09.上がる男*
「気に入ってくれたようだね?」
「ああ、はい。でも、
「
「そ、そうです、ね? なんか今さらな気がしますが……」
思わず昨夜の……
「
「あ、ああ?
ボクは夕べを思い出し思わず口にしていたがマキナさんは気づかず話を進める。
ピンク色になってる頭を現実に引き戻された。
差し出されたマキナさんの携帯に表示された婚姻届画面に
住所は新居じゃなくもちろん実家の住所ね。だいたい新居の住所、知らないし。
で、住所を入力……っと。ん……んん?
「あ、あの……となりに入力されたマキナさんは良いんですけど、その下にも名前があるんですけど?」
「妹だな、同時婚姻する」
「はい? えっと、マキナさんと一緒に、このアヤメさん? とカエデさん? とも結婚する……と?」
「そうだな。お見合いで話したろう? 君の婚姻可能年齢まで私が待たせていたんだ」
聞いてないよ。いや、じっさいにあの時聞いてなかったんだけど。聞いてないよ。
「あの……いきなり3人なんて。待っていただくのは──」
「ダメだな。3人なんて普通だろう? 余裕があれば他に入れてもいいし」
「──3人で充分です! まだ、お会いしてないのに、そのお二人は良いんでしょうか?」
「その点は大丈夫だ。お見合いにも
寝耳に水なんだけど、他の二人にもボクの情報は伝わっていて不満もなく婚姻には同意している。
でも、ボクは知らない人はちょっと怖いんだけど。せめてお顔や
「分かりました」
マキナさんの姉妹なら大丈夫だろうと個人認証させ送信した。ああ~、いきなり3人と結婚か~、不安だ。
「住所変更はしておくよ。次は……」
マキナさんに携帯端末を返すと、ショッピング
「これで
入力を
「それじゃあ、これが家の
「はい」
手渡された家の
「……これで終了、っと」
マキナさんが入力したあと、ボクに端末を返してくる。
「それで端末に論理解錠キーを付与したから、その二つの鍵で家に入れるから」
ありがとうございます、と携帯端末をもらう。やっとこれで家に出入りできるようになったよ。
「大変だけど、午後はドレスを
「…………」
まだ、それがあったんだ、とげんなりしていると表情に出てしまった。
「そんな顔、するな。すぐ終えるようサイズ計測で留めておくから……」
分かりましたと了承して食後のコーヒーを楽しんだ。
レストランを出て気分
新しい決済が使えるのを確認がてらに買ってみたと言うのが本当だけど。問題ないと思っているけど
あっちへこっちへ、つれ回されてマキナさんがお
「この子のサイズ計測を
洋装テナントに行くとドレス選びが始まる。下着になってサイズを測ってもらうと、備えつけのタブレットに
「これは、どうだ?」
「いいですね」
「これも良いな」
「そうですね」
どこかでやったやり取りが
しかし、数が多くないですか? いっぱい作っても着れるか分からないし、着れなくなるかも知れないし。
ボクもまだ成長期なんだから……。そんな
「新しく買えばいいじゃないか。それに少しなら調整できる。君にはいっぱい買ってあげるよ?」
「さ、
これだからお金持ちは……。一度、
どこぞのお貴族様ですか、そうですか。
洋装店での注文も終わってぐったりしていたら景色でも見て気分転換しようか? とマキナさんが訊いてくる。
こんな場所(失礼)に見る景色があるんだろうか?
「ここだよ」
「ほおぉ? 屋上遊園地みたいな」
屋上に上がると小さいながら遊園地のように
外周を回るカートとか、モール中央の吹き抜けを渡るコースターとかまである。
そんな中でちっちゃな
「乗ってみるだろ?」
「そうですね……乗ってもいいですけど」
マキナさんに手を引かれて観覧車の乗り口へ行く。
観覧車に乗ってみると全方位に景色が広がって、すごい。
見えるのは
「山ばっかり……海が見えたら良かったのに……」
車窓にかぶり付いて外を見ていて、なんとはなしに
ちょっとちょっと、ダメですよ? バランスを考えて片方に座らないようにと係員さんが言ってましたよね?
「そんな……冗談ですよ。それに今から行ったら夜になってしまいますよ」
実は、観覧車に乗ったのは初めてだったんだけど、海も行ったことなかったんだよね。
できれば行ってみたい。オフシーズンなら人はいないだろう。
でも、明日からは学校がある。マキナさんも会社だ。
陽が
行ってみたいけど、明日に
内なる
何くれとなく
なんか乗りで海を見に行くことになってしまった……。
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