読者選考後にPVが伸びる

 今宵は長いようで短かった催し物が終わり、ユークレースとシレア両国を主とする夜会が開かれていた。シレアからは兄王子妹王女とその付き人が揃い、ユークレースからはラピスとクエルクスが代表で来ている。その他は他国の面々が列席するはずである。


 アウロラは広間に集まった人数の多さに驚いた。ユークレースとシレア両国への入国証を所持している賓客が予想以上に多いのだ。


「例の催しは終わったのに、一度にここまでの数がお集まりになるなんて」


 カエルムをあたりを見回し、また訪問客数を記録した資料を見て驚きを隠せない。


「今日だけで入国記録(PV)はシレアは67、ユークレースは145か。長期滞在予定(フォロワー様)はそれぞれ一人、あと四人か? 増えているな」

「催し物が終わったので、他の国に滞在していた方や参加国の方に余裕ができたのかしら?」

「数値記録で身元は記していないから解らない。いずれにせよ驚くな。ここまで伸びるとは、原因が気になるとはいえありがたい」


 二人が広間の隅で話していると、ラピスが挨拶にやってきた。クエルクスはシレアの王子王女へラピスが話しかけるのを見送り、気を利かせて主人から離れたロスに礼をする。


「そちらは姫君殿下の」

「はい、クエルクスと申します。カエルム王子殿下の従者殿とお見受けします」

「ご丁寧に感謝申し上げます。が、いいですよ。今日くらい堅苦しいのは無しで」


 クエルクスは会釈し、それから歓談するラピスたちを横目で見ながら遠慮がちに切り出した。


「あの、国ではどうも相談できる人がおらず……カエルム殿下についておられる貴方ならさまざまなご経験がおありと思いまして、一つ伺っても?」

「えぇ、まあ。自分で良ければ」


 ほっと安堵の息をつくと、クエルクスはなおも少し言いにくそうに、それでも先を続けた。


「あの、ですね。ええと。すごく言いにくいのですが、ちょっと任務上知っておかねばならず……こうしたことをお聞きするのもお恥ずかしいのですが、異性に対して無意識にその人の想いを掻き乱す人っていうのはいるものなのかと——いるとしたらどう対処したらいいのか——」


 言葉を探しながら、伏し目がちにクエルクスが——しかし必死に——ロスに問う。意外な質問に全く驚かないでもなかったが、ロスは何となく青年の言うことがわかって微笑ましく思う反面、問いの内容が(クエルクスとはやや別の意味で)記憶にありすぎて顔を歪ませた。

 そして、先のクエルクスと同じく主人達の方をちらと見る。

 するとその視線に気が付いたのか、カエルムが極めて端整な顔を上げ、どうした、と問うように美しい蘇芳の瞳をこちらに向けて微笑した。

 なんでもありません、と軽く頭を振り、精一杯恨みがましい視線を返してロスはため息を吐きながらクエルクスに向き直る。いましがたのような人のいい笑みに何人の道行く女性が我を忘れたか知れない。


「それを知ってたら…………苦労しません。むしろこちらが伺いたいくらいだ」


 周囲から嫌悪されるのが良くないのは当然だが、無意識無自覚に相手の心を掻っ攫っていくのも相当に厄介だ。

 お互い気苦労絶えませんね、と、それぞれ思うところは別にせよ、微妙な意見の一致に二人は盃を軽く打ち合わせた。


 ***


 こんばんは。月曜日で仕事が忙しくなってしまいました蜜柑桜です。


 昨日でカクヨムコンは選考期間まで終わりましたね。まとめはまた改めてやりますが、一つ驚いていることがあります。

 選考期間を過ぎた本日のPV伸びが、驚き。しかも足跡がないので読み専さんだと思われるのですが……。なぜこんなに? と疑問になりました。一つはギリギリでレビューを頂いたおかげかと思いましたが楽園は関係無いですし。

 九乃カナさん考察曰く、コンテストが終わって読みの余裕が出た方がいらしてくださったのでは、と。

 可能性はありますよね! コンテストの区切りでこんなに変わるんだ! とびっくり仰天です。昨年もそうだったのかもしれません。ただ昨年は欧州にいて時差があって、時間がよく解らず。殿下が最終日に星100に達したくらいしか覚えていない。


 余談ですが、あと昨年のカクヨムコンは出張中だったため、いた場所やもらったコメント、読んだ話がリンクしてよく覚えています。こういう記憶の残り方ってあるんだな、と思うと、場所を変えて読むとまたお話の味わい方も変わってくるのかもしれません。読者の方の居場所に合わせることはできませんけれど。

(作品をご存知の方にしか解らず恐縮ですが、読んでいたお話の関係で私の中ではブレグジットは古川さんのメロンパンであり、ブレグジット翌日あたりの朝は薮坂さんの三馬鹿バレンタイン・トリオ、ベルリンの暗い夜に月明かりの中で齧歯類に叫ぶ「軽率にバズるんじゃねぇ!」(えーきちさん)なんです)

 殿下へ嬉しい怒涛のコメントを頂いたときは昼間の仕事中で、休憩に笑いを堪えるのに必死でした(笑)。


 話を戻しましょう。


 ただ疑問なのはどなたが読んでくださっているのかが解らないので、読み専さんの場合にはあまり読者選考期間かどうかも関係ないのかなぁ、とかも思ったり。

 謎が深まりました。


 ***

 余談が長くなりました。


 昨晩公開・完結しました『楽園の果実』おまけの小話に、私が思う以上のたくさんの反響をいただきまして、非常にうれしかったです。これからお返事しますね。

 自分ではクエルクスが可愛いと思って書いていなかったので意外でした。

 そうか、あれ可愛いのか。


 そして例の彼が好評で嬉しいです。脇役、私も大好きでして。あの青年はお気に入りです。単なる脇役ではない。


 おまけも書いてよかったです。

 おまけは第二話の皆さんの感想を読んで生まれたので、たくさんの感想ありがとうございました。

 そしてそもそもこのお話、かわのほとり様がその後の二人も見てみたい、とのコメントをくださいまして、すごく書きたくなっちゃって。ですから改めてお礼申し上げます。


 あー! 楽しかった! 

 思ったより甘ったるく? なってしまった二人。本当に気を抜いてだるだる〜っと書いていたので、あんなにご好評いただけるなんて思ってもみませんでした。


 あんな二人も、どうですか?笑



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