第30話「盗賊の本領」
「さて、
深夜。
レイルは宿を抜け出し、ギルドが見える高い建物に位置し、監視していた。
その視線の先では、ギルドの中に何かを搬入している男たちがいる。
「思った通り動いてくれたな……。単純で下種な奴らのことだ、そう来ると思ったよ」
レイルは全身を黒装束で覆い隠し、『盗賊』系の隠ぺいスキルで完全に気配を絶ってここにいる。
その監視対象はもちろんギルド。そして、要すればロード達だった。
「それにしても、向こうもこっちを警戒しているだろうけど、まだ侮りが抜けてないみたいだな……安い情報屋なんて使いやがってよ」
レイルもロード達やギルドを監視しているが、じつはレイル自身もロード達に警戒して監視されていた。
5日後の決闘とはそういう時間なのだ。
正攻法にみえて、両者ともに化かし合いの戦いはすでに始まていた。
だから、レイルも常に誰かに見られているのだが────もちろん、そこは対策済み。宿にはいまだにレイルが寝ているように偽装している。
「グリフォンを倒して大幅にレベルアップしているところまでは予想外だろうさ」
レベルの上昇したレイルのスキル気配探知には、素人同然のゴロツキが宿の付近をうろついているのを感じていた。
だが、それだけだ。
奴らはレイルがすでにそこにいないことすら勘付いていない。
……金をケチっているのか、レイルを侮っているのか──その両方か。
「まー、俺には都合がいい」
すでに、現在はロード&ギルドマスター連合とレイル達の
非正規──。
つまり、化かし合い。
レイルごとき、Dランクに大げさと思うかもしれないが、ロード達側にもレイルを警戒せずにはいられない事情があった。
それというのも、レイルがすでに手を打ったからだ。
そう。昼間のギルドにおけるレイルの一連の行動にはワケがあったのだ。
わざわざグリフォンの首をご丁寧にロード達の前まで持ってきてやったのには、きちんとした理由があってのこと。
要するに、レイルにはグリフォンを倒せるだけの力があるかもしれない────そういう疑いをもたせることだ。
もっとも、Dランクのレイルの実力を知っているロード達は未だにレイルの実力は疑っているだろうが、幸か不幸かロード達にはボフォートやセリアム・レリアムのような頭のキレる連中が揃っている。
……彼らならば、「もしかしてレイルは強いかもしれない」程度には考えるはずだ。
そして、そうなる様に仕向けた。
だから、ボフォートをぶっとばしてやったのだ。
あれもこれも、
「──────正々堂々ロード達をぶん殴るためには絶対必要なんだよ……」
クッキーをかじりながら、夜気を凌ぐように隅で汚した毛布を体に纏う。
レベルが急上昇したレイルの『盗賊』としての質は向上し、本職や上位互換職でもなければそう簡単にレイルを見つけることができないくらいに彼の能力値は高くなっているのだ。
「さて、なにを運び込んでいるのかな──?」
──ポォン♪
※ ※ ※
レイル・アドバンスの能力値
体 力: 529
筋 力:1000(UP!)
防御力: 518
魔 力: 86
敏 捷:2500(UP!)
抵抗力: 63
残ステータスポイント「+4」(DOWU!)
※ 称号「
⇒ 空を飛ぶ魔物に対する攻撃力30%上昇
鳥系の魔物に対する攻撃力20%上昇
※ ※ ※
スキル『七つ道具』
Lv:7
備考:MP等を消費し、
開錠、罠抜け、登攀、トラップ設置など、
様々なスキルを使用できる。
詳細:開錠Lv5、
罠抜けLv5、
登攀Lv4、
投擲Lv4、
トラップ設置Lv6(UP!)、
解読Lv1(NEW!)、
複製Lv3(UP!)、
気配探知Lv3(NEW!)(UP!)、
隠ぺいLv6(NEW!)(UP!)、
鷹の目Lv1(NEW!)
スキル『一昨日に行く』
Lv:2
備考:MPを消費し、「5~10分」程度、一昨日に行くことができる。
一昨日から戻るためには、スキルのキャンセル、
または「5分」経過後、もとの時間軸に戻ることができる。
※ ※
グリフォンを倒して得た経験値。そして、大量のステータスポイントを割り振り、スキルとステータスを再強化したレイル。
ステータスは多少、筋力と敏捷に割り振り強化し、少しでも『放浪者』の連中のステータスに近づける。
すくなくとも、敏捷では互角以上。筋力も最低限のダメージを与える分は必要だった。
さらには、スキルの強化。Lv4までは上昇ポイントが少ないので多めに割り振り、そして新規スキルを最大限活用。
今も監視に際して『鷹の目』と『隠ぺい』のスキルを使っている。
遠視を可能にする鷹の目でグッとギルドのほうを注視すると、ギルドマスターの子飼いの職員が大きな荷物を運んでいた。
しかし、すぐに使うつもりはないのか闘技場にほど近い倉庫に運び込んでいる。
「──……へぇ、あれが連中の仕込みか」
トラップや武器、魔法兵器の類だろう。
模擬戦のさなかにそれを使用して、確実にレイルを仕留める気なのだ。
もちろん、まともにぶつかって勝てるならそれもよし、無理ならさっさと決着をつける────そんなとこだろう。
「トラップを入れ替えるつもりだな? どんな細工をするつもりやら……」
昼間に確認した闘技場のトラップシステム。
……どうも、ロード達を有利にするため、
「──だけど、俺を甘く見るなよ……」
闇の中。
レイルはこっそりと笑う。
(そっちがその気なら好都合だ──……)
レイルは自分の思った通りに流れが進んでいくのを見て、気持ちよく笑う。
さぁ、あとはレイルが手を打つ番。
「『疫病神』相手に、化かし合いが通じると思っているのか」
それぞれの準備期間は5日間。
だけど、レイルにだけは時間は平等ではない。
なぜなら、スキルがある。
スキル『一昨日に行く』
これで、+2日間の準備期間。
一昨日まで遡れば計7日間の準備期間がある。
「どうやって俺がグリフォンを倒したのか教えてやるよ──!!」
そういうが早いかレイルは姿を消す。
グリフォンを倒し、急激にLvの上昇したレイルは並以上の『盗賊』となって行動を開始した──。
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