモノマネ芸人のしがない自己紹介みたいに口に出して言っちゃう人。
にもかかわらず、彼はまさかの優勝をさらってしまう(ということは正体がバレなかった!)──さて、一体某はなにに仮装したのでしょうか? と読者に謎を投げかける作品にしているのです。
私もこの謎にこのオツムで(!)挑戦してみましたよ。これは当たってるんじゃない? すごいの思いついたんですけど! と自信満々だったのですがね……はずれました。でも、私のアイディアもいい線いってたと思います。私がこのパーティーに出席するとき(があれば)、なってみようと思います。
気になる方は読むしかない。そう、それしか手はない。
このお話、平和的でおもしろいし、ちょっとした推理ゲームとして誰かに話したくなりますよね。その他のアイディアもほぼ似た路線で、手軽においしいところをつまみ食いできるような贅沢感があります。
そういえば、「奇妙な趣味を持つ若者に話しかけられた男」っていう、あらすじに魅せられた男の話もあったような、ありましたような、あったんですよねー、ありますもんねー。
……………………………。
はぁー、ナンセンスに魅せられた女、それは私。
私は思う。ナンセンス大会はきっとやめられない。
またやりたい……。
まだまだ読みたい。
でも、ナンセンスを書くのって本当に難しいです。
私も今度はもう少しましなヨーグルトを作ってみたいですね。
またお会いできる日に、あなたのナンセンスを読ませてください。
未知のナンセンス作家様、そして目さん!!
そのときまで。
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