交差点で僕とぶつかってパンチラした美少女が教室で「パンツ覗き魔!」って叫んだら、なんやかんやあってその子と毎朝一緒に登校することになったラブコメ
第16話 ふふ、何言ってんだい? 私達、とっくにフレンズだぜい
第16話 ふふ、何言ってんだい? 私達、とっくにフレンズだぜい
「私は、
その覚え方は今すぐやめていただきたい。
僕は、不名誉な称号をなんとか
昼休みの学食。
隣の席の友田くんを誘おうと思ったのだが、まったく取り合ってもらえなかった。嫌われるようなことなどした覚えはないが、なんだか昨日よりも避けられている気がする。
いや、それは、クラス全体においてそうで、なんとしても関わりたくないという断固たる意志を感じる。
その中で話しかけてくれた救世主が、この黒髪女子こと、菅田愛未であった。
これがラブコメだったら堕ちてしまいそう。
そのくらいうれしかったし、友達ができないことに僕自身が
学食は混んでいたが、そもそも規模が大きく、席はそこかしこと空いていた。生徒も、室内だけでなく、中庭で食べたりとわりと自由らしい。
「でも、
「昨日の今日で忘れてしまう奴に言われても説得力ないけど」
「それは、あれよ。パンツ覗き魔が強烈だったから」
うん、まぁ、それは仕方ないかも。
「はっ! もしかして、今朝、私のパンツも
「……、そんなわけないじゃないか。助けるのに必死だったんだよ。君の白いパンツなんて、まったく見ていないよ」
「そっか、よかった。女の子のパンツ見るなんてサイテーだもんね。今日は白のかわいいやつだからサイアクいいけど、気を抜いているときのやつだったらマジサイアクだから」
「あれ? でも、どうして今日の私のパンツが白って知っているの?」
「ははは、何を言っているんだか。君が今自分で言ったんじゃないか」
「あ、そっか。私ったら、はしたない。今のは、忘れてね。お願い」
あっぶねぇ!
正直、バカで助かった。時系列における勘違いを誘ったのだけどうまくいったみたいだ。まぁ、過去なんてものは黒板に書かれた落書きみたいなものだから、どの絵が先に描かれたかなんて後から見たらわからない。
だいたい、スカートがめくれたときに、パンツ見た? と聞いてくる女子は何を考えているのだろうか。
そんなもの見たに決まっている。
もう古来から男子の身体にインプットされている機能なのだ。本能的に、見れるパンツは反射で見てしまう。けれども、わるいことだと知っているから、ちゃんと見てないように振る舞う。ラッキーと思っても心の中で拳を握る。
それなのに、今見たでしょ! と詰め寄るのは、男子の良心を傷つける行為に他ならない。こちらとしては、見てないと嘘をつかなくちゃいけないわけで、それは本当に辛いことなのだ。
うん、ほんと、そうだよね。
僕は、心の中で男子高校生のパンツに関する講演会に
「えっと、菅田さんに聞きたいことがあるんだけど」
「愛未でいいよ。ほら、先生も菅田だから、ややこしいでしょ」
そういえば、担任の苗字も菅田であった。別に珍しい苗字というわけでもないが。
「あ、ちなみに、先生は私のお姉ちゃんだから」
だそうだ。言われてみれば、顔の造りとか、髪質とか似ているかもしれない。愛未の方が小柄だが、ここから成長して、あのグラマラスボディを手に入れるのだろうか。
「何か、目がいやらしいんだけど」
女子って、こういうの敏感だよね。
「で、トラくん、私に聞きたいことって何?」
「トラくん?」
「うん。私が愛未ちゃんなら、虎守くんは、トラくんでいいでしょ?」
距離の詰め方が早すぎて、ちょっと戸惑ったが、コミュ力の高い子は、そういうものなのかもしれない。
「別に大したことではないんだけど、愛未は」
「ちょっと待って。呼び捨ては嫌なんですけど」
「……愛未ちゃんは、どうして稀久保学園に来たの?」
「え? 試験がないからだけど?」
愛未は、即答した。
「私、勉強苦手だから、試験あるとこ、ほとんど無理でさ。名前書けば受かるようなDランク高校に行くしかないかなって思ってたときに、お姉ちゃんから、ここを紹介されたの。試験はいらないし、卒業さえすれば有名大学への推薦もしてくれるっていうんだからすごくない? ソッコーで応募した」
意外と現金な理由であった。というか、今さらながら思い出せば、僕もほぼ同じ理由で、既に決まっていた高校を蹴って、この学園への転入を決めたのだ。
これで愛未がゲストであることは確定。それに嘘をついている様子もないから、彼女は、ラブコメの呪いを悪用しようなんて考えていないだろう。
だとすれば、協力できる。
おそらく、この環境で最も大事なことは、こうやって、常識を共有できる仲間と繋がりをつくること。それは、ヴィオラ先輩がやったことと同じ。
それに、友達は貴重だ。
「そっか。愛未ちゃんがこの学園に来てくれてよかったよ。こうして会えたしね」
「私も、トラくんが来てくれてよかった。いなかったら、私、あそこから降りられずに、猫とおばあちゃんになっていたもの」
「それはないと思うけど、まぁ、とにかく、改めて言うんだけどさ、僕と友達になってくれる?」
「ふふ、何言ってんだい? 私達、とっくにフレンズだぜい」
フレーズはいささかダサかったけれど、その受け答えは、やけに男前で、僕が女子だったら惚れてしまっていたかもしれない。
何はともあれ。
やっと、友達が一人できた。
ホッとする僕をよそに、愛未は、カレーをスプーンでさらって食べ干して、じゃ、と話を切り出した。
「じゃ、友達のトラくん。今日の部活見学、一緒に行こうね!」
……そんなイベントあったかしら?
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