弱点
クレス達はワーグナリアの門の前に来た。
ゆっくりと国の方に向かっていた魔物達は逃げ惑うと思われた人間が立ちはだかってることで疑問に思い足を止める。
「なんでそんなに殺気だってるんだ?」
クレスは殺気立つ魔物達に言葉を投げる。
『ニンゲン、コロス』
「聞く耳を持たないらしいな、よし修行だな!」
クレスは閃いたと笑顔をトウマに向ける。
「マジで?」
「マジで」
クレスはせっせと線を引く、魔物達は何をしてるのかわからず止まったままだ。
「次は殺してもいいぞ、ただこの線を越えるな」
「相手は神級だぞ?」
トウマはクレスの修行と言う名の無茶ぶりに疑問を返す。
「知ってる」
線の前にトウマがしぶしぶ立つとクレスは門に背を預け見物にシフトする。
アリアスは制限時間の節約ということでソーダの姿になってクレスの左肩に乗っている。
「おい神級の魔物! お前ら初級の魔物と何処が違うんだ? 違うとすれば図体だけだな!」
『バカ、ニ、スルナ』
クレスが煽ると魔物達の周りに魔力の渦が出来上がる。
「ほらな、すぐに挑発に乗る! 雑魚はひっそりと山奥で隠居しとけ!」
『グワァァァァァァ!』
大きな咆哮と共に止まっていた魔物達が一斉にクレスに向かって駆け出す。
「クレス! あんまり挑発しないでくれよ」
魔物はトウマには目も向けていない。
『リミテッド・アビリティー』
トウマは魔物に向かって走り出しながら両手をクロスさせ、二本の虹色に輝くオーラを纏った剣を取り出す。
トウマに気づいた獣型の魔物がトウマに噛みつこうとするが。
『ひれ伏せ』
トウマの重力魔法でその場にいる全ての魔物が地面に縛りつけられる。
「はい反則」
トウマは後ろからのクレスの声を聞くと直感で嫌な予感を感じて左側に回避する。
するとヒュッと音がしたと思えばトウマに噛みつこうとしていた魔物の頭に剣が深々と刺さっていた。
「殺す気か!」
トウマは後ろに叫ぶがクレスは。
「強化以外の魔法使うの禁止」
そう、嫌がらせをしていた。
魔法を見せつけるように使われたクレスの嫌がらせ。
「相手は神級だぞ!」
「知ってる」
飛べるような魔物はいない、見える範囲では獣型の魔物だけだ。
クレスの妨害により重力魔法が切れた魔物達は再びトウマに襲いかかる。
一体一体を確実に仕止めて行かなければトウマは囲まれてしまい打つ手がなくなる。
必死に魔物の爪や牙の攻撃を避けてトウマが二つの剣で流れるように魔物を仕止めていく。
「はぁ、はぁ、きついな、あと、少し」
『リミテッド・アビリティー』
黒剣をクレスは召喚する。
魔物の死体が次々に魔法石になっていく、残すは後五体。
その五体は羽がない竜型の魔物。
「我らが手を下さずともやられると思ったがな」
トウマは片言じゃなく普通に喋る魔物に驚き足を止める。
その竜型の魔物は半透明な赤色のオーラルを纏う。
「我らの力を見せッ!」
いきなり喋り始めた竜型の魔物の首が飛ぶと魔法石に変わる。
「誰だ! キサッ!」
隣にいた竜型の魔物も同じように消えていった。
「トウマ! 魔法を使ってもいい! 早く仕止めろ!」
「何を焦ってるんだ?」
二体の魔物を瞬殺したクレスがトウマに向かって叫ぶが。
『『『もう遅い! 我らの同胞をよくも!』』』
三体の竜型の魔物が半透明な赤色のオーラルを纏う。
『
「クソ! 遅かったか!」
クレスの慌てようにトウマは驚く。
「クレスが慌てる程の相手なのか!」
人化と共に金色に染まる瞳と茶髪の髪をなびかせるイケメンが三人登場したのだ。
「終わった……」
クレスは黒剣を手放すとキラキラと粒子を残して消えていく。
トボトボと見学していた場所まで戻っていったクレス。
「我らの力に恐れをなしたか人間!」
『封印の壁よ、顕現せよ』
詠唱が紡がれる。
『ホーリークリエイト』
三人のイケメンが透明な檻に覆われる。
「トウマさんには言ってもいいんですが」
アリアスは人化を使ってトウマの傍まで行くと、焦っていたクレスの理由を話す。
「簡単に言うとですね、神級の魔物が人化すると魔法が使えるようになりますよね、それだけでも充分強力です」
人化する魔物が魔法を使える事はあまり知られてはいない、それだけ強さがありレアなのだ。
「それでか、それほどまでに魔法が使える魔物は強いと言うことか!」
「え、え~とですね」
アリアスはクレスの方をチラッとみる。
「強さは関係ないです、ユウ様は変な所で器が小さいのですよ」
「……」
関係ないのかよ! とトウマは心の中で思った。
「昔ですね、ユウ様には魔物の知り合いが居られまして……」
『ブラッド! 遊びに行こうぜ!』
『俺もそんな暇じゃないんだが』
無理矢理に竜王を人化させてフィーリオンで遊んでいた時に起きた事だ。
赤色の深紅な髪と鍛え上げられた無駄のない筋肉質な身体、それでいてスラッとしていて身長もある人化した竜王。
切れ長の目はクールな雰囲気、魔力で作られた深紅の鎧を身に纏い、貴族や英雄じみた風格がある。
フィーリオンの街並みを二人で歩けばキャー、キャーと黄色い声が響き渡り、竜王だけを囲むように若い女性の輪が出来る。
『うるさい!』
竜王が低い声のイケメンボイスを放てば何人かの女性が倒れるくらいの威力があった。
『お~いブラッド!』
『ブラッド様というの』
『ブラッド様~』
『あんたみたいなブサイクがブラッド様に話しかけないで!』
『そうよ、ブラッド様から離れなさいよ!』
ユウが喋れば女性達からの罵倒が飛んでくる。
『ぐはっ!』
「そういうことが何度かあり、ユウ様は決めたそうです」
『アリアス、俺はブラッド以外の奴がイケメンに人化しようとしたら絶対止めるわ』
「友達の魔物さんはまだいいらしいのですが、魔物よりも自分の顔が劣っていると感じたらトラウマ? というのがよみがえって戦えないというのですよ」
アリアスは「ユウ様はカッコいいんですけどね」と頬を朱に染めて人化を解くとクレスの方へ飛んでいった。
イケメン達を覆っていた魔法も解かれる。
「貴様も先程の人間のように帰ったらどうだ?」
「……お前らがバカにすんなよ」
トウマは両手に持っている剣を構え直す。
『俺はクレスに害を与える者を排除する』
「命知らずだな!」
「魔法を使ってもいいらしいからな」
トウマは緑色のオーラルを纏う。
『フィリオール』
緑色の風がトウマの身体を包むと動きが一気に加速する。
風の神級魔法、動きを加速させる付与魔法。
一瞬にして魔物達を切り刻む。
「そん、な、我ら、がやられる、はず」
「お前らがさっきバカにした人間なら、魔法を使わなくても瞬殺だったな」
「な、に……」
三人のイケメンが驚きの表情を残して消えていった。
戦いも終わり魔法石を集めている時に。
「クレスでも結構弱点ってあるんだな」
ふとトウマは呟いた。
「ありがとなトウマ」
トウマの肩を叩きクレスが感謝を示す。
聞かれたかと一瞬ビクッと身体を震わせたトウマだったが感謝された事が嬉しくてせっせと魔法石を拾いに戻る。
『あぁ、俺は弱点ばっかりだ』
トウマに聞こえないようにクレスはトウマの呟きに答えるのだった。
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