ネコミミ









 俺は獣族の宿のベットで考える。


『なんでこんなことになった?』




「ファンタジー世界なのにネコミミ族とかいないかな~」


「ネコミミ? 獣族ですか」


 アリアスがネコミミに反応する。


「えっ! 獣族とかいるの?」


「はい、ですが何処にいるかまでは分からないですね」


「よし、ネコミミ美少女に会ってくる」


「何処にいるか分からないのですよ」


「なんとなくだが俺のネコミミセンサーがこっちにいると言っている!」


 山を指差して俺は自信満々に言い放つ。


「人族と魔族との戦争は世界中で行われています、このままでは獣族も巻き込まれるかも知れません」


「アリアスは分かってるな! それを聞いちゃ行かない訳には行かない」


「それではユウ様、いってらっしゃい」


 アリアスはニコリと笑いながら俺を送り出す。


「あぁ」





 そして獣族を助けた俺は村に招かれ、豪華な食事や村一番の宿に泊めて貰えたり獣族達は感謝を伝えまくりだ。



『もう寝るか』


 俺は眠りについた。





「起きて~、獣王のお兄ちゃん」


『ユウ様おはようございます』


 クロはすでに俺の中に入ってるらしい。


「う~ん」


 薄く目を開けると白猫耳がピョコピョコと元気そうに揺れる。


「シェリルおはよう」


 俺が助けた白猫耳の美少女はシェリルだ。


 シェリルが起こしに来るのはここに来て何度目だろうか。


「ネコミミ触らせてくれ」


「ダ、ダメです! 獣族の耳は神聖な物なので触らせたりしてはダメなのです」


 ネコミミを隠しながら後ろに下がるシェリル。




『キャーッ!』


 大きな揺れと共に外から悲鳴が聴こえる。


「な、なんだったんでしょうか!」


「外に行こう!」


 俺は起き上がるとすぐに外へ出る。




『クロ、今なにが起こっているか分かるか?』


『感知します』


 クロが正確に感知するために足を止める。


「黒耳がピョコピョコしてます」


 横からシェリルが俺を見ながら言ってきた。


『感知しました、人族が攻めて来てます』


「シェリルはここにいろ、人族が攻めて来てる」


「大丈夫なんですか!?」


「大丈夫だ! 任せろ!」


 俺はシェリルの頭に触れようとしたがシェリルは耳を隠しながら後ろに下がる。


「ダメなのです!」


「じゃあ行ってくるか」





 クロの指示通りに村の中を進む、村といっても広い。


 木の中や木の上に家を作って、そこに住んでいるような感じだ。



「俺らの仲間を殺した奴は誰だ!」


『あれは誰だ』


 大柄の男が双剣のように斧をクロスするように背中にかけている。


『剣聖グロリウスですね』


『剣聖ってなに?』


『この世界には魔族側も含め十二の国があります。その国で一番強い人を剣聖といいます』


『じゃあアイツはどこの剣聖だ?』


『ミリテリオンの剣聖です。因みにミリアードの剣聖はアレクですね』


『えっ! アレクも剣聖なのか!』


『十三番目の国が獣族の国ならユウ様は剣聖ですね!』


 俺はグロリウスの正面で止まる。



「仲間って言っているがお前が獣族を捕まえようとした奴の仲間でいいんだよな?」


「獣族は高値で売れるからな」


「そういうことならお前も殺……ちょうどいいな。俺は獣王! この獣の国の英雄だ。その名を広める為に協力してもらおうか、獣族に手を出したらどうなるかをな!」


 俺は腰にある黒剣グランゼルを引き抜く。


「お前が俺の仲間を殺した奴か?」


「そうだが?」


 グロリウスは背中の斧を抜き取る。


「野郎共! 殺れ!」


『クロ』


『はい、グロリウスを含め向かってくるのは108名です』


 グランゼルは黒の線を残しながら戦場を彩る。


『90、80、65、47、32、17、5……』


 向かって来る敵を躊躇いもなく斬り伏せる。


「残ったのはお前だけだな?」


「うぉぉぉぉぉ!」


 グロリウスは斧を獣王に降り下ろす。


「なぜだ! 獣族は争いを好まず、狩りやすかったはずだ!」


「俺が特殊なんだよ、世界中に広めろ! 獣族に手を出したら獣王が容赦しないとな!」


 黒剣グランゼルが通り過ぎると斧を振るう腕が空中を舞う。


「ぐわぁぁぁぁぁぁ!」


 右腕が無くなり倒れるグロリウス。


「い、命だけは助けてくれ」


「復讐しようとは考えるなよ? 次は命を取るからな」


「は、はい」


 グロリウスは斧を置き去りにして逃げるように帰っていった。





 獣族の獣王の噂はすぐに広まった。


 獣族に手を出せばタダでは帰されないと。


 そして本物の英雄として獣族から慕われるまでに獣王はなった。


 その噂は魔族側まで広まり、真実を確かめる為に攻めてきた魔族も獣王が返り討ちにした。



 人族と魔族は決めた。


 剣聖を集め危険な獣王を殺すことを。


 これは人族側と魔族側の合意の上で行われた。




 獣族の村のベンチに腰掛けシェリルと話す。


「獣王様は凄いですね!」


「凄いだろ~」


 獣王はシェリルの頭の耳を触ろうと手を伸ばす。


「ダ、ダメなのです!」


 シェリルは後ろに下がりながら獣王を警戒する。


「シェリルは可愛いな!」


「そ、そうですか?」


 シェリルは頬を朱に染めながら獣王を見る。


「良いところだよここは……俺が絶対に守ってやりたい」


 木々から漏れる光を見つめながら声に出す。


「獣王様に守って貰えるのは嬉しいです! 争いは嫌いです、みんな仲良く平和な世界に憧れます」


「そういう世界になればいいな」


「はい!」



 シェリルの笑顔を見た獣王は決意を固める、獣族達の平和を守ろうと。




 獣王討伐を命じられて承諾した剣聖は十人、アレクと一人の剣聖はその話を断ったという。


 

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